ムルターニー文字 (Unicodeのブロック)とは？わかりやすく解説

ムルターニー文字 (Unicodeのブロック)
	Multani
範囲	U+11280..U+112AF; (48 個の符号位置)
面	追加多言語面
用字	ムルターニー文字
主な言語・文字体系	サライキ語;
割当済	38 個の符号位置
未使用	10 個の保留
Unicodeのバージョン履歴
8.0	38 (+38)
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ムルターニー文字（ムルターニーもじ、英語: Multani）は、Unicodeのブロックの一つ。

解説

19世紀後半までパキスタンパンジャーブ州のムルターン地方及びシンド州北部で話される、インド・ヨーロッパ語族インド・イラン語派インド語群に属するサライキ語を表記するためにかつて用いられていたムルターニー文字を収録している^[1]。なお、19世紀後半のイギリス統治により正書法が改められた影響で現在のサライキ語は主にアラビア文字で表記される。

ムルターニー文字はブラーフミー文字から派生した所謂ブラーフミー系文字（インド系文字）の一つだが、音素文字のうちアブギダではなく、概ね子音字のみで記されるアブジャドに分類される。ただし頭子音のない母音については個別に文字が存在する。ラテン文字などと同様に左から右への横書き(左横書き)であり、単語毎に分かち書きをする。

数字はグルムキー文字と同じものが用いられる^[1]。

符号位置の順序はおおむね伝統的なムルターニー文字の順序に従っている。

Unicodeのバージョン8.0において初めて追加された。

収録文字

「ラテン文字転写」の列はブラーフミー系文字のラテン文字への翻字方式の一つであるISO 15919（及び一部はIAST）に従う。

コード	文字	文字名（英語）	用例・説明	ラテン文字転写
母音字
U+11280	𑊀	MULTANI LETTER A	短母音[a]を表す。	a
U+11281	𑊁	MULTANI LETTER I	短母音[i]を表す。	i
U+11282	𑊂	MULTANI LETTER U	短母音[u]を表す。	u
U+11283	𑊃	MULTANI LETTER E	長母音[eː]を表す。	e
子音字
U+11284	𑊄	MULTANI LETTER KA	子音[k]を表す。	k
U+11285	𑊅	MULTANI LETTER KHA	子音[kʰ]を表す。	kh
U+11286	𑊆	MULTANI LETTER GA	子音[ɡ]を表す。	g
U+11287	(予約済み)
U+11288	𑊈	MULTANI LETTER GHA	子音[ɡʱ]を表す。	gh
U+11289	(予約済み)			ṅ
U+1128A	𑊊	MULTANI LETTER CA	子音[t͡ʃ]を表す。子音[t͡ʃʰ]を表すこともある^[1]。	c
U+1128B	𑊋	MULTANI LETTER CHA	子音[t͡ʃʰ]を表す。	ch
U+1128C	𑊌	MULTANI LETTER JA	子音[d͡ʒ]を表す。子音[d͡ʒʱ]を表すこともある^[1]。	j
U+1128D	𑊍	MULTANI LETTER JJA	子音[ʄ]を表す。
U+1128E	(予約済み)
U+1128F	𑊏	MULTANI LETTER NYA	子音[ɲ]を表す。	ñ
U+11290	𑊐	MULTANI LETTER TTA	子音[ʈ]を表す。子音[ʈʰ]を表すこともある^[1]。	ṭ
U+11291	𑊑	MULTANI LETTER TTHA	子音[ʈʰ]を表す。	ṭh
U+11292	𑊒	MULTANI LETTER DDA	子音[ɖ]を表す。	ḍ
U+11293	𑊓	MULTANI LETTER DDDA	子音[ɗ]を表す^[1]。子音クラスタ[tr]を表すこともある^[1]。
U+11294	𑊔	MULTANI LETTER DDHA	子音[ɖʱ]を表す。子音[dʱ]を表すこともある^[1]。	ḍh
U+11295	𑊕	MULTANI LETTER NNA	子音[ɳ]を表す。	ṇ
U+11296	𑊖	MULTANI LETTER TA	子音[t]を表す。	t
U+11297	𑊗	MULTANI LETTER THA	子音[tʰ]を表す。	th
U+11298	𑊘	MULTANI LETTER DA	子音[d]を表す。	d
U+11299	𑊙	MULTANI LETTER DHA	子音[dʱ]を表す。子音[d]を表すこともある^[1]。	dh
U+1129A	𑊚	MULTANI LETTER NA	子音[n]を表す。	n
U+1129B	𑊛	MULTANI LETTER PA	子音[p]を表す。	p
U+1129C	𑊜	MULTANI LETTER PHA	子音[pʰ]を表す。	ph
U+1129D	𑊝	MULTANI LETTER BA	子音[b]を表す。	b
U+1129F	𑊟	MULTANI LETTER BHA	子音[bʱ]を表す。	bh
U+112A0	𑊠	MULTANI LETTER MA	子音[m]を表す。	m
U+112A1	𑊡	MULTANI LETTER YA	子音[j]を表す。	y
U+112A2	𑊢	MULTANI LETTER RA	子音[r]を表す。	r
U+112A3	𑊣	MULTANI LETTER LA	子音[l]を表す。	l
U+112A4	𑊤	MULTANI LETTER VA	子音[ʋ]を表す。	v
U+112A5	𑊥	MULTANI LETTER SA	子音[s]を表す。子音[ʃ]や[ʂ]を表すこともある^[1]。	s
U+112A6	𑊦	MULTANI LETTER HA	子音[h]を表す。	h
U+112A7	𑊧	MULTANI LETTER RRA	子音[ɽ]を表す。	ṛ
U+112A8	𑊨	MULTANI LETTER RHA	子音[ɽʱ]を表す^[1]。	ṛh
約物
U+112A9	𑊩	MULTANI SECTION MARK	文末を示す^[1]。	§

小分類

このブロックの小分類は「母音字」（Vowels）、「子音字」（Consonants）、「約物」（Punctuation）の3つとなっている^[2]。

母音字（Vowels）

この小分類にはムルターニー文字のうち、基本的な母音字が収録されている。

子音字（Consonants）

この小分類にはムルターニー文字のうち、基本的な子音字が収録されている。

約物（Punctuation）

この小分類にはムルターニー文字で用いられる句読点などの約物類が収録されている。

文字コード

ムルターニー文字(Multani)^[1] Official Unicode Consortium code chart (PDF)
	0	1	2	3	4	5	6	7	8	9	A	B	C	D	E	F
U+1128x	𑊀	𑊁	𑊂	𑊃	𑊄	𑊅	𑊆		𑊈		𑊊	𑊋	𑊌	𑊍		𑊏
U+1129x	𑊐	𑊑	𑊒	𑊓	𑊔	𑊕	𑊖	𑊗	𑊘	𑊙	𑊚	𑊛	𑊜	𑊝		𑊟
U+112Ax	𑊠	𑊡	𑊢	𑊣	𑊤	𑊥	𑊦	𑊧	𑊨	𑊩
注釈 1.^バージョン16.0時点

履歴

以下の表に挙げられているUnicode関連のドキュメントには、このブロックの特定の文字を定義する目的とプロセスが記録されている。

バージョン	コードポイント^[a]	文字数	L2 ID	ドキュメント
8.0	U+11280..11286,11288,1128A..1128D,1128F..1129D,1129F..112A9	38	L2/12-316	Anshuman Pandey (27 September 2012), Proposal to Encode the Multani Script (英語)
^ 提案されたコードポイントと文字の名前は、最終決定と異なる場合がある。

出典

^ ^a ^b ^c ^d ^e ^f ^g ^h ⁱ ^j ^k ^l Anshuman Pandey (2012年9月27日). “Proposal to Encode the Multani Script” (英語). Unicode. 2025年8月6日閲覧。
^ “The Unicode Standard, Version 16.0 - U11280.pdf” (PDF). The Unicode Standard (英語). 2025年8月6日閲覧.

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