ショックアブソーバー 自動車での利用

ショックアブソーバー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/12 03:18 UTC 版)

自動車での利用

自動車やオートバイでは伸縮式(テレスコピック)のオイルダンパーが広く用いられている。乗用車ではショックアブソーバーにスプリングを支えるスプリングシートを設けた構造を採用する物が多く、スプリングとショックアブソーバーはサスペンションストラットASSYとして車体に組み込まれる。こうした構造は、日本国外ではコイルオーバー(Coil over)とも呼ばれている。

減衰力の調整ができるものも多く、伸び側と縮み側を独立して調整可能なものもある。通常はゴム板やゴムブッシュが用いられるアッパーマウントを硬質ナイロンやピロボールに置き換え、より直接的なフィーリングを求めたものもスポーツカー用などに多い。アフターマーケット製品と、アフターマーケットメーカーの製品を純正装着としたものにはオーバーホールが可能なものもあり、損耗部品の交換や後継商品の部品(改良品や対策品)へのアップデートが行われている。

車高調整式ショックアブソーバー

車高調整式ショックアブソーバーとは、スプリングシートの位置を上下に可変できる構造やショックアブソーバー自身の全長を可変できる構造を持ち、車高やスプリングのプリロードを調整することができるショックアブソーバーである。車高調(しゃこちょう)と略されることも多い。

モータースポーツなどでスプリングの初期荷重(プリロード)を調整したり、前後の車高バランスを微調整するために用いられる機構であるが、一般向けにも販売されるようになってからは外見的な改造として車高を下げることだけを目的として装着する場合もある。

スプリングプリロードを変化させる調整機構としては、ショックアブソーバーの外側とスプリングシートにねじが切られていて、スプリングシートを回転させることで上下に移動させる方法[19]と、スプリングとスプリングシートの間にC字型のスペーサーを挿入することによって行うものがある。いずれの方式も極端な車高の変化はプリロードを大きく変化させ、サスペンションの初期特性に大きく影響を与える。また、車体静止状態(1G)でのショックアブソーバーの長さ(ストロークセンター)が変わり、伸び側と縮み側でストローク量の比率が変化する。車高を下げると縮み側ストロークが減少し、極端な場合は「底つき」を起こす。逆に、車高を上げると伸び側ストロークが減少し、極端な場合は「伸びきり」の状況となる。底つきや伸びきりはいずれもスプリングが無効化し、車両の挙動に悪影響を及ぼす上、車体やショックアブソーバーに強い衝撃荷重がかかる。

ショックアブソーバーの全長を変化させて車高を調整する物は、ショックアブソーバーの外側に筒状のブラケットが被せられていて、互いにねじが切られて組み合わされている。この場合、スプリングプリロードと車高を独立して調整できるが、重量やコスト、外径が比較的大きくなる。また、ショックアブソーバーのストロークセンターの変化による底つきや伸びきりは解消できるが、サスペンションアームの可動域やタイヤの干渉など、車体側の制限により極端な車高調整はトラブルを起こす可能性がある。


  1. ^ MFi 2011, p. 32.
  2. ^ MFi 2011, p. 70.
  3. ^ 標準技術 2005, pp. 87–91, §12-3-1 オイルダンパー機構.
  4. ^ 稲垣 2005, p. 144.
  5. ^ 標準技術 2005, p. 83, §12-3-1 オイルダンパー機構.
  6. ^ a b c d e f g 稲垣 2005, p. 145.
  7. ^ a b c d e MFi 2011, p. 75.
  8. ^ a b MFi 2011, p. 77.
  9. ^ MFi 2011, pp. 75, 77.
  10. ^ a b MFi 2011, p. 76.
  11. ^ 稲垣 2005, pp. 145–146.
  12. ^ 標準技術 2005, p. 84, §12-3-1 オイルダンパー機構.
  13. ^ 零戦の構造上級篇 2011年3月22日閲覧。 [リンク切れ][出典無効]
  14. ^ オートギャラリー - ショールームのご案内 - 三菱自動車の概要 - 企業情報 - MITSUBISHI MOTORS JAPAN”. 2011年7月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年3月22日閲覧。
  15. ^ a b c 標準技術 2005, p. 81, §12-3-1 オイルダンパー機構.
  16. ^ 稲垣 2005, p. 147.
  17. ^ a b MFi 2011, p. 73.
  18. ^ プジョー長崎 - ショックアブソーバー”. 2011年2月7日閲覧。
  19. ^ 標準技術 2005, §12-5 アフターマーケットサスペンション部品.
  20. ^ ガススプリング”. ショーワ. 2019年5月10日閲覧。






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