Galliard_(書体)とは? わかりやすく解説

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Galliard (書体)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/16 14:08 UTC 版)

ITC Galliard
様式 セリフ
分類 オールドスタイル
デザイナー
制作会社
発表年月日 1978年

ITC Galliard(アイティーシー・ガリアード)は、マシュー・カーターがデザインし、1978年にマーゲンターラー・ライノタイプからリリースされたセリフ書体である[1]

Galliardは、16世紀の書体デザイナー、ロベール・グランジョンの活字に基づいている[2]。印刷史家アレクサンダー・ローソンは「Galliardという名前は、グランジョン自身が1570年頃に彫った8ポイントの活字に由来する。この名前は間違いなく書体のスタイルを指しており、というのも“ガイヤルド”は当時の活発な舞曲の名でもあったからだ」と説明している[3]。カーターは、グランジョンの作品に惹かれた理由について、その特徴的な字形を評して「それらを見ていると『生き生きとした (spirited)』『緊張感のある (tense)』『力強い (vigorous)』といった形容詞が思い浮かぶ……グランジョンの作品を称賛するのはたやすいことだ」と記している[1]

マーゲンターラー・ライノタイプのタイポグラフィ開発部長だったマイク・パーカー英語版は、アントウェルペンプランタン=モレトゥス博物館で目にしたグランジョンの活字に着想を得ていた[4][3]。1965年に書体デザイナーとして同社に入社したマシュー・カーターもまたその愛好者の一人だった。彼の父、ハリー・カーター英語版は1950年代に同博物館の膨大な16世紀のパンチ(父型)とマトリクス(母型)のコレクションを整理する仕事を担っており、マシューも時折それを手伝っていた[5][6][7][8]。この書体の制作は1960年代から1970年代にかけて断続的に続けられ、1978年に完成・リリースされた。輝きのある明瞭なデザインが特徴で、本文用にも見出し用にも用いられている。Galliardは、グランジョンが1570年に制作したDouble Picaイタリック体に基づく、“ペリカンのくちばし”形の 'g' で知られている[2]

ITC Galliard(1978年、1982年)

Galliardのイタリック体の基になったグランジョンのパンチ(父型)。2列目には2種類の 'g' の形が見える。

その後、マイク・パーカーがGalliardの独占的権利をインターナショナル・タイプフェース・コーポレーション英語版 (ITC) に与え、ITCによって再発行された。マシュー・カーターはマーゲンターラー・ライノタイプ在籍中に、4種類のウェイトのローマン体と対応するイタリック体をデザインし、さらにローマン体とボールド体用のスモールキャピタル一式も制作した。ITC Galliardは1978年にマーゲンターラー・ライノタイプによって発表され、ITCの購読者向けには1982年1月15日から一般提供が開始された(『U&lc』誌の1981年12月号[第8巻第4号]で告知)[9]

このファミリーは、4つのウェイトと1種類の字幅からなる計8書体で構成され、それぞれに対応するイタリック体を備えている。OpenType機能には、分数、合字、序数、上付き文字が含まれる。

ITC Galliard Pro(2010年)

中央ヨーロッパ言語をサポートする文字を追加したITC Galliardの拡張版。

OpenType機能には、ケースセンシティブフォーム、分子/分母、分数、合字、ライニング数字/オールドスタイル数字/プロポーショナル数字/表形式数字、ローカライズフォーム、序数、科学用下付き文字、上付き文字、スモールキャピタル、二重母音、スタイリスティック代替字形(セット1)が含まれる。

ITC Galliard eText(2013年)

カール・クロスグローブによってデザインされた、画面上での使用に最適化されたITC Galliardのバージョン。変更点には、小文字の高さの拡大、文字間隔の増加、カウンター英語版(文字内部の空間)の拡張、太線と細線の比率の調整などが含まれる[10]

このファミリーは、2種類のウェイト(レギュラー、ボールド)と1種類の字幅からなる計4書体で構成され、それぞれに対応するイタリック体を備えている。文字セットはAdobe Western 2をサポート。OpenType機能には、ケースセンシティブフォーム、分数、合字、ライニング数字/オールドスタイル数字、ローカライズフォーム、序数、スモールキャピタルが含まれる。

評価

1611年の書籍に見られる、Galliardのモデルとなったロベール・グランジョンのAscendonicaイタリック体。2行目では“ペリカン”形の 'g' が使われ、他の部分では一般的な二階建ての 'g' が使われている[11][12]

Galliardは力強いストロークを持ちながらも、細部には鋭さがあり、太線と細線のコントラストが明快である。アレクサンダー・ローソンは「復刻版Garamondのデザイナーたちが忠実な複製を追求していたのに対し、カーターはグランジョンのオリジナルの精神を自分なりに解釈してGalliardに反映させた……そのため、Galliardには現在のGaramondには欠けている本物の輝きが宿っている」と評している[3]

使用例

Galliardは、イェール大学のグラフィック・アイデンティティおよび標準書体として採用され、2007年にマシュー・カーターがデザインした書体「Yale英語版」に置き換えられるまで使用された。このYale書体自体も、部分的にGalliardから着想を得ている。また、ベイラー医科大学[要出典]ポモナ・カレッジ[13]など、他の高等教育機関の公式ロゴやワードマークにも使用されている。

Galliardは、2011年にニューヨーク近代美術館が収蔵した23の書体の一つであり、その後「Standard Deviations英語版」展で展示された。

Galliardは、文芸誌『The New Criterion英語版』や叢書「ライブラリー・オブ・アメリカ」の公式書体でもある。

参考文献

  • Bigelow, Charles, Galliard, in Fine Print on Type, Charles Bigelow, editor, Bedford Arts, 1989, pp. 13–16.
  • Lawson, Alexander, Anatomy of a Typeface, Godine, 1990, pp. 141–146.

脚注

  1. ^ a b Carter, Matthew (1985). “Galliard: A Revival of Types of Robert Granjon”. Visible Language 19 (1): 77–98. オリジナルの30 December 2017時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20171230065914/http://visiblelanguagejournal.com/issues/issue/73/ 2017年5月19日閲覧。. 
  2. ^ a b Vervliet, Hendrik D.L. (2008). The Palaeotypography of the French Renaissance: Selected papers on sixteenth-century typefaces. 2 vols.. Leiden: Koninklijke Brill NV. pp. 215–230, 321–2, 356. ISBN 9789004169821. https://archive.org/details/palaeotypography00verv 
  3. ^ a b c Lawson, Alexander, Anatomy of a Typeface, Godine, 1990.
  4. ^ Bigelow, Charles, Galliard in Fine Print on Type, Charles Bigelow, editor, 1989.
  5. ^ ITC Classics: ITC Galliard - ITCFonts.com”. 2012年6月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年6月20日閲覧。
  6. ^ Carter, Harry (typographer) (2002). Mosley, James. ed. A View of Early Typography up to about 1600. London: Hyphen Press. "In 1954 Carter was persuaded...to take up the appointment of Archivist at the Oxford University Press...a part of Carter's brief was therefore to look into [the Plantin-Moretus Museum's] collections...it had gradually become known that Plantin's stock of punches and matrices had also survived intact...Carter became a member of the small team of researchers who performed the task of sorting and cataloguing the materials...his experience at Antwerp involved handling punches...and original matrices, from which he cast sample types, using the traditional hand mould." 
  7. ^ Hoefler, Jonathan. “Reconstructing Harry”. Hoefler & Co. 2017年10月14日閲覧。
  8. ^ Mosley, James (2003). “Reviving the Classics: Matthew Carter and the Interpretation of Historical Models”. In Re, Margaret. Typographically Speaking: The Art of Matthew Carter (2. ed.). New York: Princeton Architectural. pp. 31–6. ISBN 9781568984278 
  9. ^ U&lc. VOLUME EIGHT, NUMBER FOUR, DEC. 1981 Archived 2013-10-29 at the Wayback Machine., pages 28-33
  10. ^ eText Typefaces: Typefaces for High-Quality e-Reading Experiences
  11. ^ Clusius, Carolus (1611). Atrebatis cvrae posteriores, seu, Plurimarum non antè cognitarum, aut descriptarum stirpium, peregrinorumq́ue aliquot animalium. Antwerp: Officina Plantiniana. https://archive.org/details/mobot31753000811106 2019年3月5日閲覧。 
  12. ^ Blokland, Frank E. (2018年10月31日). “An Italic for Uccello [Comments on TypeDrawers thread]”. TypeDrawers. 2019年3月5日閲覧。
  13. ^ Graphic Standards Manual” (英語). Pomona College. 2015年12月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年11月22日閲覧。

外部リンク




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