マイクロフィルム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/07 07:12 UTC 版)
焼付方式
マイクロフィルムは、画像の焼き付けの違いにより、銀・ゼラチンマイクロフィルム、ジアゾフィルム、ベシキュラフィルム(カルバーフィルム)に分けられる[2]。
銀・ゼラチンマイクロフィルムは最も保存に優れ、ベースの片面からのみ画像が浮き上がって見える[2]。ジアゾフィルムは一般的に濃紺色か青紫色(まれに黒発色)で表裏どちらからも画像がベースに密着して見え、経年劣化すると茶変色を起こす[2]。ベシキュラフィルムは乳白色の気泡粒子で画像を形成しているものである[2]。
作成と閲覧
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マイクロフィルムを作成する際には、原版となる資料を特殊な写真撮影機材を使って原版の1/5 - 1/40に縮小して焼き写す。
閲覧する際にはマイクロフィルムリーダーと呼ばれる専用の投影機を用い、必要な場合は原版と同じサイズで印刷をすることができる。
保管
マイクロフィルムの理想的な保存環境は、相対湿度30-40%、温度20度以下とされている[2]。
- ビネガーシンドローム
- TACベースのマイクロフィルムでは、支持体の経年変化で加水分解により酢酸が発生し、癒着、ひび割れ、画像の劣化を起こす[2][8]。
- カビ
- 高温多湿の環境で保存するとカビが発生して乳剤の化学的分解などが起こり画像の劣化を起こす[2]。
- マイクロスコピックブレミッシュ
- 空気中の酸素によりフィルム上の銀が錆び微細な斑点が発生する現象[2]。
他メディアとの比較
マイクロフィルムに代わってパソコンで閲覧することを目的としたCD-ROMやDVDの縮刷版が市販されているが、磁気メディアや光学メディアの場合、新たな規格が次々に登場する結果、過去のメディアを閲覧するためのハードウェアの入手や利用が困難になるという問題が指摘されている。マイクロフィルムは保管コストがかかるため個人利用は一般的ではないが、改竄が困難で耐久性が高く閲覧用機器の陳腐化のおそれもないため、重要資料を長期保存する手段として利用されている[9]。
マイクロフィルムは閲覧のために保管場所から取り出すと劣化が進むため、マイクロフィルムを撮影したデジタルデータを閲覧させることで劣化を防ぐ取り組みも行われている[10][11]。
近年では最初からデジタル撮影による保管が主流となっている。国立国会図書館では2009年から原則デジタル撮影となり、マイクロフィルムはデジタル化されるまで原盤として劣化対策を施した上で保管されている[12][8]。
- ^ a b c d e “マイクロフィルムの不思議な歴史、伝書鳩からマンガ本まで”. GIGAZINE (2016年6月28日). 2023年6月17日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 京都大学図書館業務改善検討委員会 資料保存環境整備部会「図書館資料保存環境整備マニュアル (マイクロフィルム編)」、京都大学図書館業務改善検討委員会資料保存環境整備部会、2010年、hdl:2433/98051。
- ^ a b c jiima_admin. “アパーチュアカード”. JIIMA 公式サイト. 2023年6月17日閲覧。
- ^ DMS - 第2回 媒体の安定性についての質問 ― Q11. マイクロフィルムはどの位もつか?
- ^ コダック BPOサービス-サービスご紹介 イメージングサービス
- ^ 西山貴章 (2011年1月22日). “まるで酢こんぶ…マイクロフィルム資料劣化に悩む図書館”. 社会. asahi.com. 2011年1月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年6月12日閲覧。
- ^ 国立国会図書館『マイクロフィルム保存のための基礎知識』(改訂)国立国会図書館、2005年。doi:10.11501/1000990 。2023年12月7日閲覧。
- ^ a b “マイクロ資料への対策|国立国会図書館―National Diet Library”. www.ndl.go.jp. 2023年6月17日閲覧。
- ^ “マイクロフィルム作成・電子化 | 名古屋・東京・大阪「中京コピー」”. www.chukyocopy.co.jp. 2023年6月17日閲覧。
- ^ “『星学手簡』が国の重要文化財に指定|国立天文台(NAOJ)”. 国立天文台(NAOJ) (2022年11月18日). 2023年6月17日閲覧。
- ^ “マイクロフィルム電子化・PDF化・マイクロフィルムスキャン・マイクロフィルムデジタル化”. www.fujimicro.co.jp. 2023年6月17日閲覧。
- ^ “資料デジタル化について|国立国会図書館―National Diet Library”. www.ndl.go.jp. 2023年6月17日閲覧。
マイクロフィルムと同じ種類の言葉
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