オフセット印刷
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/14 15:59 UTC 版)
概要
印刷の原理
平版とは印刷の版式の一つで、版の撥水性を利用した印刷方法である。版材に石を用いる石版印刷が平版の最初だが、現在ではアルミに感光剤を塗布したPS版(pre-sensitized plate)が主流となっている。
イメージを作る前の原版(PS版)は、親水性の支持体を、親油(撥水)性の感光層で覆ったものである。この上に、版下から製版したフィルムを載せ、フォトリソグラフィにより、非画線部の親油層を除去する。この原版を版胴に巻き付け、水ローラーで湿し水(しめしみず)を付けると、親油層の除去された部分にのみ水が乗る。
続いてインキを付けるが、非画線部には水があるためインキが乗らず、画線部にのみインキが付着した状態になる。このインキを、原版からブランケットと呼ばれるゴム筒に一旦移した後、改めて紙に転写する。
非常に鮮明な印刷が可能で、版が直接紙に触れないことから胴の磨耗が少なく、大量印刷にも適する。輪転機を使用すれば短時間で大量の印刷が可能になる。紙に施す印刷技術としては、立体感が劣る、設備投資にかかる費用が高いといった点以外はほとんど欠点らしい欠点が無く、オフセット印刷用の用紙の発達もあり、現在世界中で供給される商業印刷機の多くをオフセット機が占めている。
一方で、湿し水には、揮発性有機化合物が使用されていることが多く(表面張力低下能力と増粘性のために約5〜20%程度のイソプロピルアルコールが添加される[2])、環境問題が指摘されることも多い。そのため、近年では、水の替わりにシリコン層を代用する「水なし印刷方式」が開発され、徐々にシェアを伸ばしている。なお、刷版に凸版やグラビア版を用いる「ドライオフセット印刷」は、平版を用いる「水なし印刷」とは別物である。
オフセット印刷の刷版 上図は層の厚みが誇張されているが、実際には凹凸がほとんど無い版のため「平版」という |
湿式と乾式
オフセット印刷には、湿式オフセットと水なしオフセットの2種類がある。湿式オフセット・リソグラフィは、インキの付着を管理し、非画像部を保護するために、湿潤液(湿し液)を混合して使用する。水なしオフセット・リソグラフィーは、インクをはじくシリコンの層によって版の非画像部を保護する、異なる方法を採用している。水なしオフセット・リソグラフィは新しいもので、1960年代に3M社によって発明された。その後、東レによって販売・商品化された[3]。
オフセット印刷の利点
他の印刷方法と比較したオフセット印刷の利点は以下の通り。
- オフセット印刷は、鮮明できれいな画像を生成し、活版印刷などよりもシャープできれいな画像や活字が簡単に印刷できる。 これは、ゴムブランケットが印刷面の質感に適合するためである。
- 刷版を迅速かつ容易に製造できる。
- 刷版と印刷面が直接接触しないため、ダイレクト・リソ印刷機よりも刷版の寿命が長い。最適化されたインキと湿し水とともに使用される適切に現像された版は、100万インプレッション以上の印刷長を達成することができる。
- コストが安価である。オフセット印刷は、商業印刷で高品質の印刷物を大量に生産するための最も安価な方法である。
- スクリューキーでファウンテンローラーのインク量を調整する機能。最も一般的なのは、金属製のブレードで、インキダクトからファウンテンローラーに転写されるインキ量をコントロールする。スクリューを調整することで、オペレーターはブレードとファウンテンローラー間のギャップを変え、特定の領域でローラーに塗布されるインキ量を増減させます。その結果、画像の各領域の色の濃度が変化する。古い機械では、ねじを手動で調整するが、最新の機械では、ねじのキーは、機械を制御するプリンタによって電子的に操作され、はるかに正確な結果を可能にする[4]。
オフセット印刷の欠点
- グラビア印刷に比べ、画質がやや劣る。
- アルマイト印刷版は、現像された版が適切に手入れされないと、(化学的酸化により)感度が低下し、画像背景以外の部分に印刷される傾向がある。
- 版の製作や印刷機のセットアップにかかる時間とコストが削減された。その結果、ごく少量の印刷であれば、デジタルオフセット印刷機が使われるようになった。
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