ニューモシスチス肺炎 予防

ニューモシスチス肺炎

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/09/03 14:58 UTC 版)

予防

PCP予防を行うべきかどうかは背景となる疾患によって異なる。予防に用いられる標準薬はST合剤である。予防投与は連日1錠または1日2錠を週に3回で投与する。発熱や皮疹などST合剤による薬剤アレルギーのため継続困難な場合は、一度中止し、症状軽快後に脱感作療法後に再導入が検討される。脱感作療法を行うことにより70%以上の症例で予防量は再導入可能となる[13]。ST合剤の脱感作スケジュールは以下のようなものが知られている。発熱や発疹が出現した場合はその時点で増量を中止し、同量で維持すると症状が消退する。

投与日
1日目 0.005g 0.01g
2日目 0.02g 0.04g
3日目 0.1g 0.2g
4日目 0.4g 0.8g
5日目 1.0g 1.0g

HIV陽性者

PCPの罹患歴がある、あるいはCD4陽性リンパ球<200/μl、口腔内カンジダ症発症がPCP予防内服の適応となる。

造血幹細胞移植

同種造血幹細胞移植の場合には移植後6ヶ月までは予防が行われる。また移植後6ヶ月経過した時点でも免疫抑制薬が投与されている場合は予防は継続する。造血幹細胞の生着を妨げる可能性があるため、通常は生着までは使用されない。造血幹細胞自家移植の場合は造血幹細胞同種移植よりはリスクが低い。しかし免疫不全の程度が強いと判断された場合は予防が行われる。移植後3~6ヶ月予防を継続する。免疫抑制薬投与がされている場合は予防を継続するのは造血幹細胞同種移植と同様である。

臓器移植

全ての固形臓器移植患者において、移植後少なくとも6~12ヶ月はPCPの予防が推奨される。

癌患者

癌患者では急性リンパ性白血病、アレムツマブ治療、プリンアナログやその他のT細胞破壊性治療、長期の副腎皮質ステロイドプレドニゾロン(PSL)換算で1日20mgを4週間以上投与)、デモゾロマイドと放射線治療の併用の場合にPCP予防が推奨される。乳癌肺癌胃癌腎細胞癌などでPCP発症の報告があるが発症頻度が低いため予防の適応の有無をきめることは困難である。

膠原病

膠原病でのPCPの頻度が1~2%と少なくST合剤の副作用が30%と比較的高いことから膠原病患者全例に一次予防を行うことは推奨されない[14]。PCPリスクが3%を超える場合に投与するべきと考えられている[15]。DemoruelleらはPCPのリスク因子を4つあげ、そのうち2つを認められる場合は予防を勧めるとコメントした[16]。その4つの因子は、(1)PSL換算で20mg/day以上を4週間以上投与する時、(2)生物学的製剤を含めて2種類以上のDMARDsを投与する時、あるいは同時に複数の免疫抑制薬を投与する時、(3)総リンパ球数が350/μl未満、(4)既存の肺病変である。厚生労働省では年齢50歳以上で下記3つのいずれかを認めた場合はPCP一次予防を推奨している。その3つは(1)PSL換算で1.2mg/kg以上の投与、(2)PSL換算で0.8mg/kg以上に加えて免疫抑制薬の併用、(3)免疫抑制薬使用下で総リンパ球数500/μl以下である。

疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)によるニューモシスチス肺炎は、抗リウマチ薬開始時にST合剤1錠を5日間投与で予防可能であることが示唆されている[17]

原発性免疫不全疾患

重症混合型免疫不全、特発性低CD4血症、高IgM症候群などでは予防投薬の適応となる。

ステロイド投与中患者

PSL換算で20mg/day以上を4週間以上投与されておりこれに加えて他の免疫不全(血液疾患、他の免疫抑制薬)がある患者ではPCP予防が必要である。




  1. ^ Robert F.Miller:Pneumocystis carinii in non-AIDS patients. Current Opinions in infectious diseases.1999 Aug;12(4)371-7
  2. ^ Clin Microbiol Rev. 2012 Apr;25(2):297-317. PMID 22491773
  3. ^ Nat Rev Microbiol. 2007 Apr;5(4):298-308. PMID 17363968
  4. ^ Eukaryot Cell. 2009 Apr;8(4):446-60. PMID 19168751
  5. ^ Nat Rev Microbiol. 2007 Apr;5(4):298-308. PMID 17363968
  6. ^ Ann Intern Med. 1984 May;100(5):663-71. PMID 6231873
  7. ^ JAMA. 2009 Jun 24;301(24):2578-85. PMID 19549975
  8. ^ Chest. 2009 Mar;135(3):655-61. PMID 19265086
  9. ^ Chest. 2007 Apr;131(4):1173-80. PMID 17426225
  10. ^ AJR Am J Roentgenol. 1997 Oct;169(4):967-75. PMID 9308446
  11. ^ Immunol Allergy Clin North Am. 2004 Aug;24(3):425-43. PMID 15242719
  12. ^ MMWR Recomm Rep. 2009 Apr 10;58(RR-4):1-207. PMID 19357635
  13. ^ Immunol Allergy Clin North Am. 2004 Aug;24(3):425-43. PMID 15242719
  14. ^ J Rheumatol. 1992 Feb;19(2):265-9. PMID 1629825
  15. ^ Cochrane Database Syst Rev. 2007 Jul 18;(3). PMID 17636808
  16. ^ Arthritis Care Res (Hoboken). 2013 Feb;65(2):314-23. PMID 22972558
  17. ^ 森俊輔. 抗リウマチ薬使用時のニューモシスチス肺炎に対する予防内服. 日本医事新報 2015;4767:58-59.





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