金属カルボニル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/26 05:08 UTC 版)

5個の CO 配位子が鉄原子と結合している。
金属カルボニル(きんぞくカルボニル、英: metal carbonyl)は、一酸化炭素を配位子にもつ遷移金属錯体である。これにはニッケルカルボニル Ni(CO)4 のようなホモレプティックな(CO 配位子のみを含む)錯体があるが、一般的には金属カルボニルは Re(CO)3(2,2'-bipyridine)Cl のように複数の配位子をもつ。
一酸化炭素はヒドロホルミル化のような多くの化合物の合成における重要な原料であり、金属カルボニル触媒はその利用において中心的な位置を占める。ヘモグロビンと結合してカルボキシヘモグロビンを与え、ヘモグロビンを酸素と結合できなくさせる性質のため、金属カルボニルは有毒である[1]。
構造と性質

σ結合性 MO

π*反結合性MO
金属カルボニルは一般的に水に溶けにくい。
一酸化炭素はπ*逆供与結合で遷移金属と結合する。結合は3つの要素をもち、部分的な三重結合性を与える。σ結合は金属の s, p, d 軌道からなる混成軌道と、C 上の孤立電子対との重なりによって生じる。1対のπ結合はC から突き出た1対のπ*反結合性軌道と、金属の満たされたd軌道との重なりによって生じる。後者のπ結合は金属がd電子をもっており、比較的低い酸化状態 (<+2) にあることを必要とする。逆供与結合は遊離一酸化炭素と比較して C-O 結合を弱める働きをする。M-CO 結合の多重結合性のため、この結合長は< 1.8 Åと、金属-アルキル結合と比較して0.2 Åほど短い。
クラスターの結合モデル
カルボニル配位子は、金属カルボニルの化学における結合モデルの範囲に関与している[1][2]。最も多いのは上記のような末端 CO である。しかし、しばしば CO は2つ (μ2) または3つ (μ3) の金属間を架橋する。C と O がそれぞれ金属に結合しているようなモデル (μ3-η2) はそれほど一般的ではない。
複数の金属中心からのπ逆供与により増加したπ結合は、結果として C-O 結合をさらに弱めることになる。
特徴
カルボニル化合物 | νCO (cm-1) |
---|---|
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