サンクトペテルブルクのパラドックス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/07 02:07 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動1738年、サンクトペテルブルクに住んでいたダニエル・ベルヌーイが、学術雑誌『ペテルブルク帝国アカデミー論集』の論文「リスクの測定に関する新しい理論」で発表した。その目的は、期待値による古典的な「公平さ」が現実には必ずしも適用できないことを示し、「効用」(ラテン語: emolumentum)についての新しい理論を展開することであった。
パラドックスの内容
偏りのないコイン[注釈 1]を表が出るまで投げ続け、表が出たときに、賞金をもらえるゲームがあるとする。もらえる賞金は、1回目に表が出たら1円[注釈 2]、1回目は裏が出て2回目に表が出たら倍の2円、2回目まで裏が出ていて3回目に初めて表が出たらそのまた倍の4円、3回目まで裏が出ていて4回目に初めて表が出たらそのまた倍の8円、というふうに倍々で増える賞金がもらえるというゲームである。
つまり表が初めて出るまでに投げた回数を n とすると、2n−1円もらえるのである。10回目に初めて表が出れば512円、20回目に初めて表が出れば52万4288円、30回目に初めて表が出れば5億3687万0912円がもらえる。ここで、このゲームには参加費(=賭け金)が必要であるとしたら、参加費の金額が何円までなら払っても損ではないと言えるだろうか[注釈 3]。
数学的には、この種の問題では、賞金の期待値を算出し、参加費がその期待値以下であれば参加者は損しないと判断する。しかし、この問題における賞金の期待値を計算してみると、その数値は無限大に発散してしまうのである。すなわち期待値を W とすると、
となる。したがって、期待値によって判断するならば、参加費(=賭け金)がいくら大金であっても参加すべきであると結論になる。
ところが実際には、このゲームでは 1/2 の確率で1円、1/4 の確率で2円、1/1024 の確率で512円の賞金が得られるに過ぎない(賞金が512円以下にとどまる確率が1023/1024)。したがって、そんなに得であるはずがないことは直観的に分かる。これが、この問題がパラドックスとされる所以である。
現実的な回答
現実には、賞金には上限がある。例えば、胴元の財産が1億円としよう。27回続けて裏が出ると、賞金は1億円を超えてしまうので、26回裏が出た時点でゲームは打ち切りとすべきだろう。すると、期待値は
で14円となる。同様の計算を行えば、胴元がいくら大金持ちであっても、現実的な範囲では期待値はせいぜい数十円の範囲に収まってしまうことが分かる。
しかし、思考実験として「胴元が無限の支払い能力を持っている」と仮定することはでき、その場合にはいくらの参加費を支払うべきか、という問に答えられなければ、問題は完全には解決していない。
- 1 サンクトペテルブルクのパラドックスとは
- 2 サンクトペテルブルクのパラドックスの概要
- 3 効用による回答
- 4 反響
- 5 標本抽出による解答
- 6 参考文献
サンクトペテルブルクのパラドックスと同じ種類の言葉
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