シックス・シグマ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/25 21:03 UTC 版)
概要と歴史
シックス・シグマの語源となっているのは、統計学における標準偏差を意味するσである。ある品質特性値が(平均値、標準偏差σ)の正規分布に従う製品不良の発生状態において、「100万回の作業を実施しても不良品の発生率を3.4回に抑える」ことへのスローガンとしてシックス・シグマという言葉が使われ、定着していった。
モトローラのシックスシグマ開発に当たっては、日本の製造業で活発に行われているQCサークル活動を参考にしたとされる。ボトムアップ型かつ暗黙知が支配的な日本のQCサークル活動を、トップダウンで行う手法として、また統計学的な手法を取り入れた定量的評価を中心とした手法として開発された。モトローラで考案されたシックス・シグマは、GEが経営全体のプロセス改革に適用して発展させていった。1990年代後半になって日本にも紹介され、1999年に東芝はGEの手法に習い、さらに独自の改良を加えて全社的な適用を行っているほか、ソニーでも導入されている。
統計学の6σとの差異
シックス・シグマで主張する確率(3.4/1,000,000)は、正規分布で6σを超える確率とは異なる数値である。正規分布に従う製品不良の発生状態において、顧客仕様限界の幅を±6σとした場合、それから外れる確率は10億分の2、すなわち0.002ppm[3]である。シックス・シグマにおける値は3.4ppmであり、両者には大きな差がある。
6σの由来を示す。式を簡単にするために分布の上方だけを考えると、工程能力指数の一つである Cpk と顧客仕様限界 USL との関係は、
である。 とし、平均値のゆらぎを とすると、USL と平均値のゆらぎの中心との隔たりは、
にする必要がある。
シックス・シグマにおける象徴的目標は、サンプリングされた各データの平均値の(時間の経過に伴って起こる)ゆらぎを勘案してもなお、Cpk を1.5にしようというものである。Cpk = 1.5 は、シグマ・レベルでの4.5σに等しい(3σ×1.5=4.5σ)。このとき、顧客仕様限界から外れる確率が、片側で3.4ppm[4]である。これを達成するには、平均値のゆらぎを勘案しない短期的なデータから計算される Cpk が2.0、つまりシグマ・レベルが6σである必要がある。これは、平均値のゆらぎが一般的に1.5σであるという定説に基づく(4.5σ+1.5σ=6σ)。
Cpk やシグマ・レベルで表される工程能力は、顧客仕様限界に対する、品質特性データのばらつきの裕度である。
顧客仕様限界と管理限界とが混同されることが多い。一般的に品質管理で使われる管理図は、±3σを管理限界としている。この管理限界は、プロセスのアウトプットから採取される品質特性データから計算されるものであり、プロセスの異常を検知する目的で使用される。
ばらつきの抑制
シックス・シグマの活動のポイントは、ばらつきの抑制に主眼がおかれている。ばらつきが発生しているプロセスに着眼し、そのプロセスの平均値向上を試みるよりも、ばらつきを抑えることに力点を置いてコントロールしていく。平均値が向上しても、品質のばらつきが大きく品質不具合が発生してしまっては、品質不良が原因で発生する損失COPQ(Cost Of Poor Quality)を減らすことができない。品質のばらつきを小さく抑えることによって後工程における不具合を減らし、COPQを低く抑える。
- ^ “The Inventors of Six Sigma”. 2005年11月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年2月2日閲覧。
- ^ Tennant, Geoff (2001). SIX SIGMA: SPC and TQM in Manufacturing and Services. Gower Publishing, Ltd.. p. 6. ISBN 0-566-08374-4
- ^ “erfc(6 / √2)”. Wolfram Alpha. 2019年5月6日閲覧。
- ^ “erfc(9 / 2 / √2) / 2”. Wolfram Alpha. 2019年5月6日閲覧。
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