OpenTelemetryとは? わかりやすく解説

OpenTelemetry

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/08/10 14:01 UTC 版)

OpenTelemetry
開発元 OpenTelemetry Authors / Cloud Native Computing Foundation
初版 2019年5月 (7年前) (2019-05)[1]
リポジトリ github.com/open-telemetry
プログラミング
言語
多言語 (言語ごとに API・SDK を提供)
対応OS クロスプラットフォーム
種別 オブザーバビリティ用計装フレームワーク
ライセンス Apache License 2.0[2]
公式サイト opentelemetry.io
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OpenTelemetry(オープンテレメトリー、略称: OTel)は、ソフトウェアシステムのオブザーバビリティ(可観測性)を実現するために、テレメトリーデータ(動作中のシステムから得られるトレース・メトリクス・ログなどの計測データ)の生成・収集・処理・エクスポート(外部への送出)を標準化するオープンソースの計装フレームワークである[3][4]。ここでいう計装(instrumentation)とは、アプリケーションの動作を計測するためのコードやライブラリをソフトウェアに組み込むことを指す[5]

特定の監視ベンダーに依存しない(ベンダーニュートラルな)単一の標準を提供することが特徴で、利用者は監視・分析ツールを乗り換える際にアプリケーション側の計装コードを書き直す必要がなくなる[4][5]Cloud Native Computing Foundation(CNCF)がホストするプロジェクトであり、2019年に先行プロジェクトのOpenTracingとOpenCensusの統合により発足した[6]。2026年5月にはCNCFの成熟度区分の最上位である「Graduated」(卒業)に認定された[4][1]

歴史

先行プロジェクト

OpenTelemetryの前身は、いずれも分散システムの計装を目的とした2つのオープンソースプロジェクトである。OpenTracingは分散トレーシング用のAPIを標準化するプロジェクトで、2016年10月にCNCFへ受け入れられた[7]OpenCensusGoogleが社内の計測ライブラリを基に2018年1月にオープンソース化したもので、メトリクス収集と分散トレーシングの両方を扱った[8]。両者は目的が重なる競合プロジェクトであり、利用者やライブラリ開発者がどちらを選ぶべきかという分断を生んでいた[6]

統合と発足

2019年5月、両プロジェクトを統合した新プロジェクトとしてOpenTelemetryが発表され、同年5月7日にCNCFのプロジェクトとして受け入れられた[6][1]。統合の目標は、トレース・メトリクス等のテレメトリーデータについて高品質で移植性の高い単一の計装手段を提供することとされた[6]。OpenTracingは役割をOpenTelemetryへ引き継ぎ、2021年8月にCNCFのアーカイブ(活動終了)プロジェクトとなった[7]

分散トレーシングの文脈情報(トレースコンテキスト)をサービス間で受け渡すためのHTTPヘッダー形式は、World Wide Web Consortium(W3C)が勧告「Trace Context」として標準化しており[9]、OpenTelemetryは既定のコンテキスト伝搬方式としてこのW3C Trace Contextを採用している[10]

安定化とCNCF卒業

2021年2月には仕様のバージョン1.0.0が公開され、トレースに関する仕様が安定版となった[11]。同年8月26日、CNCFの成熟度区分で「Incubating」(インキュベーティング)に昇格した[12][1]。その後、トレースに加えてメトリクス・ログの仕様も安定版に到達している[13]

2026年5月、CNCFはOpenTelemetryが成熟度区分の最上位である「Graduated」(卒業)に達したと発表した[4][1]。CNCFはこの時点で、プロジェクト発足以来2,800社を超える企業から12,000人超のコントリビューター(貢献者)が参加したとしている[4]。@ITは、OpenTelemetryがCNCFの240超のプロジェクトの中でKubernetesに次ぐ2番目に高いプロジェクトベロシティー(開発活動の勢い)を達成し、異例の速さで卒業に至ったと報じた[5]

構成要素

OpenTelemetryはシグナル(信号)と呼ばれる単位でテレメトリーデータを扱う。主要なシグナルは、リクエストが複数のサービスをまたいで処理される経路を記録するトレース、システムの状態を数値として測るメトリクス、出来事の記録であるログの3種類である[3][13]。各シグナルは次の共通コンポーネントの上に構築される[13]

API
計装コードが呼び出すインターフェースの定義。アプリケーションやライブラリはこのAPIに対して計測コードを書く[3]
SDK
APIの実装。テレメトリーデータの加工(サンプリング等)やエクスポート方法の設定を担う[3]
OTLP(OpenTelemetry Protocol)
テレメトリーデータを送受信するための共通プロトコル(通信規約)[14]
Collector(コレクター)
テレメトリーデータの受信・加工・送出を仲介する単体のプログラム。特定ベンダーに依存せず、多様な形式のデータを受け取り、複数の送信先(バックエンド)へ振り分けられる[15]

このほか、テレメトリーデータの名前や属性の付け方を統一するセマンティック規約(semantic conventions)や、コードを書き換えずに計装を有効化する自動計装(ゼロコード計装)の仕組みが提供される[3]

対応言語

OpenTelemetryのAPI・SDKは多数のプログラミング言語向けに開発されている。公式ドキュメントにはC++C#/.NETErlang/ElixirGoJavaJavaScriptPHPPythonRubyRustSwift等の実装が掲載されている[16]。成熟度は言語とシグナルの組み合わせごとに異なり、2026年8月時点でJava・C++・C#/.NET・PHPはトレース・メトリクス・ログの3シグナル全てが安定版である一方、Goのログ対応はベータ版であるなど差がある[17]

ベンダーの対応

主要な監視・オブザーバビリティ製品の多くがOpenTelemetryによるデータの取り込みに対応している。

DatadogはOpenTelemetryと自社製品の相互運用を複数の経路で提供しており、Datadog AgentはOTLPによるトレース・メトリクスの直接取り込みに対応するほか[18]、OpenTelemetry CollectorからDatadogへデータを送出するDatadog Exporterを提供する[19]。また、同社の計装ライブラリ(Datadog SDK)はOpenTelemetry APIによる計装の取り込みに対応する[20][21]

このほか、Amazon Web Servicesはディストリビューション「AWS Distro for OpenTelemetry」を提供し[22]Google CloudはGoogle Cloud ObservabilityでのOTLP受信に対応[23]AzureはAzure Monitor Application InsightsでOpenTelemetryを利用できる[24]New Relic[25]・Dynatrace[26]Grafana Labs[27]なども自社製品でのOpenTelemetry対応を提供している。

採用状況

CNCFは2026年5月の卒業発表で、OpenTelemetryを「事実上のオブザーバビリティ標準」(de facto observability standard)と位置付けた[4]。@ITによれば、直近12か月のJavaScript版APIパッケージのダウンロード数は13億6,000万回以上、Python版は13億回以上に達し、2026年4月にはいずれも月間最多記録を更新した[5]

日本語圏でも、技術メディアによる解説記事[28]や技術カンファレンスのレポート[29][30]が継続的に公開されているほか、オブザーバビリティの解説書[31]でも取り上げられている。

脚注

  1. 1 2 3 4 5 OpenTelemetry (英語). Cloud Native Computing Foundation. 2026年8月10日閲覧。
  2. open-telemetry/opentelemetry-specification: Specifications for OpenTelemetry (英語). GitHub. 2026年8月10日閲覧。
  3. 1 2 3 4 5 OpenTelemetryとは”. OpenTelemetry. 2026年8月10日閲覧。
  4. 1 2 3 4 5 6 Cloud Native Computing Foundation Announces OpenTelemetry's Graduation, Solidifying Status as the De Facto Observability Standard (英語). Cloud Native Computing Foundation (2026年5月21日). 2026年8月10日閲覧。
  5. 1 2 3 4 誕生から7年「OpenTelemetry」が異例のスピードでCNCFの“卒業”に なぜ支持されるのか”. @IT. アイティメディア (2026年7月9日). 2026年8月10日閲覧。
  6. 1 2 3 4 A brief history of OpenTelemetry (So Far) (英語). Cloud Native Computing Foundation (2019年5月21日). 2026年8月10日閲覧。
  7. 1 2 OpenTracing (英語). Cloud Native Computing Foundation. 2026年8月10日閲覧。
  8. OpenCensus: A Stats Collection and Distributed Tracing Framework (英語). Google Open Source Blog (2018年1月17日). 2026年8月10日閲覧。
  9. Trace Context (英語). World Wide Web Consortium. 2026年8月10日閲覧。
  10. Context propagation (英語). OpenTelemetry. 2026年8月10日閲覧。
  11. Release v1.0.0 · open-telemetry/opentelemetry-specification (英語). GitHub (2021年2月10日). 2026年8月10日閲覧。
  12. OpenTelemetry becomes a CNCF incubating project (英語). Cloud Native Computing Foundation (2021年8月26日). 2026年8月10日閲覧。
  13. 1 2 3 Specification Status Summary (英語). OpenTelemetry. 2026年8月10日閲覧。
  14. OTLP Specification (英語). OpenTelemetry. 2026年8月10日閲覧。
  15. Collector (英語). OpenTelemetry. 2026年8月10日閲覧。
  16. Language APIs & SDKs (英語). OpenTelemetry. 2026年8月10日閲覧。
  17. Status (英語). OpenTelemetry. 2026年8月10日閲覧。
  18. Datadog Agent による OTLP の取り込み”. Datadog. 2026年8月10日閲覧。
  19. Datadog の OpenTelemetry”. Datadog. 2026年8月10日閲覧。
  20. OpenTelemetry API Support”. Datadog. 2026年8月10日閲覧。
  21. OpenTelemetry + Datadog”. Datadog. 2026年8月10日閲覧。
  22. AWS Distro for OpenTelemetry”. Amazon Web Services. 2026年8月10日閲覧。
  23. OpenTelemetry Protocol が Google Cloud Observability に登場”. Google Cloud. 2026年8月10日閲覧。
  24. Application Insights で OpenTelemetry を有効にする - Azure Monitor”. マイクロソフト. 2026年8月10日閲覧。
  25. OpenTelemetry: 計装器を長く使い続けるために”. New Relic. 2026年8月10日閲覧。
  26. OpenTelemetry and Dynatrace (英語). Dynatrace. 2026年8月10日閲覧。
  27. OpenTelemetry at Grafana Labs (英語). Grafana Labs. 2026年8月10日閲覧。
  28. 「OpenTelemetry」とは――「Observability」(可観測性:オブザーバビリティ)とテレメトリーの基礎知識”. @IT. アイティメディア (2023年2月6日). 2026年8月10日閲覧。
  29. ベンダーニュートラルな可視化ツールOpenTelemetryの最新情報を紹介”. Think IT. インプレス (2021年3月29日). 2026年8月10日閲覧。
  30. Obervability Conference 2022、OpenTelemetryの概要をGoogleのアドボケイトが解説”. Think IT. インプレス (2022年5月24日). 2026年8月10日閲覧。
  31. Charity Majors、Liz Fong-Jones、George Miranda 著、大谷和紀、山口能迪 訳『オブザーバビリティ・エンジニアリング』オライリー・ジャパン、2023年。ISBN 978-4-8144-0012-6

関連項目

外部リンク


OpenTelemetry

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/19 02:38 UTC 版)

Cloud Native Computing Foundation」の記事における「OpenTelemetry」の解説

OpenTelemetryは、CNCFによるOpenTracingおよびOpenCensusプロジェクト統合によって作られオープンソース可観測性フレームワークである。OpenTracingは「人気のあるプラットフォームのための一貫性があり、表現性が高く、ベンダーニュートラルなAPI」を提供しGoogle開発したOpenCensusプロジェクトは、「アプリケーションインストルメントstats収集メトリクス)、対応するバックエンドへのデータエクスポートのための特定言語用のライブラリコレクション」として機能する。OpenTelemetryのもとで、プロジェクトは「マイクロサービスその他の種類モダンな分散システム適した、ほとんどの主要なOSSおよび商用バックエンド互換性のある完全なテレメトリーシステム」を開発することを目指している。OpenTelemetryは「2番目に活発なCNCFプロジェクトである。2020年10月AWSはOpenTelemetryのディストリビューション公開プレビュー発表した

※この「OpenTelemetry」の解説は、「Cloud Native Computing Foundation」の解説の一部です。
「OpenTelemetry」を含む「Cloud Native Computing Foundation」の記事については、「Cloud Native Computing Foundation」の概要を参照ください。

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