カラビナ カラビナの概要

カラビナ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/14 09:28 UTC 版)

カラビナ

本来は、銃をベルトに下げるための器具であり、Karabinerhaken = Karabinerカービン銃)+ Haken(フック)という語源にそれが残っている[1]

現在は主に登山に使われる。ロープハーネスハーケンクライミングチョックなどの支点を素早く確実に繋ぐことができる。ジュラルミン製が主流である[2]

歴史

初期の歴史

1616年Kriegskunst zu Pferd(直訳:馬上武術)には、カラビナのような器具が登場する[3]。ただし、機構の説明は断片的で、詳細は不明である。

1785年Oeconomischen Encyclopädie(直訳:経済百科事典)には、Karabiner-Haken として、現在のものと基本的には同じ機構(ただしバネはリングの内側)が解説されている[4]

登山への普及

登山にカラビナが使われる前は、ハーケンで身体を確保するのに「身体に結びつけたザイルを一時解いて、ハーケンの環や穴に通す」という極めて面倒で危険なことをやっていた[2]。補助ロープで作った輪をかけてハーケンとザイルを接続する方法も採られ、この輪を大きめに作って「輪抜け」と称して身体ごと潜り抜けるという、今から考えると間抜けなことを大真面目にやった人もいた[2]

カラビナの図入り解説が初めて現れるのは1853年のベルリン消防隊の刊行物で、「ベルリン・ベルト・フック」と呼ばれていた[2]。その後、軽量化されたマギウス製「ウルム・ベルト・フック」が使用された[2]。演習中の消防隊員がこの洋梨型の輪をベルトに装着しているのを見たオットー・ヘルツォーク(Otto Herzog)はこれを登山用に使うことを思いつき、実際の登攀に使えるよう改良した[2]。ハンス・デュルファー(Hans Dülfer)も1910年にはこれを使った確保方法を考え出した[2]。ハンス・フィーヒトルも山行には必ず携行したが、現在のように多数でなく2個だけであったという[2]

しかしハーケンやカラビナを使用することを拒否した者もいて、特にパウル・プロイス(Paul Preuss)は、突然襲いかかって来る危険に際してのみ、その使用が正当化されるとしていたが1913年に墜死した[2]。信条こそ違えど親友だったハンス・デュルファーはその墓の前で子どものように泣いたという[2]

カラビナが使われるようになるとその便利さと安全性はすぐに了解され、急速に普及、岩登りを大きく発展させた[2]

ミュンヘン1913年に開店したスポーツ店シュスターは登山者の要求に極めて好意的に理解を示してカラビナを含む色々な登山用具を提供した[2]。1921年にはニッケル鍍金をし、1935年には不必要なゲート開を防ぐ安全装置付きカラビナを発売している[2]

日本での歴史

実物が手に入らず開閉部の仕組みが分からなかったため、日本での生産はかなり遅れた[2]ロック・クライミング・クラブの湯村という人物が1923年に初めて試作したが、この時点ではバネが内蔵されているヨーロッパ製と違い、いちいちネジを外す形式だったため手間が掛かり、またネジを落とさないよう細心の注意を必要とした[2]

形状

登山・救助用の(ジュラルミン製)カラビナには、基本的に3種類ある。

O型(オーバル型)
左右対称なカラビナのため、厚みのある器具と併用できる。
例: ペツル製 O型カラビナ(商品名: OK)・強度=縦24 kN、横10 kN、オープン7 kN
洋梨形(茄子型)
洋梨の形をしたカラビナ。開口部が広いため、太めの支持物やケーブル等に直接取り付けられる。
例: ペツル製 洋梨型カラビナ(商品名: ウィリアム)・強度=縦25 kN、横7 kN、オープン7 kN
D型
アルミカラビナの中で一番強度のある形。そもそも同じ素材であればD型はO型の3倍の強度があると言われている。D環とも呼ばれる。
例: ペツル製 D型カラビナ(商品名: AmD)・強度=縦28 kN、横8 kN、オープン7 kN

特殊な例だがヴィアフェラータ用の簡易オートロック式安全環を持った開口幅の広いカラビナもある(例: ペツル製カラビナ(商品名: ヴェルティゴ)・強度=縦25 kN、横10 kN、オープン8 kN)。


  1. ^ 「Not for climbing」-登攀用に非ず、と刻印されているが、この刻印がなく外見で区別が難しいものもある。
  1. ^ Carabiner | Definition of Carabiner at Dictionary.com
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 『山への挑戦』pp.139-168。
  3. ^ Johann Jacob von Wallhausen: Kriegskunst zu Pferd. Frankfurt/M. 1616, S. 35
  4. ^ D. Johann Krünitz: Oeconomische Encyclopädie oder Allgemeines System der Land-, Haus- und Staats-Wirthschaft in alphabetischer Ordnung, Band 34, Joachim Pauli, Berlin 1785, S. 628 ff


「カラビナ」の続きの解説一覧




カラビナと同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「カラビナ」の関連用語

カラビナのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



カラビナのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのカラビナ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS