アルケン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/26 06:13 UTC 版)
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アルケン類の命名
慣用名の「オレフィン」
古くから、ある種の気体は塩素を作用させると油状の物質が得られることから、ラテン語の「油(羅: oleum)」に因み、このような気体を「生油気、オレフィン・ガス(英: olefiant gas)」と呼んでいた。この気体はエチレンであることが判り、炭素の二重結合を持つ炭化水素をオレフィン系炭化水素、単にオレフィン、またはエチレン系炭化水素と総称していた。[1]
IUPAC命名法
IUPAC命名法によるアルケン類の系統名は、対応するアルカン (alkane) の語尾 -ane を -ene に変化させるだけの単純なものである。例えば、対応するアルカンがエタン (ethane) CH3-CH3 の場合、アルケン CH2=CH2 はエテン (ethene) となる。
二重結合の位置の異なる異性体(二重結合異性体)を持つ、及び置換基のあるアルケンについての命名法は以下の規則に従う。
- 二重結合を含む最も長い炭素鎖を主鎖とする。単結合だけならばより長い炭素鎖がありえたとしても、それを主鎖と認めない。
- 二重結合の炭素の位置番号は、最も小さくなるように振る。
- 二重結合の位置を、2つの炭素のうち小さいほうの位置番号で示す。シクロアルケンの場合、二重結合の位置は1番か2番と決まっているので、二重結合の位置を示す数を名前につけない。また、どちらの末端から数えても二重結合の位置が同じなら、主鎖を沿って初めに出会う置換基の番号がより小さい末端を1とする。
二重結合は自由に回転しないため、二重結合の炭素それぞれが互いに異なる2つの置換基を持っている場合、立体異性体が生じる。例えば、1,2-2置換エテンの場合、以下の2つの立体異性体があり得る。
上図左のように、置換基が同じ側に並んでいる立体配置をシス (cis)、右のように、置換基が違う側に位置している立体配置をトランス (trans) と呼ぶ。これは二置換シクロアルカンのシス、トランスと同様である。直線で表す表記法では以下のように表すことができる。
これら立体化学だけが異なるアルケンの異性体をシス-トランス異性体という。シス-トランス異性体はジアステレオマーである。上図に明らかなように、シス-トランス異性体をもつ最小のアルケンは、2-ブテンである。二重結合の炭素が置換基を3つ以上有していた場合、E/Z表記法で区別する。まずカーン・インゴルド・プレローグ順位則により二重結合の炭素それぞれに存在する置換基を別々に順位付ける。そして二重結合の炭素それぞれのより優先順位の高い置換基どうしの位置関係からEかZであると決定する。すなわち、それらの置換基がシス体のように隣り合っているならば Z 配置、トランス体のように向かいにあるなら E 配置と表記する。
(Z)-1-ブロモ-1,2-ジフルオロエテン | (E)-2,3-ジメチルヘプタ-2-エン |
基官能命名法において、官能基を持つアルケンでは、主鎖及び末端の決定に、官能基が二重結合よりも大きな影響力を持つ。例えばヒドロキシ基を持つアルケンは、二重結合を持つアルコールと解釈され、「アルケノール」と命名される。アルケノールの主鎖はヒドロキシ基と二重結合を両方とも含まねばならない。また、番号付けはヒドロキシ基の番号が小さくなる方を採用する。
枝分かれや置換基を持つアルケンはアルカンと同様の方法で命名する。二重結合の位置は、アルキル基の位置に優先する。
ヘキサ-1-エン | 4-メチルヘキサ-1-エン | 2-エチル-4-メチルヘキサ-1-エン |
慣用名
アルケンはIUPAC命名法による名称とは別に慣用名を持つことがある。以下に例を示す。
IUPAC名: | エテン | プロペン | 2-メチルプロペン |
慣用名: | エチレン | プロピレン | イソブテン、イソブチレン |
主なアルケン
- エチレン(エテン) n = 2, C2H4
- プロピレン(プロペン) n = 3, C3H6
- ブテン n = 4, C4H8
- ペンテン n = 5, C5H10
- ヘキセン n = 6, C6H12
- ヘプテン n = 7, C7H14
- オクテン n = 8, C8H16
- ノネン n = 9, C9H18
- デセン n = 10, C10H20
- ^ “コトバンク - 世界大百科事典「アルケン」”. 2018年9月23日閲覧。
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