クモの網
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/24 06:11 UTC 版)
系統との関連
網を張るクモでは、それが張る網の型と、その種の属する分類群との関連は、非常に強い。例えば、コガネグモ科やアシナガグモ科のものは円網を張り、ヒメグモ科は不規則網、サラグモ科は皿網を張る。もちろん例外は多々あり、たとえばコガネグモ科においてもツキジグモ属のものは三角網を張り、ナゲナワグモは投げ縄で捕虫し、カナエグモ属は網を張らない。しかし、三角網は丸網の一部が残った型と見ることができ、投げ縄もそこからの発展として理解することが可能である。それに対して、異なった型の網である皿網や不規則網を張るものは、コガネグモ科には存在しない。
網の張り方がわからないままに分類されていて、そのクモの網が発見されたために、分類上の位置を変更された例が多々ある。たとえば、キヌキリグモは当初は網が知られないままにアシナガグモ科に所属させてあったが、シート網を張ることがわかったのでサラグモ科に移された。新海は、コガネグモ上科について、網の構造や造網行動などを「クモ自身が明確にその存在位置を示している証拠」であると述べている[9]が、これほど極端ではないにせよ、網の構造が系統と大きなつながりをもつことは広く認められている。
人間による利用
クモの巣を集めキャンバスとした絵画コブウェブ・ペインティングというものがある。
古代ギリシア時代から、出血を止める効果があるとされ傷口に刷り込まれ、医療技術では創傷被覆材としての有用性が確認されている[10][11]。
出典
参考文献
- 浅間茂; 石井規雄; 松本嘉幸『校庭のクモ・ダニ・アブラムシ』(改訂)全国農村教育協会〈野外観察ハンドブック〉、2002年。ISBN 4-88137-084-7。
- 小野展嗣編著『日本産クモ類』東海大学出版会、2009。ISBN 978-4-486-01791-2。
- 新海栄一『日本のクモ』文一総合出版、2006年。ISBN 4-8299-0174-8。
- 八木沼健夫『クモの話 : よみもの動物記』北隆館、1969年。全国書誌番号:69002877。
- Rainer. F. Foelix, Biology of Spiders, Harvard University Press, Cambridge, Massachusetts, and London, England, 1982.
関連項目
- 社会性クモ ‐ 共同で大規模な蜘蛛の巣を形成する。
- バルーニング (動物) - クモ類が糸を風に流して空中に飛び移動する方法。
- 繭、Seidensekretion(蚕・クモ・ミノムシなどからとれる糸分類について。)、スパイダーシルク
- シルクヘンジ ‐ アマゾンで見つかったクモの卵が入ったストーンヘンジ状の構造物。ダニなどを誘因する物質が含まれるため、孵化した後に食料にありつけるようにしたものとも考えれてている。
- ^ Blackledge, Todd A.; Coddington, Jonathan A.; Gillespie, Rosemary G. (2002-12-13). “Are three-dimensional spider webs defensive adaptations?: Spider webs as predator defences” (英語). Ecology Letters 6 (1): 13–18. doi:10.1046/j.1461-0248.2003.00384.x .
- ^ 大崎茂芳 (2006). “クモの糸の秘密” (英語). 繊維学会誌 62 (2): P.42–P.47. doi:10.2115/fiber.62.P_42. ISSN 0037-9875 .
- ^ Zhao, Yue; Hien, Khuat Thi Thu; Mizutani, Goro; Rutt, Harvey N. (June 2017). “Second-order nonlinear optical microscopy of spider silk”. Applied Physics B 123 (6): 188. arXiv:1706.03186. Bibcode: 2017ApPhB.123..188Z. doi:10.1007/s00340-017-6766-z.
- ^ 八木沼健夫 1969, p. 71.
- ^ “非対称な網を張るアメリカジョロウグモ、微小重力下では光の有無で非対称性が変化”. it.srad.jp (2020年12月13日). 2023年7月10日閲覧。
- ^ Zschokke, Samuel; Countryman, Stefanie; Cushing, Paula E. (2020-12-03). “Spiders in space—orb-web-related behaviour in zero gravity” (英語). The Science of Nature 108 (1): 1. doi:10.1007/s00114-020-01708-8. ISSN 1432-1904 .
- ^ Rainey, Kristine (2015年6月11日). “Spiders in Space Weave a Web of Scientific Inspiration for Spider-Man”. NASA. 2023年7月10日閲覧。
- ^ この項は Foelix(1982)pp.144-146 を中心に
- ^ 新海栄一 2006, p. 316.
- ^ “クモの糸が導く未来<2> 傷口の治療に効果”. CNN.co.jp. 2023年7月9日閲覧。
- ^ “EVALUATION OF WOUND HEALING POTENTIAL OF SPIDER SILK USING MICE MODEL. - Free Online Library”. www.thefreelibrary.com. 2023年7月9日閲覧。
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