ピアノと管弦楽のための幻想曲 (フォーレ)とは? わかりやすく解説

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ピアノと管弦楽のための幻想曲 (フォーレ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/02 17:35 UTC 版)

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初演の会場となったサル・ガヴォー。

ピアノと管弦楽のための幻想曲フランス語: Fantasie pour Piano et Orchestre作品111 は、ガブリエル・フォーレが1918年に作曲した協奏的作品[1]

概要

ピアノと管弦楽の協奏的作品という着想はクロード・ドビュッシーから間接的にもたらされた。ドビュッシーは彼の作品の出版を請け負っていたジャック・デュランに対し、ピアノと各種楽器群のための一連の「コンセール」を構想していると手紙で伝えている。1918年にドビュッシーが他界した後、デュランはこのアイデアをフォーレに提案したのであった[2]

9月8日までに大方曲を書き上げたフォーレは、妻にこう書き送っている。「ピアノと管弦楽のための作品をほぼ仕上げました。歳を取って仕事の速さと容易さが増したようです(中略)あなたにとってもそうであってもらう必要があると期待した通り、私は戦争の報せに鼓舞されていると言わねばなりません。」フォーレの伝記作家であるジャン=ミシェル・ネクトゥーによると、聴力が悪化していたフォーレは自らの監督の下、マルセル・サミュエル=ルソーに本作のオーケストレーションを頼んだという[2]

曲はアルフレッド・コルトーに献呈された。コルトーは遡ること1902年にフォーレに協奏作品の依頼をしていたのである。非公式の初演は1919年4月12日に、モンテカルロのフォーレ・フェスティバルでマルグリット・アッセルマンの独奏、レオン・ジュアンの指揮で行われた。パリ初演は1919年5月14日、サル・ガヴォーにおける国民音楽協会の演奏会でコルトーの独奏により行われた[2]

コルトーは後にある記事の中で、とりわけ独奏パートが「華麗さに欠け」ており、またソロと管弦楽の間の「対比が不足」していると、本作に対する懸念を表明している。[2]

演奏時間

約14分[3]

楽器編成

ピアノ独奏、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、ティンパニハープ弦五部

楽曲構成

ネクトゥーは本作の独奏と管弦楽の関係性は、30年前に書かれた管弦楽伴奏つきバラードの管弦楽法に近いものがあると述べる。「ソリストが一番 - 首席と言ってもよかろう - となり、オーケストラの力と色彩は筋書きを強調する役割を果たす。弦楽器はほぼ一貫してピアノの伴奏として用いられるが、木管はしばしば独奏として扱われる[2]。」ピアノ書法は協奏曲というより、室内楽のそれに近いものとなっている[3]

曲は連続して演奏される3つの部分から構成される。

Allegro moderato ト長調 4/4拍子

序奏はなく、ピアノが譜例1を奏して開始する。呼応する木管とのかけあいを演じつつ、同じ主題による経過となっていく。

譜例1


\relative c' {
  \new PianoStaff <<
   \new Staff { \key g \major \time 4/4 \set Score.tempoHideNote = ##t \tempo "Allegro moderato." 2=86
   \override Score.NonMusicalPaperColumn #'line-break-permission = ##f
    a4 g e'8 d4 b'8 a8.[ g16 d'8. g16] d4~ d16 d cis b
    a8.[ g16 d'8. g16] d4~d16 cis b a cis4 b2~ \times2/3 { b8 a g } b4 a4~ a8 r r4
   }
   \new Dynamics {
    s8-\markup { \italic { con suono } }
   }
   \new Staff { \key g \major \time 4/4 \clef bass
    r8 <b, d, g,> r <d d, b> r <c g a,> r <d fis, c>
    r <d d, b> r <b d, g,> r <b fis b,> r <fis' d fis,>
    r <d d, b> r <b d, g,> r <b fis b,> r <fis' d fis,>
    r <d g, d> r <g, d g,> r <b g d>    r <d b f>
    r <f, c f,> r <c' a c,> r2
   }
  >>
 }

ピアノが急速な音型を奏する傍ら、ヴァイオリンに新しい旋律が出される(譜例2)。この旋律に基づいて進んでいく。


\relative c'' {
 \new Staff \with { \remove "Time_signature_engraver" } { \key g \major \time 4/4 \set Score.tempoHideNote = ##t \tempo "" 2=86
  <a a,>4_\markup {\dynamic p \italic espressivo } ( <a'~ a,~> <a a,>8 <g g,> <a a,>4) <a, a,>( <a' a,> <d d,>4. <g, g,>8)
  <a a,>4.( <b b,>8\< <cis cis,>4 <d d,>\!) <e e,>( <f f,>4. <c c,>8\> <b b,>4\!)
 }
}

ピアノに譜例1が回帰して、以降は流麗なピアノ書法に譜例1と譜例2を織り交ぜて展開していく。譜例1を用いたコデッタとなって盛り上がり、1小節の全休止が挟まれる。

Allegro vivo ホ短調 3/4拍子

速度を上げて短調に転じ、ピアノが譜例3のリズムを刻み始める。

譜例3


\relative c {
  \new PianoStaff <<
   \new Staff = "R" { \key e \minor \time 3/4 \set Score.tempoHideNote = ##t \tempo "Allegro vivo." 2=60
    \change Staff = "L" d8.\rest b16\( e8. b'16 \change Staff = "R" f8. b16
    f'8. b,16 f'8. b16 \change Staff = "L" f,8. b16\)
    d,8.\rest b16\( e8. b'16 \change Staff = "R" f8. b16
    f'8. b,16 f'8. b16 \change Staff = "L" f,8. b16\)
   }
   \new Dynamics {
    s8-\p
   }
   \new Staff = "L" { \key e \minor \time 3/4 \clef bass
    s2. s s s
   }
  >>
 }

間もなくピアノから新しい主題が出される(譜例4)。

譜例4


\relative c' {
  \new PianoStaff <<
   \new Staff \with { \remove "Time_signature_engraver" } { \key e \minor \time 3/4 \set Score.tempoHideNote = ##t \tempo "" 2=86
    b2.^-~ b4 a'2^- fis^- g4^-~ g e^- c^- d2 dis4~ dis c'2 c2. b
   }
   \new Dynamics {
    s8-\f
   }
   \new Staff \with { \remove "Time_signature_engraver" } { \key e \minor \time 3/4 \clef bass
    r8. dis,,,16 b'4 b <a' fis> r <fis b,> r8. e,16 b'4 b <b' g> r <g b,>
    r8. fis,16 b4 b <b' fis> r <a dis,> r8. g,16 b4 b r <e' g,> b,
   }
  >>
 }

ピアノが一定の音型を刻む傍ら、ホ短調に転じた譜例2を管弦楽が奏する。譜例3が回帰して緊張感が高まるが、傍らではピアノが大らかに譜例2を奏でる。次いで譜例4がピアノの重音によって、より重々しく再現され、譜例2などを織り交ぜてフォルティッシモに到達する。

Allegro moderato ト長調 4/4拍子

元のテンポに戻り譜例1が再現される。簡潔に進み、譜例2の再現も行われる。主に譜例1を使用したコーダが置かれ、最後にピアノの連打により華やかに締めくくられる。

出典

  1. ^ Nectoux, Jean-Michel (2001). "Fauré, Gabriel (Urbain)". Grove Music Online (英語) (8th ed.). Oxford University Press.
  2. ^ a b c d e Nectoux, Jean-Michel (1991). Gabriel Fauré: A Musical Life. Cambridge: Cambridge University Press. pp. 396–398. ISBN 978-0-521-23524-2 
  3. ^ a b ピアノと管弦楽のための幻想曲 - オールミュージック. 2022年3月19日閲覧。

参考文献

  • 楽譜 Fauré: Fantasie pour Piano et Orchestre, Durand & Cie., Paris, 1919

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