付加反応とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 化学 > 化学反応 > 反応 > 付加反応の意味・解説 

付加反応

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/28 07:50 UTC 版)

エチレンへの塩素の付加

付加反応(ふかはんのう、英語: Addition reaction)とは多重結合が解裂し、それぞれの端が別の原子団と新たな単結合を生成する反応である。

大きく分けて、アルケンのブロモ化を代表とする求電子付加反応(AdE)と、カルボニルとグリニャール試薬との反応を代表とする求核付加反応(AdN)に区分されるが、この他に非極性付加反応のラジカル付加がある。

炭素化合物では三重結合で最も起きやすく、二重結合がそれに次ぐ。これは三重結合の結合エンタルピーが小さいためである。

付加反応の生成物は 付加体 と呼ばれる。

求電子付加反応

反応機構的には二重結合(ないしは三重結合)のπ電子にカチオン種が付加し、次いで生成したカルボカチオン(C+)をアニオン種が攻撃して付加反応が終結する。生成物の立体化学的考察より、多くの場合、二重結合平面に対してカチオン種とアニオン種がトランス方向(anti-periplaner方向)から付加することが確認されており、遷移状態は非古典式カルボカチオン(non-classical catbocation)を経由していると考えられている。また反応によっては古典式カルボカチオン(classical catbocation)を経由している場合もある。

求電子的付加反応の生成する異性体に関して、マルコフニコフ則とザイツェフ-ワグナー則が知られている。両者とも実験からの経験則で、次に示す。

  • マルコフニコフ則:"HX付加の場合、置換基の多い側にXが付加する"
  • ザイツェフ-ワグナー則:"両炭素の置換基数が同等のオレフィンへのHX付加の場合、XはCH3-基が置換している方、あるいは末端に近いほうの炭素に付加する"

これらの法則は、遷移状態のカルボカチオンのうち、置換基のI効果によりδ+の電荷が安定化されるほうにX-が攻撃するためであると理解されている。カルボカチオンの安定化は芳香環による共鳴、水素原子による超共役によっても引き起こされる。

求電子付加の例[1]
付加試薬 付加される化合物 生成物
H3O+ R2C=CR2 R2C(H)-(HO)CR2
H2SO4 R2C(H)-(OSO3H)CR2
X2 R2C(X)-(X)CR2
X2, H3O+ R2C(X)-(HO)CR2
HX R2C(X)-(H)CR2
NOCl R2(NO)-(Cl)CR2

求核付加反応

有機電子論的にはカルボニルは電子の「立ち上がり」の寄与があるため、Cがδ+、Oがδ-であると考えられる。それに対して有機金属試薬が攻撃すると、アルキルカルボアニオン種がCへ、金属カチオン種がOに付加する(最終的に金属カチオン種はプロトンと置換されて-OHとなる)。

求核付加の例[1]
付加試薬 付加される化合物 生成物
グリニャール試薬 R2C=O R2C(-OMg)-アルキル
OH-, H2O R2C(-OH)2
OH-, H2O RC≡N RCOO-
H2S R<C(=S)NH2
CN-, ROH R2C=O R2C(-OH)-CN

脚注

  1. ^ a b C. K. Ingold, "Structure and Mechanism in Organic Chemistry". 2nd. Ed., pp 249.

関連項目

外部リンク





付加反応と同じ種類の言葉

このページでは「ウィキペディア」から付加反応を検索した結果を表示しています。
Weblioに収録されているすべての辞書から付加反応を検索する場合は、下記のリンクをクリックしてください。
 全ての辞書から付加反応 を検索

英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「付加反応」の関連用語

付加反応のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



付加反応のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの付加反応 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS