ファック
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/05 16:27 UTC 版)
概要
基本的なニュアンスは「『性行為』及び『性行為に及ぶ』」であり、そこから転じて「人を不当に扱う」「人を傷付ける」「人を酷く酔わせる」「干渉する、妨害する、余計な首を突っ込む」[1]、「物事をめちゃくちゃにする、ダメにする、台無しにする、失敗に終わらせる」[1]、「性行為の相手」[2]を意味する。
日本の国語辞典には、「性交」[3]、「情交」[4]を意味する言葉として掲載されることが多い。
この単語は英語の中でもひときわ下品であり、印刷物に登場する機会は長きに亘って滅多に見られなかった[1]。下品で攻撃的なニュアンスを含み、この言葉の使用が歓迎される状況自体が少ない。
この言葉そのものがタブーに近い存在であるが、それでも古くから使われ続けてきた[1][5]。
語源
少なくとも15世紀からこの言葉は使われている[5]。オックスフォード英英辞典で最初にこの言葉が言及されたのは1503年のことである[5]。「中期オランダ語の『Fokken』(「前方に強く押す、交尾する」)、ノルウェー語の方言の1つ、『Fukka』(「交尾する」)、スウェーデン語の方言の1つ、『Focka』(「一撃を加える、押す、交尾する」)、および『Fock』(「陰茎」)、ドイツ語の『Ficken』(英語の『fuck』と同じ意味)・・・これらのゲルマン語と同族である」[5]、「16世紀初頭のゲルマン語由来の言葉で、スウェーデン語の方言の1つ、『Focka』、オランダ語の方言の1つ、『Fokkelen』(「生殖、繁殖」)まで遡り、『拳』を意味するラテン語『Pugnus』に内包される言葉であり、恐らくは、『strike』(「一撃を与える」)を意味するインド・ヨーロッパ語族(Indo-European)を祖とする言葉であろう」と見られている[1]。
用法
罵倒・拒絶
人に向けてこの単語が使われた場合、極めて攻撃的な罵倒表現となる。「Fuck off!」で「とっとと失せろ!」[* 1]、「what a dumb fuck」 は「大マヌケ野郎」で、「頭が悪い」を意味する形容詞「dumb」[* 2]を強調した表現である。「Don't fuck with me.」は、「俺をなめんなよ」「ふざけた真似するんじゃないぞ」というニュアンスになる。
アーノルド・シュワルツェネッガーは、自身が出演したアメリカ映画の中で、(台本の都合上)しばしば 「Fuck you」(「くたばれ」「殺すぞ」)や、「Fuck you, ( you )fucking Asshole」(くたばりやがれ、クソ野郎)といった下品な言葉を使っている(「asshole」は日本語の「ケツの穴」に近い語感で、下品な単語の1つ。人に対して使うと「嫌な奴」「ろくでなし」「むかつく奴」「大バカ野郎」いうニュアンスになる)。「Fuck you!」は、その相手と「二度と関わりたくない」際に投げかける極めて下品な罵倒表現であり、日本語にちょうど当てはまる訳語は存在しないのだが、「死ね」「殺すぞ」「今すぐに俺の前から消え失せろ」といったニュアンスとなる。この言い回しのニュアンス自体は、前述した忌避の表現である「Fuck off」 (「(自慰でもして)さっさと消えろ!」)に近いが、これにさらに強烈な怒りを込めた言い回しである。
また、他者や社会一般の幸福に対する冷淡さの感情を表現するときや、要求を強く拒絶したり、何かに失敗したり、突然嫌な思いを味わったり、怒りの感情が湧いてきた際にも咄嗟に出る単語であり[1][2]、その際には「Fuck!」(「クソが!」「畜生!」)といったニュアンスである。「Fuck! The car won't start!」[2](「くそ! 車が動かねぇ!」)は、自動車のエンジンがかからないことに対して怒りや苛立ちを込めた表現である。
「糞」「排泄物」を意味する「Shit」や、罵倒表現の一つである「Damn it!」を、その場で強い調子で吐き捨てるように発しても、ほぼ同じニュアンスとなる。
強調
一方で、英文法の視点から見ると、名詞、動詞、形容詞、副詞、代名詞、間投詞などあらゆる文脈で利用できる単語であり、必ずしも否定的な意味で使われるとは限らない。「Fucking good」は 「Very good」 の粗雑な言い方である。「What are you doing in my room?」は、通常は「私の部屋で何をしているのですか?」になるが、「what」と「are」の間に「the fuck」(「the」を必ずつける)を配置することで、「What the fuck are you doing in my room!?」(「てめぇ、俺の部屋で何してやがんだ!?」)という強調の仕方が可能である。文章内の適切な位置にこの単語を配置することにより、元の意味をより強調した表現が可能[1][2]。「Shut up」は、通常は「黙れ」であるが、 「Shut the fuck up」と、「shut」と「up」の間に「the fuck」を挿入することで、「黙りやがれ」という強調表現になる。
「the fuck」だけではなく、「fucking」も使用可能。この単語も強調表現の一種であり、「Fuck the fucking fuckers.」(「そんなアホ共ほっとけ」)、「un-fucking-believable」(「絶対に信じられない」)となる。「unbelievable」だけでも「信じられない」の意味になるが、これの前に「fucking」を挿入することで、意味をより強調できる。
「Are you kidding me?」は、相手の発言に対して「冗談でしょう?」「私をからかっているのですか?」というちょっとした驚きの気持ちが込められた表現だが、「fucking」を挿入することで、「Are you fucking kidding me?」という言い回しも可能。この場合、「マジで?」「おいおい、冗談だろ?」「おい、からかってんのか?」という強調表現となる。
相手からの質問や言い分を否定したり拒否したりする際に「No」(「いいえ」「違います」「嫌だ」「断る」「ダメだ」)を使う際にもこの間投詞を挿入して「Fucking no!」とすることで、「ねぇよ」「違ぇよ!」「嫌だね!」「できやしねぇ!」といった強調表現が可能。
「Fucking great!」 は声のトーンによって「こりゃすげえや!」というニュアンスになる。挨拶の際に「Fucking」を挿入することで、「Fucking hello!」 (「よぉ!」)という使い方も可能。ひどく驚いた際に思わず出る表現の一種としては、「What the fuck!(WTF)」「Oh, my fucking god!(OMFG)」で、「どうなってやがる」「何てこった!」というニュアンスになる。これらはインターネットやオンラインゲームコミュニティで、しばしば単語の頭文字だけで表記される。
注釈
出典
- ^ a b c d e f g h “fuck”. lexico.com. 2019年12月5日閲覧。
- ^ a b c d e “fuck”. cambridge.com. 2019年12月5日閲覧。
- ^ 小学館『デジタル大辞泉』、三省堂『大辞林』第3版、小学館『精選版 日本国語大辞典』. “ファック”. コトバンク. 2019年10月2日閲覧。
- ^ 小学館『精選版 日本国語大辞典』. “ファック”. コトバンク. 2019年10月2日閲覧。
- ^ a b c d David Mikkelson (2007年7月8日). “Etymology of Fuck” (英語). Snopes.com. Bardav, Inc.. 2013年12月9日閲覧。
- ^ “米国防長官代行、F35開発計画を酷評 機種自体は「素晴らしい」”. CNN.co.jp. CNN (2019年4月26日). 2019年5月3日閲覧。
品詞の分類
名詞およびサ変動詞(性愛) | キス ラブ 同衾 ファック セックス |
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