順方向電圧降下とは? わかりやすく解説

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pn接合

(順方向電圧降下 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/26 19:27 UTC 版)

pn接合(pnせつごう、pn junction)とは、半導体中でP型半導体の領域とN型半導体の領域が接している部分を言う。整流性、エレクトロルミネセンス光起電力効果などの現象を示すほか、接合部には電子正孔の不足する空乏層が発生する。これらの性質がダイオードトランジスタを始めとする各種の半導体素子で様々な形で応用されている。またショットキー接合の示す整流性も、pn接合と原理的に良く似る。

熱平衡状態(ゼロバイアス)

熱平衡状態のpn接合とバンド構造の模式図

p型とn型の半導体を接合した瞬間では、n型側の多数キャリアである伝導電子とp型側の多数キャリアである正孔がそれぞれ拡散することで拡散電流が生じる。

電子と正孔が再結合により消滅すると、接合部付近にキャリアの少ない領域(空乏層)が形成される。接合の両側で電子と正孔の密度は異なるため、拡散電流が流れる。

空乏層のn型側では、本来存在する伝導電子が不足する一方で正電荷をもつドナーイオンが固定されているため、正に帯電する。一方で空乏層のp型側では、本来存在する正孔が不足する一方で負電荷をもつアクセプターイオンが固定されているため、負に帯電する。その結果、空乏層は正に帯電した層と負に帯電した層が重なり合った電気二重層を形成し、内蔵電場が生まれる。内蔵電場によって発生する静電ポテンシャルの差

p型側の空乏層の幅を

順方向バイアス時のpn接合ダイオード
逆方向バイアス時のpn接合ダイオード
pn接合の電流(I)-電圧(U)特性。

pn接合は一方向にのみ電流を流しやすい性質があり、これを整流性という。pn接合ダイオードトランジスタなど各種の半導体素子で利用される。

順方向バイアス時

pn接合に順方向バイアスを印加した場合を考える。順方向バイアスとは、p型側に正電圧を印加すること、つまり内蔵電位を小さくする方向に電圧をかけることと定義する。するとポテンシャルの釣り合いが崩れて拡散電流が増加し、電流が流れる。

電極からn型、p型それぞれの領域に注入された電子正孔多数キャリア)は接合領域にて再結合する。通常のシリコン・ダイオードの場合、接合面を通過してさらに10〜100μm程度の領域まで(少数キャリアとして)注入される。

キャリアが禁制帯を超えて再結合する時、再結合エネルギーを熱や光として放出する。この現象を利用したのが発光ダイオード半導体レーザである。逆にいえば順方向電流を流すにはこの分の電圧(禁制帯幅が2電子ボルト(eV)なら、最低2V)を外部から与えてやる必要があることになる。ダイオードを順方向バイアスで用いる場合は、ここから不純物準位等を介した遷移による電圧の低下分を差し引き、また電極でのショットキー障壁による電位差や素子各部での抵抗損失を加えた電圧を与える必要があり、これを順方向電圧降下(または順方向降下電圧)と呼ぶ。順方向電圧降下はシリコンダイオードの場合は0.6〜0.7V程度、ショットキーバリアダイオードの場合で0.2Vである。発光ダイオードでは発光波長や出力によって異なり、1~5V程度になる。

逆方向バイアス時

pn接合に逆方向バイアスを印加した場合を考える。逆方向バイアスとは、n型側に正電圧を印加すること、つまりポテンシャル障壁を大きくする方向に電圧をかけることと定義する。すると、n型、p型領域それぞれに於いて、多数キャリア(電子と正孔)が少数キャリア(正孔と電子)の注入によって減少する。これによって空乏層幅が増大すると共に内蔵電位が大きくなり、内蔵電位の増加分が外部からの印加電圧と釣り合った所で平衡に達し、電流が止まる。 実際の素子では、逆バイアス状態でもドリフト電流によってわずかに逆方向電流が流れる。さらに逆方向バイアスを増してゆくと、ツエナー降伏やなだれ降伏を起こして急激に電流が流れるようになる。この時の電圧を(逆方向)降伏電圧と言う。

電流-電圧特性

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