サンクトペテルブルクのパラドックス 反響

サンクトペテルブルクのパラドックス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/07 02:07 UTC 版)

反響

このパラドックスは、ダニエル・ベルヌーイの提示以降、繰り返し議論の的となっている。

ガブリエル・クラメールニコラウス・ベルヌーイ英語版へ出した手紙の内容が、ダニエル・ベルヌーイの論文に紹介されている[1]。クラメルは、金額の価値はその額面には比例しないと考え、二通りのモデルを提示した。1つ目は、224(約1600万)より大きな金額は皆等しいとするモデルであり、その場合の期待値は

で 13 となる。もう1つは、金額の価値はその額面の平方根に比例するとするモデルであり、その場合の「価値の」期待値は

となり、額面に直すとその平方で約 2.9 と計算される。ただし、これらのモデルは恣意的であって、妥当か否かの考察は全くない。

ダランベールは、期待値が無限大になるのは、ゲームを永久に続けることができるという、現実にはあり得ない仮定によるものだと指摘した[2]。さらに、パラドックスを回避する方策の一つとして、確率が非常に小さい場合は、その確率を 0 として扱うべきだと主張した[3]。また、別の回避法として、n 回連続して裏が出る確率を 1/2n より若干小さいとするモデルを提示した[4]。俗に、何回も続けて裏が出れば次に表が出る確率は 1/2 よりも大きいだろう、とする考えであり、一部の学者には受け継がれたが、現代の学者には全く受け入れられていない。

ビュフォンは子供にコインを繰り返し投げさせる実験を行った[5]。2084回のゲームを行い、そのうち1061回で1円、494回で2円、…、合計で10057円を獲得した。この実験において、1回のゲームでの獲得金額の平均は約5円ということになる。

コンドルセは、パラドックスに関連して以下の指摘を行った[6]。1回のゲームで A が勝つ確率が p、B が勝つ確率が q であるとすると、一般的な規則では A の賭金と B の賭金の比率は p : q とすべきである。しかし、p が非常に小さい場合、B の賭金は莫大になって破産してしまう危険性が高いため、本当の意味で公平とはいえない。これが公平であるためには、2人が十分な回数ゲームを繰り返すことに同意していなければならない。


  1. ^ 表が出る確率と裏が出る確率が、それぞれ正確に1/2という意味である。
  2. ^ 通貨単位は本質ではなく、どんなものでもいい。ベルヌーイの原論文ではダカット金貨が単位となっている。これは現在の日本円に換算すると約500円相当である。
  3. ^ 言い換えれば、このゲームの主催者がトータルで損を出さないための参加費はいくらか、という問題である。当然、その参加費より実際の参加費が高ければ結局は主催者が儲け、安ければ参加者が平均して勝って主催者は損失を被る。
  4. ^ 底は何でもいいので、以下では単に log と書く。
  5. ^ 例外として、賞金額が常に一定ならば等しい。
  6. ^ 日本家庭の資産中央値がこの程度である。
  1. ^ トドハンター p.205
  2. ^ トドハンター p.233
  3. ^ トドハンター p.234
  4. ^ トドハンター p.242
  5. ^ トドハンター p.295
  6. ^ トドハンター p.327
  7. ^ 「確率論とその応用」- 紀伊國屋書店 (1960/01):ISBN-13 978-4314000123






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