ぼくが電話をかけている場所_(小説)とは? わかりやすく解説

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ぼくが電話をかけている場所 (小説)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/07/09 15:07 UTC 版)

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ぼくが電話をかけている場所』(ぼくがでんわをかけているばしょ、原題:Where I'm Calling From)は、アメリカ小説家レイモンド・カーヴァー短編小説

概要

ザ・ニューヨーカー』1982年3月15日号に掲載された[1]。1983年9月15日刊行の短編小説集『大聖堂』(クノップフ社)に収録。

本作品は『ベスト・アメリカン・ショート・ストーリーズ 1983』(ホートン・ミフリン社)に選ばれている。また、1988年5月には本作品をタイトルにした精選作品集『Where I'm Calling From: New and Selected Stories』(アトランティック・マンスリー・プレス)が刊行されている。

日本語版は『』1983年5月号が初出。翻訳は村上春樹。それから間もなくして、村上が作品のセレクトを行った短編集『ぼくが電話をかけている場所』(中央公論社、1983年7月25日)に表題作として収録される。カーヴァーの死後、中央公論社は個人全集の刊行を始めるが、本作品を収録した『大聖堂』は最初に配本された(1990年5月20日刊行)。12編の作品から成る『Carver's Dozen レイモンド・カーヴァー傑作選』(中央公論社、1994年12月7日)にも収録されている。

あらすじ

エピソード

  • カーヴァーは実際にアルコール中毒療養所に入っていたことがあり、本作品はそのときの経験をもとにしている。カーヴァーが入った療養所「ダフィーズ」はジャック・ロンドンのビューティー・ランチから直線距離で18キロほどのところにあったが[2]、この事実も物語に生かされている。なおボブ・エーデルマンの写真集『Carver Country: The World of Raymond Carver』(チャールズ・スクリブナーズ・サンズ、1990年9月7日)には、本作品の一節と共に「ダフィーズ」やトップ・ハットをかぶった煙突清掃人の写真が収められている[3]
  • 上記『海』1983年5月号に掲載された7編の短編が日本で最初に翻訳された作品であるが、村上春樹はその1年前に書いたコラム(『Sports Graphic Number』1982年7月20日号掲載)の中で本作品を紹介している。「カーバーの文章は一瞬たりとも立ちどまらず前へ前へと進んでいく。アルコール中毒で療養所に入っている主人公が同じ患者の青年と心を通いあわせあうという話だが、暗い題材のわりにパセティックに流れないところがいい」[4]
  • 物語の終盤、語り手は次のように述べる。
I try to remember if I ever read any Jack London books. I can't remember. But there was a story of his I read in high school. "To Build a Fire", it was called. This guy in the Yukon is freezing. Imagine it--he's actually going to freeze o death if he can't get a fire going.

そういえば僕はジャック・ロンドンのものを何か読んだことがあったっけ? 思い出せないな。でも高校生の時に短いものをひとつ読んだ。「焚き火」っていう題のやつだ。ユーコンで一人の男が寒さに凍えている。彼はうまく火をおこさなければ本当に凍死するしかない。

村上の短編小説『アイロンのある風景』(『新潮』1999年9月号掲載)はこの一節の影響が見られる。該当箇所は次のとおり。「順子はいつものようにジャック・ロンドンの『たき火』のことを思った。アラスカ奥地の雪の中で、一人で旅をする男が火をおこそうとする話だ。火がつかなければ、彼は確実に凍死してしまう。日は暮れようとしている。彼女は小説なんてほとんど読んだことがない。でも高校一年生の夏休みに、読書感想文の課題として与えられたその短篇小説だけは、何度も何度も読んだ」[5]

脚注

  1. ^ WHERE I'M CALLING FROM BY RAYMOND CARVER, March 15, 1982The New Yorker
  2. ^ キャロル・スクレナカ 『レイモンド・カーヴァー 作家としての人生』中央公論新社、2013年7月10日、星野真理・訳、454頁。
  3. ^ 『カーヴァー・カントリー』中央公論社、1994年10月7日、村上春樹訳、101-107頁。
  4. ^ 村上春樹 『THE SCRAP 懐かしの一九八〇年代文藝春秋、1987年2月、25頁。
  5. ^ 村上春樹 『神の子どもたちはみな踊る新潮社、2000年2月25日、44-45頁。



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