トフォリゲートとは? わかりやすく解説

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トフォリゲート

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/07 09:31 UTC 版)

トフォリゲートの記号

トフォリゲート (: Toffoli gate) は、トマソ・トフォリの提案した可逆論理ゲートである。トフォリゲートはfunctional complete(en:Functional completeness)である。すなわち、任意の論理演算がトフォリゲートの組み合わせにより実現できる。別名のCCNOTゲートは、その動作を表す "controlled-controlled-not" (制御・制御・NOTゲート) の略称である。

概要

論理ゲート L が可逆であるとは、ゲートの表す関数が単射であること、すなわち任意の出力 y に対して L(x) = y を満たす入力 x がただ一つ定まることをいう。出力に対応する入力を求める L′(y) = x を逆ゲートという。例えば、以下のようにNOTゲートは可逆である。

入力 出力
0 1
1 0

一方、ANDゲートは可逆ではない。00、01、10に対する出力がすべて0となるため、出力0に対する入力が一つに定まらないためである。

可逆ゲートの研究は1960年代頃に始まった。その動機は、通常のゲートに比べて可逆ゲートは計算に使うエネルギーの消費が少ない(理想的にはゼロとなる)ことだった。通常論理ゲートでは入力する情報量に比べて出力する情報量が減り、入力された状態は失われる。これによって熱的エントロピーが下がり、生じた差分のエネルギーが周囲に熱として放出される。別の言い方をすると、回路の状態が変化する時電子がアースに流れ、エネルギーが僅かに回路外に持ち出されるということである。可逆ゲートは状態を交換して回るだけなので、情報は失われず、回路内のエネルギーは保存される。

可逆ゲートは、近年量子計算の分野で注目されている。量子計算では全ての遷移は可逆であり、重ね合わせによってより多くの計算機の状態を持つことができる。したがって、可逆ゲートは量子ゲートの機能の一部を再現するものであり、可逆的に計算できるものは量子コンピュータ上でも計算できる。

トフォリゲートの機能的完全性

すべての可逆ゲートは同じ数の入力ビットと出力ビットをもつ。これは鳩の巣原理による。

1ビットに対しては、恒等写像NOTゲートのふたつの可逆ゲートがある。この二種類はどのビット数に対しても同様のゲートが定義できる。

2ビットに対しては、上の二種類と交換などの自明なものを除くと、制御NOTゲートが唯一の演算である。このゲートは一つ目の入力を二つ目の入力にXORし、二つ目に出力する。一つ目の入力はそのまま出力される。動作を以下に示す。

真理値表 置換行列表現
入力 出力
 0   0   0   0 
0 1 0 1
1 0 1 1
1 1 1 0

ビリヤードボール・コンピュータ
  • フレドキンゲートはトフォリゲートと同様の3ビット可逆ゲートで、1ビット目が1のときに残りのビットを交換する。制御交換ゲートとも呼ばれる。
  • 任意のビット数に対してトフォリゲートを一般化することができる。n ビットの入力 x1, x2, ..., xn をとり、 n ビットを出力するものとする。最初の n−1 ビットはそのまま入力の x1, ..., xn−1 を出力し、最後のビットに (x1 AND ... AND xn−1) XOR xn を出力する。
  • トフォリゲートは2量子ビットを扱うゲートを5つ組み合わせることによって量子コンピュータ上で実現できる[2]

量子計算との関係

量子トフォリゲートは2009年1月、オーストリアインスブルック大学で実現された[4][5]

関連項目

脚注

  1. ^ Technical Report MIT/LCS/TM-151 (1980) and an adapted and condensed version: Toffoli, Tommaso (1980). J. W. de Bakker and J. van Leeuwen (ed.). Reversible computing (PDF). Automata, Languages and Programming, Seventh Colloquium. Noordwijkerhout, Netherlands: Springer Verlag. pp. 632–644. ISBN 3-540-10003-2. 2010年4月15日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ。
  2. ^ Barenco, Adriano; Bennett, Charles H.; Cleve, Richard; DiVincenzo, David P.; Margolus, Norman; Shor, Peter; Sleator, Tycho; Smolin, John A. et al. (Nov 1995). “Elementary gates for quantum computation”. Physical Review A (American Physical Society) 52 (5): 3457–3467. arXiv:quant-ph/9503016. Bibcode1995PhRvA..52.3457B. doi:10.1103/PhysRevA.52.3457. PMID 9912645. 
  3. ^ Fredkin, Edward; Toffoli, Tommaso (April 1982). “Conservative logic”. International Journal of Theoretical Physics (Springer Netherlands) 21 (3): 219–253. Bibcode1982IJTP...21..219F. doi:10.1007/BF01857727. ISSN 0020-7748. http://www.digitalphilosophy.org/LinkClick.aspx?fileticket=5wPlkttI56o%3d&tabid=61&mid=494&forcedownload=true. 
  4. ^ Shi, Yaoyun (Jan 2003). “Both Toffoli and Controlled-NOT need little help to do universal quantum computation”. Quantum Information & Computation 3 (1): 84–92. arXiv:quant-ph/0205115. 
  5. ^ Monz, T.; Kim, K.; Hänsel, W.; Riebe, M.; Villar, A. S.; Schindler, P.; Chwalla, M.; Hennrich, M. et al. (Jan 2009). “Realization of the Quantum Toffoli Gate with Trapped Ions”. Physical Review Letters (American Physical Society) 102 (4): 040501. arXiv:0804.0082. Bibcode2009PhRvL.102d0501M. doi:10.1103/PhysRevLett.102.040501. 


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