弁護士
(代言人 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/08/19 16:02 UTC 版)
| 弁護士 | |
|---|---|
イギリスの女性弁護士(1950年)
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| 基本情報 | |
| 職種 | 法曹 |
| 職域 | 法律事務 |
| 詳細情報 | |
| 必須試験 | 司法試験・司法修習 |
| 関連職業 | 裁判官、検察官、司法書士、弁理士、税理士 |
弁護士(べんごし、英: lawyer / attorney)は、法律に関する専門的知識に基づき、依頼者その他の関係人のために法律事務を取り扱う法律専門職である。
日本では、弁護士法に基づく国家資格であり、訴訟事件、非訟事件、行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事務を取り扱うことを職務とする。弁護士法は、弁護士の使命を「基本的人権を擁護し、社会正義を実現すること」と定めている。“弁護士法”. 総務省・デジタル庁「e-Gov法令検索」. 2026年8月18日閲覧。
弁護士は、法律相談、法律文書の作成、交渉、民事・家事事件、刑事弁護、行政事件、企業法務、倒産・事業再生など、法律に関する幅広い業務を行う。
名称と概念
「弁護士」は法律専門職としての資格又は職業を指すのに対し、「弁護人」は刑事訴訟などにおいて被疑者・被告人のために訴訟上の活動を行う者を指す。
したがって、両者は同義ではなく、弁護士が刑事事件において弁護人として活動するという関係にある。
外国語の ‘‘lawyer’’、’‘attorney’’、’‘Rechtsanwalt’’、’‘avocat’’ などは、それぞれの国・地域の法律専門職制度を背景としているため、日本の「弁護士」と完全に同一の制度を意味するものではない。
歴史
西洋
法律専門職の起源は、古代の法廷における当事者の援助者や法律助言者にまでさかのぼるとされる。
中世ヨーロッパでは、ローマ法及び教会法の研究が大学で行われ、法律を専門的に学んだ法律家が形成された。その後、各地域の司法制度の発展に伴って、法廷弁論、訴訟代理、法律相談その他の法律業務を担う法律専門職が発達した。
近代以降の制度は国によって異なり、単一の歴史的系譜から説明することはできない。イングランドではコモン・ローの発展に伴い法廷弁護士(barrister)と事務弁護士(solicitor)が形成され、大陸ヨーロッパではローマ法を基礎とする法体系の下で法律専門職が発達した。
日本
近世以前
近世以前の日本には、現代の弁護士に相当する統一的な国家資格制度は存在しなかった。
代言人制度
明治維新後、近代的な司法制度の整備に伴い、訴訟に関与する専門職として代言人制度が形成された。
その後、代言人の資格及び職務を規律する法制度が整備され、近代的な法律専門職制度へと発展した。
1893年弁護士法
1893年(明治26年)3月4日、弁護士法(明治26年法律第7号)が公布された。同法は、それまでの代言人制度を改め、「弁護士」という名称を用いる制度を定めた。“弁護士法(明治26年法律第7号)”. 国立国会図書館「日本法令索引」. 2026年8月18日閲覧。
1933年弁護士法
1933年(昭和8年)5月1日には、明治26年法律第7号を全部改正する弁護士法(昭和8年法律第53号)が公布された。“弁護士法(昭和8年法律第53号)”. 国立国会図書館「日本法令索引」. 2026年8月18日閲覧。
現行弁護士法
第二次世界大戦後、司法制度の改革に伴って弁護士制度も再編され、1949年(昭和24年)6月10日に現行の弁護士法(昭和24年法律第205号)が公布された。同法は、1933年弁護士法を全部改正したものである。“弁護士法(昭和24年法律第205号)”. 国立国会図書館「日本法令索引」. 2026年8月18日閲覧。
日本の弁護士
法的地位
日本では、弁護士法に基づく国家資格として弁護士制度が設けられている。
弁護士法第1条は、弁護士の使命を基本的人権の擁護及び社会正義の実現と定め、弁護士がその使命に基づき誠実に職務を行うことを定めている。“弁護士法”. e-Gov法令検索. 2026年8月18日閲覧。
同法第2条は、弁護士が深い教養及び高い品性の保持に努め、法令及び法律事務に精通することを定めている。
職務
弁護士法第3条は、弁護士の職務を、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によって、訴訟事件、非訟事件、行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことと定めている。
また、同条第2項により、弁護士は弁理士及び税理士の事務を行うことができる。これらについては、それぞれの資格を規律する法令による登録等の制度が存在する。
法律事務の取扱い
弁護士法は、弁護士又は弁護士法人でない者による法律事務の取扱いについて規制を設けている。
弁護士法第72条は、弁護士又は弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で法律事務を業として取り扱うことを原則として禁止している。
また、第74条は、弁護士でない者が弁護士であると誤認させるような表示をすることを禁止している。
民事・家事事件
民事・家事事件では、依頼者の代理人として裁判手続を行うほか、裁判外の交渉、法律相談、法律文書の作成などを行う。
主な取扱分野には、
- 損害賠償
- 交通事故
- 金銭貸借
- 不動産・賃貸借
- 消費者問題
- 労働問題
- 離婚
- 相続
- 成年後見
などがある。
刑事弁護
刑事事件では、弁護士が弁護人として被疑者又は被告人の権利を擁護する。
捜査段階では、取調べ等への対応についての助言、身体拘束からの解放に向けた活動、示談、不起訴処分に向けた活動などを行うことがある。
公判では、証拠の検討、証人尋問、被告人質問、最終弁論などを行う。
また、再審請求などの刑事司法上の救済手続に関与することもある。
犯罪被害者側の代理人として、告訴・告発、損害賠償請求などを行う弁護士もいる。
行政事件
行政事件では、行政庁の処分等に関する取消訴訟その他の訴訟、行政不服申立て、行政機関との交渉などを取り扱う。
弁護士法第3条は、行政庁に対する不服申立事件に関する行為を弁護士の職務に含めている。
企業法務
企業を依頼者として、企業活動に伴う法律問題を取り扱うことを企業法務という。
分野には、契約、会社法、コーポレートガバナンス、M&A、金融、知的財産、労働、事業再生、紛争処理などがある。
企業に雇用されて法律業務を担当する弁護士は、インハウスローヤーと呼ばれる。
倒産・事業再生
弁護士は、破産、民事再生、会社更生などの倒産手続、私的整理及び事業再生を取り扱う。
破産手続では、債務者の代理人だけでなく、裁判所から選任される破産管財人として活動する場合もある。
その他の分野
弁護士は、知的財産、労働、国際取引、スポーツ、外国人に関する法律問題、医療その他の専門分野でも活動する。
官公署、企業、公益法人等に勤務して法律業務を担当する弁護士もいる。
資格制度
弁護士となる資格
弁護士法第4条は、司法修習生の修習を終えた者が弁護士となる資格を有すると定めている。
また、同法には、一定の裁判官経験者、検察官経験者その他の者について、一定の要件の下で弁護士となる資格を認める規定が置かれている。
資格取得過程
一般的な法曹資格取得過程では、法科大学院課程又は司法試験予備試験を経て司法試験を受験し、司法試験合格後に司法修習を修了する。
司法修習を修了して弁護士となる資格を取得した者は、弁護士のほか、裁判官又は検察官となることもできる。
法科大学院、司法試験、司法修習及び弁護士資格については、学校教育法、司法試験法、裁判所法及び弁護士法などの関係法令によって規律されている。
弁護士登録
弁護士となる資格を取得した者が弁護士として活動するためには、日本弁護士連合会に備えた弁護士名簿への登録が必要である。
登録は、入会しようとする弁護士会を経て請求する制度となっている。
弁護士会と弁護士自治
弁護士は、原則として所属する弁護士会に入会し、日本弁護士連合会に登録する。
弁護士会及び日本弁護士連合会は、弁護士の登録、職業上の規律、懲戒その他の制度に関与する。
弁護士会及び日本弁護士連合会を中心として弁護士の職務を自主的に規律する制度は、一般に弁護士自治と呼ばれる。
弁護士自治は、弁護士の職務上の独立性を確保するとともに、弁護士制度の適正な運営を確保することを目的としている。
義務と懲戒
弁護士は、弁護士法その他の法令、日本弁護士連合会及び所属弁護士会の会則等に従って職務を行う。
弁護士には、依頼者との関係における守秘、利益相反の回避、誠実な職務遂行など、法律専門職としての職業倫理が求められる。
弁護士による非行については、弁護士法に基づく懲戒制度が設けられている。
懲戒には、戒告、2年以内の業務停止、退会命令及び除名がある。懲戒手続は弁護士会及び日本弁護士連合会が法令及び会則等に基づいて行う。
就業形態
弁護士の就業形態には、
- 法律事務所の経営
- 法律事務所への勤務
- 弁護士法人への勤務
- 企業内弁護士
- 官公署への勤務
- 公益法人等への勤務
- 独立開業
などがある。
法律事務所には、一人又は少数の弁護士による事務所から、多数の弁護士を擁する大規模事務所まで様々な形態がある。
複数の弁護士が特定の事件について共同して活動する場合には、弁護団が組織されることがある。
隣接法律専門職との関係
日本では、弁護士の職務範囲が広いため、司法書士、弁理士、税理士、行政書士、社会保険労務士、海事代理士などの隣接法律専門職と業務が重なる場合がある。
弁護士法第3条第2項は、弁護士が弁理士及び税理士の事務を行うことを認めている。
一方、それぞれの士業について独占業務等を定める個別の法律が存在するため、具体的な業務の取扱いについては各士業法との関係を考慮する必要がある。
外国法事務弁護士
日本では、外国法に関する法律事務を取り扱う外国弁護士について、外国弁護士による法律事務の取扱い等に関する法律に基づく外国法事務弁護士制度が設けられている。“外国弁護士による法律事務の取扱い等に関する法律”. e-Gov法令検索. 2026年8月18日閲覧。
各国の弁護士制度
各国の法律専門職制度は、法体系、司法制度及び歴史的経緯によって異なる。
日本の「弁護士」と外国の ‘‘lawyer’’、’‘attorney’’、’‘Rechtsanwalt’’、’‘avocat’’ 等は、必ずしも同一の資格制度ではない。
ドイツ
ドイツでは、弁護士(Rechtsanwalt)は連邦弁護士法(Bundesrechtsanwaltsordnung; BRAO)によって規律されている。
BRAO第1条は弁護士を「司法の独立した機関」(unabhängiges Organ der Rechtspflege)と位置付け、第2条は弁護士業を自由業とし、第3条は弁護士を法律問題についての独立した助言者及び代理人として位置付けている。“§ 1 BRAO” (ドイツ語). Bundesministerium der Justiz. 2026年8月18日閲覧。
ドイツでは、法学教育と司法修習を組み合わせた共通の法曹養成制度が設けられており、一定の要件を満たした者が裁判官、検察官、弁護士などの法律専門職に進む。
フランス
フランスでは、弁護士を ‘‘avocat’’ と呼ぶ。
1971年12月31日法律第71-1130号第1条は、弁護士を「自由業かつ独立した職業」(profession libérale et indépendante)と位置付けている。“Loi n° 71-1130 du 31 décembre 1971, article 1” (フランス語). Légifrance. 2026年8月18日閲覧。
同法は弁護士の資格、職務、登録及び職業団体等について規定している。
イングランド及びウェールズ
イングランド及びウェールズでは、伝統的に法廷弁護士(barrister)と事務弁護士(solicitor)の区別が存在する。
2007年法律サービス法(Legal Services Act 2007)は、一定の法律業務を ‘‘reserved legal activities’’ として規律している。同法は、法廷代理、訴訟遂行、一定の不動産関係業務、遺言検認、公証及び宣誓の取扱いを対象としている。“Legal Services Act 2007” (英語). UK Legislation. 2026年8月18日閲覧。
アメリカ合衆国
アメリカ合衆国では、弁護士資格は原則として各州その他の管轄区域によって付与される。
そのため、全国共通の単一の「米国弁護士資格」が存在するわけではない。司法試験の受験資格、法学教育、登録、職業倫理及び懲戒制度は、各管轄区域の法令、裁判所規則その他の規範によって定められる。
インド
インドでは、1961年弁護士法(Advocates Act, 1961)によって法律専門職制度が規律されている。
同法は、インド弁護士会(Bar Council of India)及び州弁護士会(State Bar Councils)について規定し、弁護士の登録、法廷等における活動、職業上の行為及び懲戒制度を定めている。“The Advocates Act, 1961” (英語). India Code. 2026年8月18日閲覧。
| 国・地域 | 主な法律専門職 | 制度上の特徴 |
|---|---|---|
| 日本 | 弁護士 | 弁護士法に基づき一般の法律事務を取り扱う。弁護士会及び日本弁護士連合会による弁護士自治がある。 |
| ドイツ | Rechtsanwalt | 弁護士を「司法の独立した機関」と位置付ける。 |
| フランス | avocat | 自由業かつ独立した職業として位置付ける。 |
| イングランド及びウェールズ | barrister、solicitor等 | 複数の法律専門職とreserved legal activitiesを中心とする規制制度。 |
| アメリカ合衆国 | attorney、lawyer等 | 州その他の管轄区域ごとに資格が付与される。 |
| インド | advocate | Advocates Act 1961に基づきBar Councilを中心とする制度が設けられている。 |
制度上の課題
司法アクセス
弁護士へのアクセスを確保することは、法律サービス及び司法制度へのアクセスを確保する上で重要な課題となる。
各国では、法律扶助、国選弁護その他の制度によって、経済的事情等により弁護士への依頼が困難な者を支援する制度が設けられている。
地域的偏在
弁護士の地域的分布には偏りが生じることがあり、特定地域への集中と法律サービスへのアクセスとの関係が問題となる場合がある。
日本でも、弁護士へのアクセスを確保するため、日本司法支援センター(法テラス)や弁護士会等による制度が設けられている。
職業倫理と懲戒
弁護士には、法律専門職として高い職業倫理が求められる。
各国では、依頼者との利益相反、守秘義務違反、預り金の不正使用その他の非行について、登録取消し、業務停止、戒告等の懲戒制度が設けられている。
関連する法律専門職
関連項目
脚注
参考文献
- 国立国会図書館「日本法令索引」
- e-Gov法令検索「弁護士法」
- 日本法令外国語訳データベースシステム「弁護士法」
- Bundesministerium der Justiz, ‘‘Bundesrechtsanwaltsordnung’’
- Légifrance, ‘‘Loi n° 71-1130 du 31 décembre 1971’’
- UK Legislation, ‘‘Legal Services Act 2007’’
- India Code, ‘‘The Advocates Act, 1961’’
外部リンク
- 日本弁護士連合会
- 弁護士法(e-Gov法令検索)
- 弁護士法(昭和24年法律第205号)(国立国会図書館「日本法令索引」)
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