匿名・流動型犯罪グループとは? わかりやすく解説

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匿名・流動型犯罪グループ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/16 09:27 UTC 版)

匿名・流動型犯罪グループ(とくめい・りゅうどうがたはんざいグループ)は、2023年7月に警察庁が「SNSを通じて募集する闇バイトなど緩やかな結びつきで離合集散を繰り返す集団」と定義した組織犯罪の類型[1][2]。略称は匿流(とくりゅう、トクリュウ[3]

暴力団準暴力団(通称:半グレ)との関連も指摘される場合がある一方で[4][5]、従来型の反社会的勢力のような統制がないため、勢いに任せて犯行に及ぶ傾向がみられる[6]

2024年3月には、2021‐2024年の3年間の累計で検挙された人数が1万人を超え、捜査が強化されている[3]。内訳は特殊詐欺が6170人、薬物営利犯が2292人、犯罪インフラ犯(旅券偽造、不法就労助長、地下銀行など)が1721人、闇バイト関係(強盗や窃盗などの実行犯)が195人となっている[3]。また、匿名・流動型犯罪グループの中には、資金の一部を暴力団に上納するなど暴力団と関係を持つ実態も認められるほか、暴力団構成員が匿名・流動型犯罪グループと共謀して犯罪を行っている事例もあり、このような集団の中には暴力団と匿名・流動型犯罪グループとの結節点の役割を果たす者が存在するとみられている[7]。一部報道によると、特定のデモ活動へのサクラの動員にも関与しているという[8]

2025年4月に公表された警察庁のまとめでは、2024年の1年で摘発人数が全国で1万105人となった。そのうち実行役を集める「リクルーター」や指示役らは1011人で、末端の実行役はほぼ使い捨てで9094人であった。罪種別の内訳では、銀行口座の譲渡など犯罪収益移転防止法違反が3293人、詐欺が2655人、窃盗が991人、麻薬取締法違反などの薬物事犯が917人である[9][10]

主な事件

ルフィ広域強盗事件

2022年5月から2023年1月にかけて、日本全国で発生した一連の強盗および強盗殺人事件。指示役たちはフィリピンを拠点として、インスタントメッセンジャーテレグラム」を使い日本国内の実行役を募り、指示していた。トクリュウの代表的なケースとされる[11]

首都圏連続強盗事件

2024年8月以降、関東地方で発生している一連の強盗および強盗殺人事件。闇バイトを実行役としている。

警察の対応

新部署の設置

いくつかの県警ではトクリュウ対策の部署を設置している。

  • 北海道警 - 2024年4月、専門部署「組織犯罪対策1課」を新設[12]
  • 岩手県警 - 2024年9月2日、およそ100人体制の部署横断型の対策チームを設置[13]
  • 石川県警 - 2024年11月20日、部門横断の250人態勢のプロジェクトチームを発足[14]
  • 滋賀県警 - 2024年11月26日、「犯罪抑止戦略推進本部」を設置したほか、県と協力して「トクリュウ・闇バイト・詐欺・強盗緊急対策プラン」を策定[15]
  • 福岡県警 - 2024年4月、分野横断的に捜査員を集めた約100人の部署「組織犯罪捜査課」を新設。また、その中に25人の「連合捜査係」を設置し、他県警との連携も推進[16]
  • 長崎県警 - 2024年11月5日、対策プロジェクトチームを発足[17]

闇バイト応募者の保護

警察は、闇バイトに応募した人から「指示役に個人情報を知られ、脅されている」などと相談を受けた場合、本人や家族を保護するとしている。そのような相談を受け保護したケースは、2024年11月末までに全国で125件に上る。そのうち、7割が10代から20代である一方、50代以上も1割いる[18]

出典

  1. ^ 新形態「匿名・流動型犯罪グループ」に対応…福岡県警が「組織犯罪捜査課」組織横断で新部署”. 読売新聞オンライン (2024年2月21日). 2024年3月3日閲覧。
  2. ^ 日本放送協会 (2023年7月3日). “闇バイトなど対策強化 警察庁 全国の警察に組織運営見直し指示”. NHKニュース. NHK. 2024年3月3日閲覧。
  3. ^ a b c 犯罪集団「トクリュウ」摘発数が1万人超え治安上の脅威に 暴力団組員数は過去最少更新 大麻検挙数は過去最多で覚せい剤上回る”. 時事ドットコムニュース. 2024年5月25日閲覧。
  4. ^ 産経新聞 (2023年7月3日). “警察庁、組織改革へ 準暴力団「匿名・流動型犯罪グループ」に”. 産経新聞:産経ニュース. 2024年11月12日閲覧。
  5. ^ 第4項 匿名・流動型犯罪グループの動向と警察の取組”. www.npa.go.jp. 2024年3月3日閲覧。
  6. ^ 新型の犯罪集団トクリュウ 人違いの傷害事件、統制のない恐ろしさ”. 毎日新聞 (2024年3月3日). 2024年3月3日閲覧。
  7. ^ 匿名・流動型犯罪グループの動向と警察の取組”. 警察白書. 2024年7月26日閲覧。
  8. ^ 松岡紳顕 (2024年10月17日). “【独自】「サクラは800人超」反ワクチンデモで動員を証言…背景に歌舞伎町拠点の“トクリュウ”か【ファクトチェック調査報道】|FNNプライムオンライン”. FNNプライムオンライン. 2025年4月16日閲覧。
  9. ^ トクリュウ1万105人摘発 9割は実行役 警察庁、2024年まとめ”. 毎日新聞. 2025年4月3日閲覧。
  10. ^ 投資詐欺、カジノ…伸びるトクリュウの触手、摘発1万人”. 日本経済新聞 (2025年4月3日). 2025年4月3日閲覧。
  11. ^ ルフィ事件が警察に与えた「トクリュウ」の衝撃、SNSで離合集散する闇バイト摘発に壁…特殊詐欺から殺人まで(1/6)”. JBpress (2024年6月11日). 2024年7月26日閲覧。
  12. ^ SNS使った特殊詐欺、北海道で総額7億円被害 道警が新対策本部」『朝日新聞』2024年4月9日。2024年12月8日閲覧。
  13. ^ “トクリュウ”対策強化へ「100人体制」のチーム設置 部署横断で捜査 岩手県警」『IBC NEWS』2024年10月16日。2024年12月8日閲覧。
  14. ^ 「トクリュウ」対策でPT 県警、部門横断250人態勢で発足」『北國新聞』2024年11月21日。2024年12月8日閲覧。
  15. ^ トクリュウ対策、全部門で 滋賀県警が「犯罪抑止本部」立ち上げ 滋賀県」『朝日新聞』2024年11月27日。2024年12月8日閲覧。
  16. ^ 「トクリュウ」摘発の要、福岡県警の組織犯罪捜査課…初動に多数捜査員や他県警と連携し成果」『読売新聞』2024年6月8日。2024年12月8日閲覧。
  17. ^ 「闇バイト」未然防止で対策強化へ 長崎県警に発足した“トクリュウ”対策PTが初会合」『KTNテレビ長崎』2024年11月13日。2024年12月8日閲覧。
  18. ^ 闇バイト 警察が応募者や家族を保護したケース 全国で125件 応募は中高年層にも広がる」『NHK』2024年12月5日。2024年12月8日閲覧。

関連項目

外部リンク




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