ブラックカラント作戦 ブラックカラント作戦の概要

ブラックカラント作戦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/08/13 21:57 UTC 版)

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ブラックカラント作戦

HMS トラキュレント(1942年)
目的/目標 電力不足を補完するための発電
計画主体 イギリス海軍
実行組織 イギリス海軍潜水艦部隊英語版
年月日 1947年冬
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背景

英国では、1947年1月下旬から寒冷・豪雪期が始まり、3月まで続いた。この間同国は、当時の発電所における主な動力源たる石炭の不足による損害をも受けた。これは、第二次世界大戦の影響で石炭備蓄量が少なかったためでもあるが、政府が全英炭鉱労働者組合英語版作成の楽観的な生産報告に依拠したことにも起因していた[2][3]

寒波により、暖を取るために石炭・電力需要が通常以上に上昇した。同時に、備蓄石炭が固く凍結したため、石炭を発電所に送ることが困難になった[4]。石炭が利用できた場所でも、多くの道路が通行不能に陥って輸送困難になった。また、石炭を積んだ75万両の鉄道貨車は雪で立ち往生し、時化により石炭船による輸送もできなくなった[5]。燃料不足により、多くの発電所が操業停止や発電量削減に追い込まれた[4]。電力消費量削減に向けた取り組みの中で、燃料動力大臣エマニュエル・シンウェルは工業用電力供給を完全遮断すると共に、全国の家庭用電力供給を1日当たり19時間に制限した[5][6]テレビ放送は完全に停止し、ラジオ放送は減少し、一部の雑誌は発行停止を命じられ、新聞は4ページに削減された[5][6]

作戦

シンウェルの施策にもかかわらず燃料供給は不充分なままで、国内の広範囲にわたって停電が起こった。バッキンガム宮殿議事堂ロンドン中央電力庁の職員ですら、蝋燭の明かりによる勤務を強いられた[5][7]英国海軍は、ブラックカラント作戦の開始によって応えた。この作戦では、利用可能な全ての潜水艦ドックに繋留し、艦載ディーゼル発電機を電力供給源として使用した[8]。同作戦は、海軍所有の基地であるプリマスデヴォンポート工廠ケント州チャサム工廠に電力を供給するために用いられた[9][10]。作戦の一環として、T級潜水艦トラキュレント英語版は、電力を街へ供給するためにブライトンに配備された[11]。潜水艦の乗組員にとって、この任務は決して快適とはいえないものであった。それは、潜水艦のディーゼルエンジンが一定の空気の流れを必要としたことから、冷えてすき間風の入る状況での作業が要求されたためである[8][11]。2月27日には海の荒れ具合が改善した。100隻を超える石炭船が何とか発電所で荷を降ろし、燃料危機は緩和した[5]


  1. ^ 「ブラックカラント (blackcurrant)」は「クロスグリ」のこと。
  2. ^ Burroughs 1997, p. 58.
  3. ^ Middlemas 1990, p. 548.
  4. ^ a b Marr 2007, p. 34.
  5. ^ a b c d e “Panorama by Candlelight”, Time Magazine, (24 February 1947), http://www.time.com/time/magazine/article/0,9171,801819-1,00.html 
  6. ^ a b Simons, Paul (1 October 2008), “Heavy Weather — Winter 1947”, The Times , Times 2 Magazine: 11, http://women.timesonline.co.uk/tol/life_and_style/women/the_way_we_live/article4855319.ece 
  7. ^ Eden, Philip (26 January 2007), The big freeze of 1947, WeatherOnline Ltd, http://www.weatheronline.co.uk/feature/2007/01/26_ne.htm 2008年11月9日閲覧。 
  8. ^ a b Cox, Ron (8 Jan 2010), “Power of Operation Blackcurrant”, The Times, http://www.timesonline.co.uk/tol/comment/letters/article6979731.ece 2009年1月13日閲覧。 
  9. ^ The Admiralty (1947), Operation Blackcurrant: supply of power by submarine to Devonport Dockyard: technical report, http://www.nationalarchives.gov.uk/catalogue/displaycataloguedetails.asp?CATID=6013161&CATLN=6&accessmethod=5 2009年1月13日閲覧。 
  10. ^ Leonard, Commander R. F., HMS London Book of Commission, オリジナルの2008年10月16日時点によるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20081016035550/http://freespace.virgin.net/michael.overton1/the%20commission.htm 2009年1月13日閲覧。 
  11. ^ a b British Submarines of World War Two (3 Jan 2008), Triumph to Truncheon, http://home.cogeco.ca/~gchalcraft/sm/page24.html 2009年1月13日閲覧。 


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