フィロー線
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/29 04:54 UTC 版)
幾何学において、フィロー線(フィローせん、ヒーローせん[1]、フィローの線[2]、英: Philo line)または、フィロン線(Philon line)は、ある角とその内側にある点に対して定義される、その点を通り角を成す2直線上に端点を持つ、最短線分である[3][4][5]。発明家のビザンチウムのフィロンに因んで名付けられた[6]。フィロンはこの線分を立方体倍積問題の解決に用いた[7][8]。フィロー線は定規とコンパスによる作図ができない[7][9]。
幾何学的な特徴づけ

フィロー線は頂角を通る垂線によって幾何学的な定義ができる。点Pと∠DOEのフィロー線をDEとする。ただしD, E ≠ O。またDEと、DEの頂角Oを通る垂線との交点をQとする。このときDP = EQ, EP = DQとなる[7]。
逆にPとQが、線分DEの端点との距離が等しく、頂角Oを通るDEの垂線がQを通れば、この線分DEは点Pと∠DOEのフィロー線である[7]。
代数的な構築
頂角Oに対するそれぞれ端点D, Eの方向とPの位置を適切に固定することで、以下のように代数的手法によって、フィロー線を得られる。
Oを原点とする直交座標系を描く。Eをx軸上にある点、Dを直線y = mx (m ≠ 0)上にある点とする。mは∠DOEの正接となる。∠DOE内の点Pの座標を(Px, Py)として、E = (Ex, 0)とD = (Dx, Dy) = (Dx, mDx)の座標を得る事を目標とする。
傾きα ≠ 0を持つ直線が(x, y) = (Px, Py)を通るとき、その直線の方程式は、
OQが垂線であるから、三角関数を用いて、辺の長さを次のように表せる。ここで、∠POQ = ϕ, ∠DOE = θb, ∠DOQ = θc, OQ = h, OP = aとする。
立方体倍積問題が定規とコンパスによる作図では不可能であることから、フィロー線の作図不可能性が証明された[7][9]。

R = (0, 0)、Q, Sをそれぞれ正のx, y軸上の点とすると、V, Pの座標はそれぞれ(3√a2b, 3√ab2), (3√ab2, 3√a2b)となる。つまり、V, Pは長方形の外接円と双曲線xy = abの第一象限上の交点である。紐などを用いて円錐曲線を描くことができる場合は、これと同様にしてフィロー線を得られる。
面積の最小化
D, Eの座標をそれぞれ(Dx, Dy), (Ex, Ey)とする。△OEDの面積は次の式で表すことができる。
∂A/∂α = 0となるようなαを見つけることによって、面積は最小化される。
α = Px/Pyは不適であるから、もう一方の解
を採用し、面積の最小値を得る。
出典
- ^ 藤田外次郎『新撰数学講義 下巻』博文館、1904年、215頁。NDLJP:826286。
- ^ 長沢亀之助『問題解法幾何学辞典』長沢亀之助、1912年、487頁。NDLJP:925384。
- ^ るーしぇ、こんふるーす 著、小倉金之助 編『初等幾何学 第1巻 平面之部』山海堂、1913年。NDLJP:930885。
- ^ 林鶴一『初等幾何学極大極小問題』大倉書店、1910年、111頁。NDLJP:828606。
- ^ ジョン・ケージ 著、山下安太郎, 高橋三蔵 訳『幾何学続編』有朋堂、1909年。NDLJP:828521。
- ^ Bernard Vitrac. “Mécanique et mathématiques à Alexandrie : le cas de Héron”. HAL. 2024年7月27日閲覧。
- ^ a b c d e Eves, Howard (1965). “A Survey of Geometry”. Allyn and Bacon (vol2).
- ^ Wells, David (1911). “Philo's line”. The Penguin Dictionary of Curious and Interesting Geometry.: 182–183.
- ^ a b Kimberling, Clark (2003). Geometry in action: a discovery approach using the Geometer's Sketchpad. Emeryville, CA: Key College Pub. ISBN 978-1-931914-02-4
- ^ Les plus grands scientifiques du bassin méditerranéen, Philon de Byzance
- ^ Coxeter, H. S. M.; van de Craats, Jan (1993-11). “Philon lines in non-Euclidean planes”. Journal of Geometry 48 (1-2): 26–55. doi:10.1007/bf01226799. ISSN 0047-2468 .
参考文献
- Neovius, Eduard (1888). “Ueber eine specielle geometrische Aufgabe des Minimums”. Mathematische Annalen 31 (3): 359–362. doi:10.1007/BF01206220 .
- Neuberg, J. (1907). “Sur un minimum”. Mathesis: 68–69.
- Wetterling, W. W. E. (1996). “Philon's line generalized: an optimization problem from geometry”. Journal of Optimization Theory and Applications 90 (3): 517–521. doi:10.1007/BF02189793. MR 1402620 .
関連項目
外部リンク
- Weisstein, Eric W. “Philo Line”. mathworld.wolfram.com (英語).
- フィロー線のページへのリンク