パパゴ 国境線と分断

パパゴ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/11/24 13:52 UTC 版)

国境線と分断

現在、25000人を数えるパパゴの住民のうち、その多くはアリゾナ州の南部に居住する。しかし一方でメキシコソノラ州にも数千人が暮らしている。カナダとの国境線上で分断されたインディアンとは違い、1853年のガズデン購入の際に国境線が画定して以降、パパゴは米墨の二重市民権を与えられていない。しかしパパゴは国境線を思うままに通過できた。労働や、宗教行事への参加、セルズでの医療行為、そして親族の訪問といった目的で両国を往来し、アメリカ合衆国政府もこれを黙認していたのである。ソノラ州マグダレナではなぜかアッシジのフランチェスコの忌日である10月初めに、イエズス会の聖フランシスコ・ザビエルの祭典が催されるが、現在でもこの日には多くの住民が国境を越えてマグダレナを訪れている。

しかし1980年代中頃から国境警備が強化され、住民の移動が制限されるようになった。メキシコ生まれであったり、アメリカ合衆国の出生または居住の証明書類をもたない住民はメキシコ側に取り残された。彼らは僅かに数十キロの距離にある自民族の町に出ることさえできなくなったのである。この一民族二国家という状況を打開するため、2001年からパパゴとして登録された住民にアメリカ市民権を提供する法案が何度も下院に提出された。しかし2007年現在、この試みは成功していない。[4][5]保留地内の出生記録は大部分が非公式のものであること、これらが容易に捏造されうるものであること、といった点に反対派が異議を申し立てているためである。

保留地

アメリカ合衆国側では、パパゴの本来の居住地であるソノラ砂漠に「Reservation(保留地)」が設けられている。トホノ・オ=オダム・ネーションとよばれる保留地は4つの、さらに細かく言うと11の区域に分かれ、その領域はアリゾナ州ピマ郡ピナル郡マリコパ郡にまたがる。主要な保留地はトゥーソンからアホの間に広がり、中心的な町はセルズである。他にトゥーソン南西部にあるサンゼイビア保留地、ヒラベンド近郊にあるサンルーシー保留地、フローレンス近郊のフローレンス保留地があるが、主要な保留地からは隔たっており直接の往来はできない。総面積は11,534.012km²で、アメリカ合衆国内ではナバホ族のそれに次ぐ広さである。人口は10787人。CDPはチュイチュ、ピシネモ、サンタローザ、セルズ、トパワ。以下は各区域の情報で、人口は2000年の国勢調査による。

アリゾナ州ピマ郡におけるトホノ・オオダム・ネーションの領域を示す。中央の大きな赤い領域がパパゴ保留地、その右に存在する小さなものがサンゼイビア保留地。北接するマリコパ、ピナル両郡に存在する保留地は載せていない。
主保留地(パパゴインディアン保留地)
ピマ郡中央から、ピナル郡南西、マリコパ郡南東にかけて設定された。面積11,243.098km²、人口8376人。全保留地面積の97.48%を占め、人口も77.65%がこの保留地に集中する。
サンゼイビア保留地
ピマ郡、トゥーソン都市圏の南西部に位置する。面積288.895km²、人口2053人。カジノのほか、アメリカ国定歴史建造物に指定された聖ザビエル伝道教会がある。
サンルーシー保留地
マリコパ郡南西部の町、ヒラベンドの南西に位置し、飛び飛びに存在する7つの小区画から構成される。総面積1.1915km²、人口304人。
フローレンス保留地
ピナル郡中央部の町、フローレンス英語版の南西すぐ近くに位置する。単一の区画から構成され、面積は0.1045km²、人口54人。

キットピーク

トホノ・オ=オダム・ネーションの領域はソノラ砂漠だけでなく、バボキバリ山地にも及ぶ。ここにはパパゴの聖地であるバボキバリ山があるが、その一部は議会の圧力によりなかば強制的に、1950年代から1エーカーあたり25セントでキットピーク国立天文台とその観測施設のために貸し出されている。貸与地の一部は頂上の直下、パパゴの精霊イイトイの庭とされる領域であり、2005年にはネーションが米国科学財団を相手取ってさらなるガンマ線検出器の建設中止を求める訴訟を起こしている。


  1. ^ Zepeda, Ofelia (1995). Ocean Power: Poems from the Desert, p.89. ISBN 0-8165-1541-7.
  2. ^ Benjamin Capps著『The Great Chiefs』、Dennis Banks著『聖なる魂』
  3. ^ http://www.azstarnet.com/sn/border/197095.php
  4. ^ Duarte, Carmen. "Nation Divided." Arizona Daily Star 30 May 2001 14 Feb 2007 [1]
  5. ^ Grijalva, Raul M.. United States. Subcommittee on Immigration, Border Security, and Claims. H.R.731. Washington, D.C.: GPO, 2003. [2]


「パパゴ」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「パパゴ」の関連用語

パパゴのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



パパゴのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのパパゴ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS