ヘラクレスオオカブト 生態

ヘラクレスオオカブト

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/16 10:13 UTC 版)

生態

中央アメリカから南アメリカ熱帯雲霧林に断続的に分布する。低地にも少なからず生息するが、大型になる亜種、また大型の個体は標高1,000 - 2,000 m高山帯にしか見られない。成虫は夜行性である。昼夜を問わず広葉樹の樹皮や果実を自ら傷つけて樹液果汁を吸汁するが、休息も兼ねており、飛翔などの活発な活動は夜間に限られる。生息地の付近に灯火などの光源があればしばしば飛来する。

幼虫は朽木や腐葉土の中で1年半-2年程かけて成長する。飼育下では1年半で羽化することも多い。オスでは化前に100gを超えることも珍しくない。

羽化後は成熟まで3 - 6か月ほど要する。樹液や腐った果実を好み、それらを求めて地上を移動する。成虫の期間も長く、1年から1年半ほど生きる個体もいる。

雨が降った後に活動が活発になる。現地には四季がないため一年を通して見られるが、採集例は8月、12月の雨季に多いようである。

世界最大のカブトムシであるだけに力はとても強い。(個体差はあるが)基本的にはおとなしい性格であり本当に必要なとき以外は戦わないことが多いが、刺激を与えられたり身の危険を感じたりすると恐ろしいほどの闘争心を発揮する。日本に外国産のカブトムシが輸入されるようになる以前は、闘争ではヘラクレスオオカブトよりコーカサスオオカブトの方が強いのではないかと言われていたが、『BE・KUWA』 (2009) はコーカサスオオカブトの角は敵を挟み込んで投げ飛ばせる形状ではないことから、実際にはコーカサスオオカブトよりヘラクレスオオカブトの方が強く、「世界最強のカブトムシ」に相応しいと評している[28]

生息地である雲霧林は乾燥していると明い色、湿っていると暗い色に変化するので、湿度によって変色する前翅は保護色となる。


注釈

  1. ^ a b カブトムシ族を「オオカブト族」と呼称する場合もある[1]
  2. ^ オオツノカブト属を「オオカブトムシ属」[2][3][4]、「オオツノカブト属」と呼称する場合もある[5]
  3. ^ a b 野外で採集された最大個体の全長について、吉田賢治 (2016) は172.7 mm[18]、飯島和彦 (2017) は172 mmとそれぞれ述べている[19]。この個体は1932年2月、グアドループ諸島バステール島の St.Claude で採取された[20]
  4. ^ この名で呼ばれるノボタン科の樹木が複数種存在する。詳細はwikt:colca#スペイン語を参照。

出典

  1. ^ 清水輝彦 2015, p. 98.
  2. ^ a b c 平嶋義宏『生物学名辞典』東京大学出版会、2007年7月20日初版、194頁「第3章 接尾辞 > 3-180 (ギ)-tēs. 行為者を示す.男性名詞. > 02 Dynastes オオカブトムシ属(甲虫).(ギ)dynastēs 君主,支配者.」
  3. ^ 海野和男 2006, p. 205.
  4. ^ 永井信二 2006, p. 8.
  5. ^ a b 清水輝彦 2015, pp. 98–99.
  6. ^ 小林一秀 2022, p. 6.
  7. ^ 矢野宏二 編『世界の昆虫英名辞典 vol.1 A-L』櫂歌書房、2018年5月12日初版第1刷、536頁
  8. ^ 『ギネス世界記録2018』2017年11月9日第1刷発行、40-41頁「動物 > 甲虫 最も長い甲虫(全長)」(角川アスキー総合研究所
  9. ^ a b c 清水輝彦 2015, p. 99.
  10. ^ 小林一秀 2022, p. 44.
  11. ^ a b c d e f g h i j k l m 永井信二 2006, p. 22.
  12. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u 飯島和彦 2017, pp. 6–9.
  13. ^ 永井信二 2006, p. 6.
  14. ^ むし社 2016, p. 4.
  15. ^ a b 飯島和彦 2017, pp. 38–45.
  16. ^ a b 飯島和彦 2017, pp. 44.
  17. ^ 飯島和彦 2017, pp. 48–55.
  18. ^ a b 吉田賢治 著「第二章 大人の甲虫学 > 世界一のカブトムシ」、オフィスJ.B(編集協力) 編『クワガタムシ・カブトムシの知られざる世界 大人のための甲虫図鑑』(初版第一刷)KKベストセラーズ、2016年8月5日、56頁。ISBN 978-4584137352NCID BB2196296X国立国会図書館書誌ID:027483413全国書誌番号:22774677 
  19. ^ 飯島和彦 2017, p. 6.
  20. ^ a b c 飯島和彦 2017, p. 7.
  21. ^ “182.8mmのヘラクレスオオカブトで世界最大級に認定 試行錯誤重ねるブリーダー 次は“世界で初の185mm超”目指す【宮崎発】”. FNNプライムオンライン. (2022年6月8日). https://www.fnn.jp/articles/-/369418 
  22. ^ “巨大カブトムシ:体長174ミリ、国内最高更新”. 毎日新聞. (2016年6月10日). オリジナルの2017年11月25日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20171125132936/http://mainichi.jp/articles/20160611/k00/00m/040/059000c 2017年11月25日閲覧。 
  23. ^ クワガタワイワイVOL.2 「神ブリーダーに聞く、ヘラクレス飼育の秘密!!」『クワガタとカブトムシの販売/通販専門店|月夜野きのこ園販売情報』 2019年10月16日
  24. ^ 【2022年最新版】ヘラクレスオオカブトのギネス記録が更新!190mmも夢ではない!?『ヘラクレス本舗』 2022年7月28日
  25. ^ a b c d e f g h 清水輝彦 2015, p. 100.
  26. ^ 清水輝彦 2015, pp. 99–180.
  27. ^ 石米亨 2001, p. 19.
  28. ^ (編集者)土屋利之(編集スタッフ)藤田宏・小林信之・谷角素彦・矢崎克己・飯島和彦・中村裕之(編)「ヘラクレスという名のロマン」『BE・KUWA』第32号、むし社、2009年8月14日、6-7頁、ISSN 0388-418X国立国会図書館書誌ID:000004340722全国書誌番号:01004593  - No.32(2009年夏号)。『月刊むし』2009年8月増刊号。
  29. ^ ヘラクレスオオカブトの幼虫期間はどれくらい?『ヘラクレス本舗』 2021年8月18日
  30. ^ カブトの王様 廃菌床育ち/秋田・横手市 シイタケ農家が新事業/高額取引「ヘラクレス」資源循環担う『日本農業新聞』2021年10月22日17面
  31. ^ a b 飯島和彦 2017, p. 32.
  32. ^ 永井信二 2006, pp. 20–21.
  33. ^ 飯島和彦 2017, pp. 6–7.
  34. ^ a b c d e 山内英治 & 永井信二 2009, p. 11.
  35. ^ 石米亨 2001, p. 16.
  36. ^ 山内英治 & 永井信二 2009, p. 8.
  37. ^ ひで 2002, p. 29.
  38. ^ むし社 2015, p. 32.
  39. ^ a b c d e むし社 2016, p. 30.
  40. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 飯島和彦 2017, pp. 20–23.
  41. ^ a b 清水輝彦 2015, p. 101.
  42. ^ 石米亨 2001, p. 17.
  43. ^ a b c d e f g h 永井信二 2006, p. 23.
  44. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as at au av aw ax ay az ba bb bc bd be bf bg bh bi bj bk bl bm bn bo bp bq br bs bt bu bv bw bx by bz ca cb cc cd ce cf cg ch ci cj ck cl cm cn co cp cq cr cs ct cu 永井信二 2006.
  45. ^ 石米亨 2001, p. 18.
  46. ^ 海野和男『カブトムシの百科』






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