マルセル盗難事件とは? わかりやすく解説

マルセル盗難事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/19 15:59 UTC 版)

マルセル盗難事件(マルセルとうなんじけん)は、1968年に発生した美術絵画品盗難事件。

概要

1968年(昭和43年)、京都国立近代美術館11月9日から開催されていた「ロートレック展」の最終日の12月27日フランスから借りて展示されていた油彩絵画のうちの一つ「マルセル」(時価3500万円相当)が消えた[1]。大騒動となり、当直の守衛が自死する事態にもなった[2]

盗難から3日後の12月30日に美術館から約200メートル離れた自転車置き場で額縁だけが発見され、現場の西側にシューズの跡が残されていた[3]。また、「マルセル」は一番人気があった作品だったが、隣にあった『酒場「スター」のイギリス娘』(時価1億円以上)は盗まれていなかったことから、換金目的ではなく「マルセル」の熱狂的なファンの仕業と考えられた[誰?][4]

事件から7年後の1975年(昭和50年)12月27日窃盗罪公訴時効が成立した[4]

その後『マルセル』は、時効成立後の1976年(昭和51年)1月、大阪市に住む会社員夫婦が「盗まれた『マルセル』ではないか」と新聞社に連絡してきたことで発見された[5]。会社員夫婦によると「『マルセル』は知人で京都に住む中学教諭から預かったもので、風呂敷に包まれた中身を確かめずに押し入れに置いていた」という[5]。中学教諭は「知人から預かっており中身を知らなかった。知人の名は信義があるので言えない」などと主張し、時効のため詳しい真相を追究はされなかった[5]

2月27日、「マルセル」は読売新聞社(展覧会の主催)を経て、貸出し元だったトゥールーズ=ロートレック美術館Musée Toulouse-Lautrec、フランスアルビ)に無事戻った。しかし、犯人および動機は不明のままである。

事件を扱った作品

  • 沢野久雄「失踪」朝日新聞社 1970(盗難事件を取り上げた小説。1969年に朝日新聞で連載)
  • 髙樹のぶ子「マルセル」 単行本:毎日新聞社2012ISBN 978-4-62010777-6/文庫:文藝春秋社 2015 ISBN 978-4-16-790359-6(盗難事件を追った新聞記者の娘を主人公とした小説。2011年に毎日新聞朝刊で1年にわたり連載)
  • 浅見溪「マルセル嬢盗難」新幹社2014 ISBN 978-4-88400108-7(事件を追った新聞記者の取材メモを基にしたフィクション小説)

脚注

  1. ^ “発信箱:マルセルと青木繁=榊原雅晴”. 毎日新聞 大阪朝刊. (2011年6月22日). オリジナルの2011年7月5日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20110705181708/http://mainichi.jp/select/opinion/hasshinbako/news/20110622ddn004070057000c.html  {{cite news}}: 不明な引数|deadurldate=は無視されます。 (説明)
  2. ^ 【浪速風】コピー紙すり替え…お粗末すぎる「消えた名画」”. 産経ニュース. 産経新聞 (2017年4月19日). 2025年4月19日閲覧。
  3. ^ 井出守 1994, p. 184.
  4. ^ a b 井出守 1994, p. 185.
  5. ^ a b c 井出守 1994, p. 187.

参考文献

  • 井出守『迷宮入り事件の謎―ミステリーより面白い』雄鶏社、1994年。 ISBN 9784277880664 

関連項目

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