第三者中継
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/23 13:47 UTC 版)
第三者中継(だいさんしゃちゅうけい、英: Third-Party Mail Relay)、またはオープンリレー(英: Open mail relay)とは、インターネット関連の用語であり、ユーザー認証を伴わずに第三者が自由に電子メールを送信(中継)可能なサーバを指す。
概要
通常のメールサーバは、プロバイダや会社・組織において管理されており、あらかじめ登録されたユーザーのみが認証を受けることによって利用することができる。 これに対して第三者中継サーバは、不特定のユーザーが、自由にメールを送信できるため、犯罪者が迷惑メール送信に利用するなど、インターネットにおけるセキュリティ上の脅威となっている。 一般的には早急に改善されるべき状態とされ、ORDB.orgなど、それらを専門に監視・警告する団体も存在している。
歴史的経緯
そもそもインターネットは、性善説的な思想に基づいて設計された実験的なネットワークから発達してきており、この「第三者中継」も広く導入・利用されてきたものであった。
- パソコン通信時代のメールシステム
- 研究・実験段階のインターネットが一般公開される前夜、つまり1980年半ばから1990年初めに全盛を極めたパソコン通信においては、その通信会社のセンターサーバに接続し、会員同士でのメール交換が可能だった。しかし、別の会社が運営するサーバ宛には、基本的にメール送信ができなかった。その後、時代が下って、それぞれのパソコン通信会社の間にネットワーク経路が設けられるようになり、相互にメール送受信が可能になった。
- メールシステムの連結による弊害
- こうして出来あがった電子メールのネットワーク上には、'スパマー'(Spamer。ネットワーク上で迷惑メールを繰り返し送る者)も現れた。パソコン通信会社の相互連結ができると、スパマーは自身が契約しているサービス会社のサーバを使わずに、他の会社のサーバから迷惑メールを送信し始めた。これにより、どのユーザーがメール送信しているかが、各々のパソコン通信会社内では掴めなくなり、この頃より迷惑メールが本格的になった[1]。
- 共通認識となった危険な第三者中継
- やがてインターネットに繋がったパソコン通信会社のネットワーク(後のインターネット・サービス・プロバイダ)は、これらパソコン通信時代の教訓から、外部からのメールサーバ利用を阻止するようになった。この頃から「第三者中継は危険な設定」という認識が生まれ始めた。それでもなお、現在でも無知や無理解から放置される第三者中継メールサーバは多数存在しており、それらはフリーメールサービス同様に、迷惑メールの温床として、今日では迷惑メール送信者自身同様に嫌われる存在になっている。
第三者中継に関する問題
- 存在することで起こる問題
- 第三者中継メールサーバは現在、米国に置いてはスパムメール業者は元より、テロリストの連絡用にすら悪用されかねないとして、「違法とすべきである」とすら云われており、その在り様が問題視されている。
- 存在しないことで起こり得る問題
- 社会正義に基く匿名の内部告発者を守るためや、現在世界随所に少なからず存在する「言論統制するような専制政治国家」の住人等が、自由な意見交換や思索を行うためにも、これら匿名性が確保されたネット・リソースが必要だとみている人権活動家もいる。
この両者は双子の問題であり、これら匿名サービスの利用者をサービス提供側が選べないことに起因し、選べばすなわち匿名性の利便性が損なわれ、選ばなければ悪用されるというジレンマを含んでいる[2]。
脚注
- ^ 例えば日本のニフティサーブでは1995年頃までにポルノビデオのスパム広告メールが問題化し、ニフティサーブ側が送信差し止めの仮処分を請求し訴えが認められたが、送信者側は別プロバイダーからの接続者であったことが示されている。
ニフティサーブ会員に対するスパム・メール送信禁止仮処分事件決定 - ^ BlackHat Briefings発セキュリティ最新事情(上)IT Pro記事
関連項目
- 匿名
- スパム(迷惑メール)
- メールサーバ
- コンピュータセキュリティ
- Simple Mail Transfer Protocol(メール送信用プロトコル)
- パソコン通信
- DNSBL - DSBL
- 第三者中継のページへのリンク