アリスター・マッケンジーとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > アリスター・マッケンジーの意味・解説 

アリスター・マッケンジー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/02 14:02 UTC 版)

殿堂表彰者
選出年 2005年
選出部門 特別功労

アリスター・マッケンジー(Alister MacKenzie、男性、1870年8月30日 - 1934年1月6日[1])は、イギリスの医師、軍医、ゴルフ設計技師。

経歴

ケンブリッジ大学で医学を専攻したマッケンジーは、大英帝国軍医としてボーア戦争(第2次:1899年 - 1902年)に従軍(このとき経験したボーア軍のカモフラージュ作戦が、のちのゴルフ場設計に影響を与えたとされる)。さらに第一次世界大戦でも軍医を務めた。本格的にゴルフコースの設計を手がけるようになったのは、戦後医師を廃業した50歳過ぎからである。

ゴルフ場設計者を目指したきっかけは、1914年の米国『カントリーライフ誌』の懸賞つき『理想の2ショットデザインコンテスト』で優勝したことである。このとき「医者もゴルフも人間の健康に携わる仕事」との思いを持ったとされる。

1920年に代表的な著書『ゴルフ設計論(Golf architecture)』を上梓。その中で「ゴルフは上手な人も下手な人も皆が楽しめること。しかし、努力、挑戦意欲もあり、技術を持つ人のほうがより良い結果につながるコースであるべき」と記述したといわれている。「神が造った」と言われ、自然を活かした従来のリンクス・コースはラフバンカーが深くなっていて、運不運に左右されたり、ボール探しなどの煩わしさがあったのである。著書の評判は上々だったが、マッケンジーにまだ仕事は来なかった。

1926年、オーストラリアのロイヤル・メルボルンGCから改修の仕事が入ったのをきっかけとして、設計依頼が殺到。米国・カリフォルニア州モントレーに造られたサイプレスポイント(1928年オープン)とパサティエンポ(1929年オープン)は、マッケンジーの評判を不動のものとした。

1930年、28歳で引退し、故郷のジョージア州に帰ったボビー・ジョーンズは、友人の銀行投資家クリフ・ロバーツと相談し、理想のコース場造りをマッケンジーに依頼した。これが後のオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブである。1933年にコースが完成したとき、ニューヨーク・タイムズ社の「これはビギナー向けのコース」との酷評に、3人は「そのとおりです。これぞ皆が待望していたコースです。しかし、トッププロもトップアマチュアも大いに楽しめるコースです」と答えたとされている。

1934年、オーガスタGCを遺作とし、自作のパサティエンポGCの隣地にある自宅で、64年の生涯を終えた。

設計理念

マッケンジーは、ゴルフ設計基本原則を記している。

  • 真に偉大なコースは、多くのプレイヤーが常に楽しんでプレーできるものであること。
  • プレイヤーには技術同様に戦略も要求する。それでこそゴルファーの興味を引き続けることができる。
  • アベレージ・ゴルファーにも良いプレーができるよう、十分なチャンスを与えると同時に、アンダーパーを狙えるプレーヤーには、最高の技術・戦略を要求する。
  • 全ての自然の美しさは保存されなければならない。自然のハザードはそのまま利用し、人工的なものは最小限に留めなければならない。
  • ブラインドホールはなくすこと。
  • ロストボールを捜す面倒やいらだちを全くなくすこと。
  • 大胆なティショットの見せ場もあるが、非力なプレイヤーが1打を失うことを覚悟すれば、いつも他の選択肢が用意されていること。

また、リンクス・コースとの差別化ではなく、特色を継承するべき点についても留意している。

  • 全てのホールに特色があること。
  • 多彩な技術を要求するグリーン周辺にすること。
  • 夏でも冬でも良いコンディションにすること。
  • スクラッチプレイヤー以上のプレイヤーには、挑戦意欲がわくようなコースにすること。
  • 全てが美しいこと。

などである。

従来のリンクス・コースでは、1番ホールからスタートして、18番でクラブハウスに戻る。すなわち9番、10番がクラブハウスから一番遠いところになっていた。それを1番から9番を「フロント9」、10番から18番を「バック9」と呼び、それぞれクラブハウスに戻れるかたちにしたのは、マッケンジーの提案である。以降、近代ゴルフコースの常識となった。

参考文献

  • 安井信之『オーガスタのルーツは南アフリカにあり 世界のゴルフ史を変えたボーア戦争』日本文化出版、2006年。 ISBN 4890841342

出典

  1. ^ 150”. Alister MacKenzie Institute. 2024年6月2日閲覧。





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「アリスター・マッケンジー」の関連用語

アリスター・マッケンジーのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



アリスター・マッケンジーのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのアリスター・マッケンジー (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS