グリーンの恒等式 グリーンのベクトル恒等式

グリーンの恒等式

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/30 08:19 UTC 版)

グリーンのベクトル恒等式

グリーンの第二恒等式は、二つのスカラー函数の二階微分と一階微分(の発散)との関係を表すものである。微分形式では、

となる。ここで pmqm は二つの任意の二階連続的微分可能なスカラー場である。この恒等式は、質量やエネルギーのようなスカラー場に対して連続の方程式が成立する担保となるため、物理学において非常に重要なものとなっている[2]。グリーンの第二恒等式はベクトル解析においてよく示されているが、多くの教科書ではスカラーの場合のみが扱われている。専門書においても、ベクトルの場合を見つけるのは容易ではない。ベクトル回折理論において、そのようなグリーンの第二恒等式の二つの場合が導入されている。一方は、クロス積の発散によるもの[3][4][5]で、場における回転と回転に関する関係を表している:

この方程式はラプラシアンを使って次のように書くことが出来る:

しかし、項

は発散によって書くことは出来ない。もう一方の場合は、二重ベクトルを導入する手法で、二価グリーン函数が必要となる[6][7]。ここで示すものはそれらの問題を避けるものである[8]

グリーンの第二恒等式におけるスカラー場は、ベクトル場のデカルト成分であると考える。すなわち

とする。各成分に対する方程式を足し上げることで、次が得られる。

この左辺は、ドット積の定義により、次のようなベクトル形式で書くことが出来る。

右辺は、ベクトル作用素によって表現するにはやや複雑なものとなっている。発散作用素の加法についての分配性より、発散の和は和の発散に等しい。すなわち、

である。ドット積の勾配に対する次のベクトル恒等式を考える。

これは、ベクトル成分について書くと次のようになる。

この結果は、負の符号を除いて、ベクトル形式で表すことを所望していたものと似たものである。各項の微分作用素は、あるベクトル()あるいはもう一方()のいずれかに対して作用するため、各項は次のように表される:

これらの結果は、ベクトル成分の評価を介して厳密に証明することも出来る。以上より、右辺は次のようなベクトル形式で表される。

これら二つの結果を合わせることで、スカラー場に対するグリーンの定理と同様の結果が得られる:

ベクトル場に対する定理

クロス積の回転は次のように書くことが出来る。

グリーンのベクトル恒等式は、次のように書くことが出来る:

回転の発散はゼロであるため、この第三項は消去され、次が得られる:

グリーンのベクトル恒等式

同様の手順で、ドット積のラプラシアンはラプラシアンに関して次のように表すことが出来る:

この系として、整理されていない項はベクトルグリーン函数との比較によって発散に関して書くことが出来る:

この結果は、右辺のベクトルのスカラー倍の発散を拡張することで確かめることが出来る。


  1. ^ Strauss, Walter. Partial Differential Equations: An Introduction. Wiley 
  2. ^ M. Fernández-Guasti. Complementary fields conservation equation derived from the scalar wave equation. J. Phys. A: Math. Gen., 37:4107–4121, 2004.
  3. ^ A. E. H. Love. The Integration of the Equations of Propagation of Electric Waves. Philosophical Transactions of the Royal Society of London. Series A, Containing Papers of a Mathematical or Physical Character, 197:pp. 1–45, 1901.
  4. ^ J. A. Stratton and L. J. Chu. Diffraction Theory of Electromagnetic Waves. Phys. Rev., 56(1):99–107, Jul 1939.
  5. ^ N. C. Bruce. Double scatter vector-wave Kirchhoff scattering from perfectly conducting surfaces with infinite slopes. Journal of Optics, 12(8):085701, 2010.
  6. ^ W. Franz, On the Theory of Diffraction. Proceedings of the Physical Society. Section A, 63(9):925, 1950.
  7. ^ Chen-To Tai. Kirchhoff theory: Scalar, vector, or dyadic? Antennas and Propagation, IEEE Transactions on, 20(1):114–115, jan 1972.
  8. ^ M. Fernández-Guasti. Green's second identity for vector fields. ISRN Mathematical Physics, 2012:7, 2012. Article ID: 973968. [1]





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