ティーンズラブ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/18 04:23 UTC 版)
概要
ジャンル傾向
女性を対象としたジャンルで、十代向けに見える人物設定でありながら、成人向けのような具体的かつ直接的な性的表現が物語の中で展開される創作物を指す。なお同人誌の場合は、同様の内容でも男性向け・女性向け共に成人向け「のような」ではなく成人向けと見なされる。
定義は少女向けの王道のラブストーリーの「その先を見せる」こと[2] で、内容としては少女向けのラブコメディなどをアレンジしたものだが、恋愛とセックスを同義として描かれる場合が多い。レディースコミック(以下レディコミ)の影響からかレイプや近親相姦、援助交際といった犯罪や禁忌的な要素が物語に含まれていたことがあるが、現在は、女性がつらい思いをする設定は避けられている[3]。ほか、エッチは必ず“男の方から”というのが基本となっている[4]。なお、男性の社会的スペックは今も昔も高いものが求められている[5]。読者の反感を買わない主人公というのも重要である[4]。
主人公の女性は、読者の年齢層に合わせて10代半ばから20代前半に設定されていたが、東京都青少年の健全な育成に関する条例などの影響による自主規制として、漫画では主人公の年齢は18歳以上が主流になった。学校が舞台の場合も大学や予備校であることがハッキリと分かるように描写されている。相手役の男性は、はっきりと年齢を出されないこともあるが、作品によっては10代半ば[6] から50代[7] まで幅広い。物語上の本命の相手役とは現代の法に触れるような設定にならないことが優先されるものの、ヒストリカルものなど舞台設定によってはその限りではない。特に小説では、この傾向が強い。
作品の流れとしては、付き合ってはいたが、倦怠期に入ったカップルが一度は流されるがまた元の鞘に収まるパターンや障害を乗り越えて結ばれる、強引な男性に翻弄される女性主人公等様々なパターンがあるが、大抵の作品はハッピーエンドである。
もっとも近年は俺様やヤンデレといった性質の男性による事実上の鬼畜・凌辱物に該当する作品も増えてきた。その場合でも相手の男性は主人公を心から愛している、社会的なステータスが王子や貴族、富豪など極めて高い、容姿も秀でているという場合がほとんどである。
漫画において
漫画のジャンルで言えば、ティーンズラブはレディコミより若い年齢層をターゲットにしており、昔のレディコミは男性編集が結構多かったが、ティーンズラブはほとんど女性が作っている[2]。
ティーンズラブは元々1990年代後半に登場し、当時のティーンを狙っていた。宙出版によれば2014年時点において同社のティーンズラブの読者層は30代が中心となっている[2]。
レディコミは絵が劇画タッチだが、TL漫画(ティーンズラブ)は可愛らしい感じの絵で描写されている[2]。また、性器を直接的には描かず、背景にトーンで模様をちりばめて華やかな雰囲気を演出しているのも特徴である[3]。
ティーンズラブ漫画を執筆する作家は、多くがBL漫画とのかけもちである。また、‘商業雑誌ではティーンズラブ、同人誌ではボーイズラブ’という形態の作家や、成人向け漫画や少女漫画から転向した作家もいる。
また、少数ではあるが男性向け成人誌に掲載されていたものが電子化や単行本化に際してティーンズラブレーベルで出されるというケースもある[8]。
小説において
小説ではライトノベルのように挿絵をつけて発表されている。とはいってもティーンズラブは性行為を目的とするジャンルゆえ、女性向けの官能小説である。漫画同様に作者はほぼ女性で、ジュブナイルポルノやボーイズラブ小説の作家も活躍している。
- ^ 堀あきこ 『欲望のコード―マンガにみるセクシュアリティの男女差』 臨川書店、2009年、73-74頁。ISBN 978-4653040187。
- ^ a b c d “TL(ティーンズ・ラブ)編集者座談会 1ページ目”. サイゾーウーマン (2014年11月23日). 2016年7月14日閲覧。
- ^ a b “女だって性々堂々と ティーンズラブ 脳科学で読み解く”. 北陸中日新聞 popress特集 (2015年4月17日). 2019年7月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年2月17日閲覧。
- ^ a b “TL(ティーンズ・ラブ)編集者座談会 2ページ目”. サイゾーウーマン (2014年11月23日). 2016年7月14日閲覧。
- ^ a b c “TL(ティーンズ・ラブ)編集者座談会 3ページ目”. サイゾーウーマン (2014年11月23日). 2016年7月14日閲覧。
- ^ 「お見合い相手は教え子、強気な、問題児。」(虎井シグマ)等、多数。
- ^ 「蜜月〜乙女オジさん(52もうすぐ53)と私(19)の甘く悩ましい日々〜(奥めぐ美)等、多数。
- ^ 「プライベートナース~私の患者はあなただけ~」(谷村まりか)等、少数。
- ^ 『欲望のコード―マンガにみるセクシュアリティの男女差』109頁。
- ^ 『欲望のコード―マンガにみるセクシュアリティの男女差』109-110頁。
- ^ 『欲望のコード―マンガにみるセクシュアリティの男女差』110頁。
- ^ 『欲望のコード―マンガにみるセクシュアリティの男女差』154頁。
- ^ “「有害図書とは」・・・”. 大阪府ホームページ. オリジナルの2007年5月30日時点におけるアーカイブ。 2019年7月6日閲覧。
- ^ “29年度 有害図書の取扱うらpdf - 岐阜県”. 岐阜県ホームページ. 2019年7月7日閲覧。
- ^ ◤雑誌『恋愛ショコラ』よりお知らせ◢ forcs 2023年1月20日
- ^ 近代映画社、宙コミッククリエイション、笠倉出版社、松文館、ぶんか社など多数。
- ^ りん太のももいろコミック(近代映画社) - エルティーン編集部による。既刊19巻。
- ^ 電子書店パピレス 参考
- ^ “オーディオブック配信サービス - FeBe(フィービー)”. オトバンク. オリジナルの2014年8月26日時点におけるアーカイブ。 2021年8月10日閲覧。
- ^ “「ENGLISH(1)」(著者:カオリ/原作、まえだもも/イラスト、こすずきょうか/脚本)のオーディオブック情報 - FeBe(フィービー)”. オトバンク. オリジナルの2015年4月6日時点におけるアーカイブ。 2021年8月10日閲覧。
- ^ オーディオブック配信サービス“FeBe”にて、女性向けティーンズラブ特集開始 ~おとめ堂文庫『ENGLISH』の新作オーディオドラマ版も登場!~ - 2021年8月10日閲覧。
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