B Corp認証
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/29 22:03 UTC 版)
B Corp認証(ビーコープにんしょう、英: B Corporation certification(英語版))は、2006年に米国で設立された非営利団体B Lab(英語版)によって運営される国際的な認証制度であり、社会や環境に配慮した事業活動を行う企業に与えられるとされている。この認証は、企業の透明性、説明責任、持続可能性、社会的・環境的パフォーマンスを評価するもので、2025年5月時点で世界105カ国、9,787社が認証を取得[1]。
日本では、2025年6月現在57社[注釈 1] が認証を取得しており、特に2024年に日本支部(B Market Builder Japan[4])が設立されて以降、急速に普及が進んでいる[5]。
概要
B Corp認証の「B」は「Benefit(利益)」を意味し、株主だけでなく従業員、顧客、地域社会、環境に対して包括的な利益を生むビジネス活動を行う企業を対象とする[6]。これは、公正取引(Fair trade(英語版))やLEED(Leadership in Energy & Environmental Design(英語版)、製品や建物の認証)とは異なり、企業全体の活動を評価する点が特徴[7]。認証取得には、オンラインの「B Impact Assessment」で80点以上を獲得し、法的な要件を満たす必要がある[8]。
2025年7月からは新しい基準(7つのインパクト分野:Purpose and Stakeholder Governance, Climate Action, Human Rights, Fair Work, Environmental Management and Circularity, JEDI, Government Engagement and Collective Action)に移行予定で、新規認証は2026年から適用予定。
歴史と日本での普及
B Labは2006年に設立され、2007年に最初のB Corp認証が開始された[9]。
日本では2024年にB Market Builder Japanが設立。これにより、従来英語で行われていたプロセスが日本語で対応可能になり、認証取得のハードルが下がった。日本の認証企業数は2023年4月時点で21社だったが[10]、2025年3月には55社に増加しており、急速な成長が見られる[5]。
認証企業の例
日本では、ダノンジャパン(2020年5月取得、食品業界初)、ライフイズテック(IT教育)などが認証を取得[8]。
世界では、Patagonia(2012年取得、環境重視)、Ben & Jerry's(アイスクリーム)、Allbirds(サステナブルな靴)などが知られる[6]。
認証企業は小売、食品、ファッションなど多岐にわたり、業界分布も特徴的[1]。
影響と意義
B Corp認証は、消費者や投資家に対して企業の倫理的姿勢をアピールするツールとして機能する。特にミレニアル世代(42%が社会・環境的影響を重視、グローバル調査より)にはブランド価値を高める効果がある[1]。また、SDGsやESG投資との関連性が高く、サステナビリティ運動に貢献している[6]。日本では認知度が低いものの、消費者の選択基準として今後標準化される可能性がある[11]。
批判と論争
B Corp認証にはいくつかの批判が存在する。まず、認証基準が曖昧で、グリーンウォッシング(環境配慮を装った行為、Greenwashing(英語版))に利用される可能性が指摘されている。具体的な論争例としては、BrewDog(英語版)(2021年、労働環境問題で認証取り消し)[12] 、Aqua(2024年、プラスチック汚染トップの企業が認証)[13]、Nespresso(英語版)(2022年、人権問題で批判)などが挙げられる。また、認証取得には年間費用(売上に基づく)がかかり、企業利益優先のインセンティブがあるとの指摘もある[10]。
脚注
注釈
出典
- ^ a b c “B Corp(B Corporation)とは? 取得方法とメリット・認証を受けた企業”. ELEMINIST (2025年5月13日). 2025年5月20日閲覧。
- ^ “日本のB Corp取得企業は14社 (2022年8月時点)”. B The Change Japan. 2022年8月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月28日閲覧。
- ^ “日本のB Corp取得企業は55社 (2025年3月時点)”. B The Change Japan. 2025年4月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月28日閲覧。
- ^ “B Corp™:よいビジネスで世界は変わる”. B Market Builder Japan. 2025年5月20日閲覧。
- ^ a b “日本のB Corp取得企業は57社 (2025年6月時点)”. B The Change Japan (2022年3月23日). 2025年5月20日閲覧。
- ^ a b c “B corp認証とは?取得方法・メリット・SDGsとの関係を解説”. SDGsMEDIA (2023年12月18日). 2025年5月20日閲覧。
- ^ “B Corp(B Corporation)とは・意味”. IDEAS FOR GOOD. 2025年5月20日閲覧。
- ^ a b “B Corpとは?認証取得のメリットと海外・日本企業の事例 小島 美緒”. FunDIo (2023年8月1日). 2025年5月20日閲覧。
- ^ “B Corpとは?認証取得方法やメリットを解説!”. アスエネメディア (2023年12月5日). 2025年5月20日閲覧。
- ^ a b “SDGsを知る|Bコープ認証とは?取得方法や費用、企業の取り組み事例も紹介”. Spaceship Earth(エレビスタ株式会社) (2023年10月6日). 2025年5月20日閲覧。
- ^ “日本に根付くか、B Corp認証 ~大企業がムーブメント形成に果たす役割~ 橋爪麻紀子”. 日本総研 (2023年7月1日). 2025年5月20日閲覧。
- ^ “BrewDog loses its ethical B Corp certificate”. The Guardian (2022年12月1日). 2024年3月8日閲覧。
- ^ Hicks, Robin (2024年2月20日). “B Corp-certified bottled water brand Aqua tops audit of Indonesia's biggest plastic polluters” (英語). Eco Business. ISSN 2322-8326 2024年2月27日閲覧。
関連項目
外部リンク
- Make Business a Force For Good - Official website - 公式ウェブサイト(英語)
- Looking for a B Corp? - 認証取得企業を確認できる公式サイト(英語)
- B Market Builder Japan - 日本支部公式ウェブサイト
- B Corp認証のページへのリンク