コエフィシェント・ギビングとは? わかりやすく解説

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コエフィシェント・ギビング

(Open_Philanthropy から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/03/19 12:44 UTC 版)

コエフィシェント・ギビング
Coefficient Giving
設立 2011年(ギブウェル・ラボスとして)
設立者 アレクサンダー・バーガー(CEO・共同創業者)
種類 非営利有限責任会社 (LLC)
所在地 アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコ
重要人物 カーリー・ツナ(理事長)、ダスティン・モスコヴィッツ
ウェブサイト coefficientgiving.org
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コエフィシェント・ギビング英語: Coefficient Giving)は、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコを拠点とするフィランソロピー(慈善活動)の助成および諮問機関である。 旧名称はオープン・フィランソロピー英語: Open Philanthropy)。2011年の 設立以来、グローバルヘルス、科学研究、パンデミック対策、先進AIリスク、農場動物の福祉など幅広い分野に対し、2025年6月時点で累計40億ドル以上の助成を主導してきた[1]

設立当初からの主要パートナーは、ダスティン・モスコヴィッツとカーリー・ツナ夫妻が運営する慈善財団グッド・ベンチャーズ(Good Ventures)である[2]。2025年11月18日、複数の寄付者を対象としたマルチドナー運営への拡充を機に、組織名をコエフィシェント・ギビングへと改称した[3]

歴史

2011年、カーリー・ツナとダスティン・モスコヴィッツは自身の慈善財団グッド・ベンチャーズを設立し、効果的な資産運用の指針を求めて慈善活動評価機関ギブウェル(GiveWell)と協議を開始した[2]。ギブウェルはホールデン・カルノフスキー とイーライ・ハッセンフェルドが2007年に設立した非営利組織で、証拠に基づく慈善活動の評価を専門とする[4]。この協議は、大規模な資金をどこに投じれば最大のインパクトをもたらせるかを探る共同プロジェクト「ギブウェル・ラボス(GiveWell Labs)」の創設へとつながった[2]

2014年、ギブウェル・ラボスは活動範囲の拡大と外部からの混同を避けるため、「オープン・フィランソロピー・プロジェクト(Open Philanthropy Project)」へと改称した[2]。2017年には独立した有限責任会社(LLC)として分離独立し、GiveWellと財務・人事・統治機構を分離した[5]。2019年には名称を「オープン・フィランソロピー(Open Philanthropy)」に短縮し、グローバルヘルスから長期的リスク対策まで多様な分野で助成規模を拡大し続けた[2]

2025年にはリード曝露削減基金(Lead Exposure Action Fund)およびアバンダンス&グロース基金(Abundance & Growth Fund)という2つのプール型ファンドを立ち上げ、グッド・ベンチャーズ以外の複数の大口寄付者との協働モデルを本格化させた[1]。2024年にはグッド・ベンチャーズ以外の寄付者からの助成を1億ドル以上主導し、2025年にはその額を倍増させた[3]。こうした変化を背景に、2025年11月18日、組織は新名称「コエフィシェント・ギビング」を発表した。

名称の由来

「コエフィシェント(Coefficient、係数)」という名称は、2025年2月のリーダーシップ会議での議論を経て、外部の命名エージェンシーとの協議により選定された[6]。係数は掛け合わさる対象の価値を乗算するものであり、組織が寄付者や助成先のインパクトを増幅させるという役割を象徴している。また「Co(コ)」は寄付者や助成先との協働を、「efficient(エフィシェント)」はコスト効率性という指針を示唆している[6]。改称以前の「オープン・フィランソロピー」という名称は、OpenAIやオープン・ソサエティ財団(Open Society Foundations)と混同されることが多く、ブランドとしての明確性に課題があったことも改称の要因のひとつとなった[6]

創業者・主要人物

ダスティン・モスコヴィッツ

ダスティン・モスコヴィッツ(Dustin Moskovitz)は、Facebookおよびその親会社メタ・プラットフォームズの共同創業者であり、プロジェクト管理ツールを提供するAsanaの共同創業者でもある。妻カーリー・ツナとともに2011年にグッド・ベンチャーズを設立し、ギブウェル・ラボス(後のコエフィシェント・ギビング)の主要な資金源となってきた[7]。モスコヴィッツとトゥーナはビル・ゲイツウォーレン・バフェットが主導するギビング・プレッジ(Giving Pledge)に2010年に署名した最年少カップルである[7]

カーリー・ツナ

カーリー・ツナ(Cari Tuna)は元ウォール・ストリート・ジャーナル記者で、グッド・ベンチャーズの共同創業者かつコエフィシェント・ギビングの理事長を務める。ピーター・シンガーの著書『あなたが救える命(The Life You Can Save)』を通じて効果的利他主義に触れ、慈善活動へのフルタイムコミットを決意した[8]

アレクサンダー・バーガー

アレクサンダー・バーガー(Alexander Berger)は、コエフィシェント・ギビングの共同創業者かつCEOである。スタンフォード大学で哲学の学士号と教育の修士号を取得後、2011年にギブウェルの初期スタッフとして参加し、GiveWell Labsの創設に携わった[9]。共同CEOを経て、2024年に単独のCEOに就任した[10]。バーガーは2011年に見知らぬ他者に腎臓を提供した経験でも知られ、腎臓の規制された売買市場の設立を主張するコラムをニューヨーク・タイムズ紙に寄稿したこともある[9]

助成の方針・原則

コエフィシェント・ギビングは「戦略的原因選択(Strategic Cause Selection)」と呼ばれる独自のプロセスを通じて助成分野を選定する。選定基準として以下の3つを用いる[11]

  • 重要性(Importance):どれだけ多くの人々に、どれほど深刻な影響を与える問題か。
  • 見過ごされ度(Neglectedness):他の主要フィランソロピストに十分な注目や資金を受けているか。
  • 対処可能性(Tractability):フィランソロピーによる資金援助が、問題解決の有意な前進に貢献できる見込みがあるか。

これらの基準は、最終目標であるコスト効率性の最大化を測る指標として機能する[11]。また、科学的根拠が乏しくとも成功すれば大きなインパクトをもたらす可能性のある「ヒッツ型助成(Hits-Based Giving)」アプローチも採用している。

資金調達とファンド構造

コエフィシェント・ギビングは改称にあわせて、従来のプログラム領域をすべてマルチドナー型ファンドへと再編した。2025年時点で13のファンドが設置されており、各ファンドが独立した助成ポートフォリオを運営している[12]

主なファンドは以下のとおりである。

  • グローバルヘルス&ウェルビーイング機会基金(Global Health & Wellbeing Opportunities Fund):350件以上の助成、13億ドル以上を拠出済みの中核基金。証拠に基づくヘルス介入を世界規模で支援する[13]
  • ナビゲーティング・トランスフォーマティブAI基金(Navigating Transformative AI Fund):AIアライメントや先進AIによる実存リスク削減を目的とした研究を支援する。2015年以来のAI安全性分野の先駆的資金提供者である[14]
  • 鉛曝露削減基金(Lead Exposure Action Fund):貧困国における鉛曝露を削減するための資金プール。グッド・ベンチャーズ、ゲイツ財団など12の寄付者が参加し、1億2500万ドルを超える資金を拠出した。世界全体の鉛対策フィランソロピー支出を約2倍にすることを目標とする[15]
  • アバンダンス&グロース基金(Abundance & Growth Fund):2025年3月に発足した基金。グッド・ベンチャーズ、パトリック・コリソン(Stripe共同創業者)ほかとの協働により3年間で1億2000万ドルを投じ、経済成長と科学技術の進歩を促進する[16]
  • 農場動物福祉基金(Farm Animal Welfare Fund):工場畜産における劣悪な環境の改善、代替タンパク質の開発・普及を支援する。
  • バイオセキュリティ&パンデミック対策基金(Biosecurity & Pandemic Preparedness Fund):パンデミック感染症のサーベイランス、ゲイン・オブ・ファンクション研究の制限、次世代個人防護具の開発などを支援する。
  • 科学・グローバルヘルスR&D基金(Science and Global Health R&D Fund):障害調整生存年(DALY)当たりの負担に比べて公的・民間資金が不足している生物医学研究分野を重点的に支援する[17]
  • これらのほか、大気質(Air Quality)、効果的ギビング&キャリア(Effective Giving & Careers)、予測(Forecasting)、グローバル援助政策(Global Aid Policy)、グローバル成長(Global Growth)、地球規模の壊滅的リスク(Global Catastrophic Risks Opportunities)の各基金が設けられている[12]

主な助成先・実績

  • グローバルヘルス分野の介入を通じて推定10万人の命を救ったとしている[1]
  • 2017年にOpenAIの非営利部門へ3000万ドルを助成した[18]
  • R21マラリアワクチンの後期臨床試験を支援した。このワクチンは現在、世界規模で子どもたちへの接種が進められている[1]
  • YIMBYおよび住宅供給促進運動の最初期かつ主要な支援者であった[1]
  • 欧州および米国において2013年以来3000社以上が採卵鶏のケージ飼育廃止を約束し、2億5000万羽以上が恩恵を受けた[19]

効果的利他主義との関係

コエフィシェント・ギビングは効果的利他主義(EA: Effective Altruism)の哲学的基盤と共鳴しつつも、必ずしも効果的利他主義コミュニティに限定した活動をしているわけではない。理事長のカーリー・ツナはAP通信に対し、資金提供パートナーの大多数は効果的利他主義コミュニティとは無関係であると述べている[11]。組織の理念的基盤には、ピーター・シンガーの功利主義的倫理学と、GiveWellが開拓した厳密な費用対効果分析の手法が深く根ざしている[8]

脚注

  1. ^ a b c d e Press Release: Open Philanthropy Becomes Coefficient Giving, Expanding Work With Multiple Donors”. Coefficient Giving (2025年11月18日). 2026年3月19日閲覧。
  2. ^ a b c d e Our History”. Coefficient Giving. 2026年3月19日閲覧。
  3. ^ a b Open Philanthropy Is Now Coefficient Giving”. Coefficient Giving (2025年11月18日). 2026年3月19日閲覧。
  4. ^ Open Philanthropy Tackles the “Low-Hanging Fruit” in Public Health”. Inside Philanthropy. 2026年3月19日閲覧。
  5. ^ The Relationship Between GiveWell and Coefficient Giving”. GiveWell (2017年9月). 2026年3月19日閲覧。
  6. ^ a b c The Story Behind Our New Name”. Coefficient Giving (2025年12月10日). 2026年3月19日閲覧。
  7. ^ a b Meet the millennial Meta cofounder and his wife who are giving away $20 billion”. Fortune (2025年11月10日). 2026年3月19日閲覧。
  8. ^ a b Giving in the Light of Reason”. Stanford Social Innovation Review. 2026年3月19日閲覧。
  9. ^ a b Alexander Berger”. Coefficient Giving. 2026年3月19日閲覧。
  10. ^ Alexander Berger is Now Sole CEO of Open Philanthropy”. Coefficient Giving. 2026年3月19日閲覧。
  11. ^ a b c Open Philanthropy Is Now Coefficient Giving. Here’s What Has (and Hasn’t) Changed”. Inside Philanthropy. 2026年3月19日閲覧。
  12. ^ a b How to get a grant from Coefficient Giving”. Inside Philanthropy. 2026年3月19日閲覧。
  13. ^ Global Health & Wellbeing Opportunities”. Coefficient Giving. 2026年3月19日閲覧。
  14. ^ Navigating Transformative AI”. Coefficient Giving. 2026年3月19日閲覧。
  15. ^ Lead Exposure Action Fund”. Coefficient Giving. 2026年3月19日閲覧。
  16. ^ Announcing Our New $120M Abundance & Growth Fund”. Coefficient Giving (2025年3月11日). 2026年3月19日閲覧。
  17. ^ Our Funding Criteria – Science and Global Health R&D”. Coefficient Giving. 2026年3月19日閲覧。
  18. ^ OpenAI – EA Forum”. Effective Altruism Forum. 2026年3月19日閲覧。
  19. ^ Farm Animal Welfare”. Coefficient Giving. 2026年3月19日閲覧。

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