ニューモシスチス肺炎
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/04 13:06 UTC 版)
治療
ST合剤
歴史的にはニューモシスチス肺炎の治療はペンタミジンが用いられてきた。しかしペンタミジンでは治療失敗率が高く、毒性も強かった。そのためST合剤、リファンピシン、グリンダマイシンなどが注目され2016年現在はST合剤が主流となっている。ST合剤の代表薬はバクタ®とバクトラミン®である。標準的なPCPでの投与量はトリメトプリムとして15-20mg/kg/dayでありST合剤の内服では9~12錠程度になる。しかしながら現在の用量設定は小規模の臨床試験をまとめたもので設定されており疑問視されている。また副作用が非常に多く、忍容性が高くないという問題があるため、低用量のST合剤による治療が近年になり注目されている。
膠原病におけるニューモシスチス肺炎ではトリメトプリムとして10mg/kg/day以下(錠剤で4~6錠)で通常用量と同等の治療効果でかつ副作用が少ないとの報告されている[10]。最近のメタアナライシスでも10mg/kg/day以下の低用量治療は通常用量と同等の治療効果でかつ重篤な副作用が少ないと報告されており、ST合剤の至適用量設定の臨床試験が期待される[11]
また、予防投与の場合は連日1錠または1日2錠を週に3回で投与する。予防投与の場合、発熱や皮疹などST合剤による薬剤アレルギーのため継続困難な場合は、一度中止し、症状軽快後に脱感作療法後に再導入が検討される。脱感作療法を行うことにより70%以上の症例で予防量は再導入可能となる[12]。予防量においても1日0.5錠投与や週に2回(1回1錠)などの低用量での予防も報告されている。
ペンタミジン
ペンタミジンは1930年代後半にイギリスで開発された抗原虫薬である。当初はトリパノソーマ症やリーシュマニア症に有効性が見出されていた。1960年代にニューモシスチス・イロベチイに有効であることが判明した。商品名はベナンバックス®であり注射薬と吸入薬がある。PCP治療では注射薬を用いるが添付文章で記載された4mg/kg/dayでは腎障害が高率に出現する。米国では副作用を理由に3mg/kg/dayでの治療も認められている。吸入薬は予防薬としては優れているが治療薬としては推奨されていない。
アトバコン
ST合剤で治療を開始し、ST合剤の変更が必要になった場合はアトバコンへの変更がひとつの選択肢と成る。商品名はサムチレール®である。不快な味がすること、高価であることが弱点である。
副腎皮質ステロイド
HIV-PCPでは副腎皮質ステロイドの有効性が確立している。米国疾病管理予防センター(CDC)はガイドラインを作成している[13]。それによるとPaO2≦70Torr以下またはA-aDO2≧35Torr以上のHIV-PCP患者が副腎皮質ステロイドの適応とされている。投与時期は抗菌薬開始と同時で、できるだけ早期、遅くとも抗菌薬開始3日以内とされている。投与スケジュールはPSL80mgを分2で5日間、40mgを分2で5日間、20mgを11日間の合計21日間というものである。Cochrane summaryによると副腎皮質ステロイドはHIV-PCPに対して1ヶ月死亡率を40%、3ヶ月死亡率を30%低下させる。また人工呼吸器使用を60%低下させると記載している。Non-HIV-PCPでは理論的にはより副腎皮質ステロイドが効果的と予想されるが後ろ向き検討では有効性を示さないという報告が多い。
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ニューモシスチス肺炎と同じ種類の言葉
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