はみだしっ子のエピソード一覧とは? わかりやすく解説

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はみだしっ子のエピソード一覧

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/01 07:38 UTC 版)

はみだしっ子 > はみだしっ子のエピソード一覧

はみだしっ子のエピソード一覧(はみだしっこのエピソードいちらん)は三原順漫画作品『はみだしっ子』におけるエピソードの一覧。

白泉社少女漫画雑誌『花とゆめ』で1975年から1981年まで連載された。 家出した少年4人の彷徨と成長を描き、10代の少女読者を中心に熱狂的に支持された[1]

物語は「Part」で区分された本編Part1 - Part19と、番外編からなる。初期の本編の各パートは20 - 30ページの読みきり中編であるが、最後のPart.19は600ページ以上(単行本4巻、文庫版2巻)に渡る長編である。

Part.1 われらはみだしっ子

  • 読みきりとして掲載された第1話。最後の1ページには、成長した5年後の彼らが描かれていたが単行本化の際にカットされた。この最終ページは「LOST AND FOUND 三原順秘蔵作品集」に収録されている。

グレアム、アンジー、サーニン、マックスの4人の子供は、親から見捨てられ、あるいは親を見限って家出しして知り合い、喫茶店でマスターの妹のローリーの世話を受けながら共に暮らす。しかしローリーが警察に通報している事を知って、クリスマスイブの夜に「親という名を持った人間ではない、ホントに愛してくれる人」を探してローリーの元を出る。雪の路傍で凍死しかけたところを、通りがかりの医師に救助されるが、看護師に家出を指摘されて、「きれいな衣をまとった人よさようなら、ザマアミロ!」と、4人で病院を抜け出す。

Part.2 動物園のオリの中

  • Part.1同様、雑誌掲載時には成長した数年後の彼らがPart.2の内容を振り返っているページが描かれているが、単行本・文庫版ではカットされている。この最終ページは「LOST AND FOUND 三原順秘蔵作品集」に収録されている。

酒場で働くレディ・ローズに拾われ、4人は彼女のアパートで暮らす。しかし「人間の動物園」アパートの他の住民の小鳥をいじめていた子供達と喧嘩し、レディ・ローズはアパートを追い出される。4人は動物園のオリの中に隠れて見世物になるより、オリの外に出ることを選ぶ。

Part.3 だから旗ふるの

アンジーは、些細な喧嘩から、飛び出し箱に隠れ、離れ島に運ばれてしまう。一人で、リフと呼ばれていた頃のことを回想する。近くに小舟が通りかかっているという知らせに、アンジーは母を待ち続けて捨てられたトラウマを乗り越えて旗を振り、3人と再会する。

Part.4 雪だるまに雪はふる

4人はスキーロッジに滞在。同宿の心臓病を患った少女・エヴァは高慢に4人に命令し、彼女の母親は何も言えない。エヴァに命じられて雪だるまを作るサーニンは、自分の母親が父親と曾祖父の間で何も言わず板挟みになり、精神を病んで雪の日に亡くなった事を話す。

Part.5 階段のむこうには

グレアムの元に、いとこのエイダから電話が来て、4人はエイダが指定した「Hotel Hell」に滞在する。エイダはグレアムを人殺しと責め、自宅に帰る事を強要する。アンジーは、『いざって時逃げるため』に階段で松葉杖なしで歩く練習をして、松葉杖無しで歩けるようになる。マックスは親切なお姉さんと仲良くなるが、グレアムを追い詰めているエイダと知って、エイダにグレアムの変わりに自分を殺して良いと申し出る。サーニンが一芝居売って階段でアンジーがエイダと対決、エイダはグレアムを庇う4人の結束を見て、グレアムの右目の失明は、自分が告げ口をしたせいだと告白する。マックスが「ボクお姉ちゃンが好きだよ、今度あったらみんな友達になれるよね」と言い、4人は明るい光に向かって駆けだす。

Part.6 レッツ・ダンス・オン!

「今日は今日を生きてりゃいい、踊ってりゃご機嫌」というジョンのアパートに転がり込んだ4人。マックス以外の3人はジョンに連れられてディスコに通い詰める。グレアムはディスコの音任せで強制的な気分転換の中、心の中で4人を裏切りかけていた。しかしジョンに嵌められて逃走中、「こいつらをダシにしていればかろうじて自分を自分で支えられている」と気がつく。

Part.7 夢をごらん

雨宿りの映画館で出会ったマスターの喫茶店に転がり込んだ4人。マスターはかつて従軍し、「敵」を「物」のように殺した過去を悔いていた。サーニンがマスターに懐き、4人もこのままいられる事を夢見る。街は川向こうの街と抗争しており、街の子供達もお互いを敵として団結していた。仲間に入る事を強要する街の子供達と喧嘩になり、4人はマスターの喫茶店を出ていく。

Part.8 残骸踏む音

渡り鳥に会いに行く途中の4人は、とある手紙を届けるために寄り道をした。その家のケイトは家出娘をひっかけては売春宿に売っていた。4人が家出と直感し、サーニンを地下室に幽閉して、アンジーを(本当の母親の)イブ・ホーンの子供役に応募する。それを知ったアンジーは、ティーセットを壊し残骸を踏みつける。幽閉にトラウマのあるサーニンは、「渡り鳥」の強さを心に描いて耐える。ケイトに売られた少女が復讐にケイトを刺し、4人はサーニンを救って逃げ出す。

Part.9 そして門の鍵

グレアムは父に追われ、アンジーは母に追われていた。4人は、死亡しているはずのシドニー・マーチンから手紙を受け取り続け、シドニーの幽霊屋敷に隠れ場所を求めた。シドニーは、マーチン一族の嫡子でありながら、一族に死んだ事にされて屋敷に幽閉されていた。グレアムとアンジーは親と対決するために街に戻る。サーニンとマックスとシドニーは、戻ってきた彼らを迎え入れるために門の鍵を開け、シドニーは一族に反抗する勇気を出す。

Part.10 山の上に吹く風は

4人は雪山行きバスに乗る。同乗の逃亡中銀行強盗犯のジョイが、ルートを変えさせ、吹雪の中バスが遭難する。グレアムはその際胸を強く打ち、動けなくなる。同乗者の一人の歌手シャーリーは、ヘロインを所持しており、グレアムにも痛み止めとして薬を分けるも、歌を他の乗客に貶されて、吹雪の中行方不明になる。ジョイは、ラジオでバス乗車がばれた事を知り、マックスの目の前で拳銃自殺。マックスが銃を取り上げる。吹雪が止み、サーニンが助けを求めに向かい、他の乗客も下山をはじめる。 動けないグレアムを含む3人は山に残り、シドニーに頼まれ4人を追って同乗したアルフィーも残り、薪を探しに出る。 シャーリーを待つマネージャのギィも残るが、シャーリーが戻ってこないのはお前たちのせいだ、「いなくなれこの邪魔者、おまえさえ」とグレアムに襲い掛かった。その時グレアムから貰った薬を飲み寝ていたマックスは、自分が父親から「お前さえいなければ、邪魔者」と首を絞められた記憶の夢でうなされていて、無意識に「やめて」と銃をギイに向けて撃ってしまう。ギイは即死。動けないグレアムを置いて、アンジーは銃とギイの死体を引っ張って離れる。銃で自殺をしようとするも弾が無く、追って山に来ていたシドニーが見つけて、死体の処分を約束。グレアム・マックス・アルフィーも救助隊に救助される。一方、助けを求めて山を下りたサーニンは、先に下山組が雪崩に巻き込まれた知らせに、残りの3人を救えなかったと思い込み、救助本部から行方不明になる。救助されたグレアムは、精神のバランスが崩れ、物事に反応しなくなる。マックスは、面会でグレアムが反応しないのは、自分が悪い子だから拒絶されたと思い込み、失踪してしまう。アンジーは、グレアムをエイダに託し、生きるためにシドニーからジョイの拳銃を受け取る。

Part.11 奴らが消えた夜

失踪したマックスは、汽車への無賃乗車で補導され、孤児院に引き取られた。世話係のジャネットと個性が強い孤児院の子たちとの生活に、アンジーとサーニンを心に描いて奮起する。グレアムを連想させる良い子のトビーや学校で級友のブラッドをマックスは無意識的に避けるが、ブラッドに指摘をされ、自分が彼にグレアムを見ていた事に気が付き、昔のグレアムに約束した事を思い出して、ブラッドと和解する。素行が荒れてゆくヴァトゥを気に掛けるが、ピクニック先で、ヴァトゥに無一文で置きざりにされる。アンジーはマックスの行方を捜し続けており、グレアムも回復して探索に同行。グレアムは、マックスらしい手ごたえがあった孤児院を訪れ、行方不明のマックスを探しに出る。道端で座り込んでいたマックスに、グレアムが追い付き、マックスはようやく「グレアム大好き」と言え、グレアムは微笑み返し、元の関係に戻る。

Part.12 裏切者

救助本部から失踪したサーニンは、キャシーに出会い、彼女の家に保護される。しかし3人が死んだものと絶望していたサーニンの心と手の傷が回復せず、キャシーの祖父の牧場に預けられる。3人が生きていることを知り、また将来の動物好きで牧場の空気とも合い、サーニンは元気に回復。扱いにくい暴れ馬だったエルバージュ(エル)と出会い、根気強く関係を作り、エルの馬主となる。 アンジーがサーニンを見つけて会いに来たが、サーニンは、馬主として牧場に残る。エルの父馬は好調・不調の波が激しく、あだ名は「裏切者」だったが、エルも3勝後惨敗した。調子が復活した後にサーニンは3人をレースに呼ぶ。ミセス・シグナンが、エルのために用意していた角砂糖を、マックスが口にして体がだるく動けなくなった事から、4人は八百長に気が付く。しかしキャシーを人質に、次のレースで負ける事を強要され、サーニンは騎手に成り変わってレースに参加し、ゴール手前で止まる。グレアムは黒幕がバーガー医師である事を見抜き、キャシーを解放するが、バーガー医師は既にエルを薬殺処分させるための偽診断書を書いていた。薬殺処分に向かうエルを4人で強奪して、また4人の生活に戻る。

Part.13 窓のとおく

4人はエルと共にフー姉さまの別荘に転がり込んでいるが、エルの馬小屋を建てるために、水族館でバイトを始める。下宿先のダニーの家では、兄のカールがグレてで歩き、家族は飼い犬のロジャーのことしか会話しない。カールが爆発事故の犯人と疑われ警察に連れていかれ、ダニーも窓からカールらしい人物が逃げるのを見ていたが、マックスは、迷子になった時にカールと同じ服を着た人を見た事があった。グレアムが一芝居を打ち、「遺族に憎むべき人を憎ませなければいけない」とカールに犯人ではない事を告白させる。

Part.14 バイバイ行進曲

グレアムは新聞記事から父の病気を悟り、自ら生家に戻ってきた。6歳のときに、「20歳になったらパパを殺す」と決意していたグレアムは、病で弱った父に葛藤する。グレアムの父は、和解のきっかけにと、グレアムの母が出て行った日に割れていた花瓶のことを「あれはおまえだろう」と繰り返し尋ね、エイダや叔父も和解を望むが、グレアムは「ボクじゃない」と言い続ける。父は、グレアムにピアノを弾いて見せた後に亡くなり、グレアムは弔いの葬送行進曲を弾く。その後睡眠薬入りのコーヒーで眠らされて、父の遺言で父の角膜移植手術を受ける。

Part.15 カッコーの鳴く森

時は夏。気分転換にと4人は迂闊にも教会のサマーキャンプに申し込む。キャンプに向うバスの中で出会った少女に、森の中で再会したサーニン。サーニンは、反応しない彼女を「クークー(カッコー)」と呼び、一緒に多くの時間を過ごす。ある日川の上流のダムの放水で、濁流の中の岩にクークーが取り残される。サーニンは咄嗟に川に飛び込むが、先に牧師がクークーを助け、サーニンが濁流にのまれそうになる。マックスのお願いに反応して、クークーはサーニンの名前を大声で呼び、サーニンも助かる。クークーの保護者の牧師は、サーニンが彼女と親しくなろうとするのを好まず、その後はクークーに会わせてもらえないまま、サマーキャンプは終了する。

Part.16 もうなにも…

サーニンが虫垂炎(盲腸)を発症し、グレアムが下車した駅は、4人が出会ったローリーの喫茶店のある町だった。グレアムはサーニンの入院で、父の主治医の力を借り、やってきた叔父から、4人を養子に貰い受けたいという人物がいることを知らされ、4人は動揺する。 グレアムとアンジーは、雪山事件を隠し通せるか悩む。「他人」という敵対者相手にならかたくなな心でいられても、「いることを認めてくれる」「親」にはどうすればいいのか、グレアムは苦悩するが、養子に行く事を決める。アンジーは母親に養子の書類にサインを貰いに行くも、母親は会う約束をすっぽかそうとする。「それでもボクは生きてきたからいいよね」とアンジーは今まで世話になった人たちを想い、「それでこわれるなら こわれてしまえぼくの心」と養子に行く事を決める。

Part.17 クリスマスローズの咲く頃

駅まで迎えに来たジャックを置いてけぼりにして、クリスマスローズの株を持ってクレーマー家に直接乗り込んで養子に来た4人。「どうせならこの養子の件成功させたいと 嫌われるよりは好かれたい」と意識しすぎて、ぎこちない。アンジーは、「かつて本来の自分で親子関係に失敗しているからおびえているのでは」と自問し、フリル付きの服装、タバコ、酒、近所の子供と喧嘩など、放浪時代の素行を挑発的に復活、ロナルドらジャックの友人たちに「バカ息子」と呼ばれる。買ってもらった50ccのバイクが、近所の酒乱の親の息子に壊され、アンジーは自分が壊した事にするが、その場面をロナルドが見ていて、4人のお披露目パーティーで暴露されてしまい、家出する。探索に出たサーニンは、ジャックが、ローリーの家を出たクリスマスの夜に自分達を助けてくれた医師だと気が付く。

Part.18 ブルーカラー

実母に会うも「鬱陶しい」という感情を抱くグレアム。ブルーカラーの瞳のマックスを突き放し始める。マックスはクレーマー家にいる時間を減らそうと街中を駆け回り、トマーズ家の犬が産んだ子犬を可愛いがるが、「行く時困るから飼えない」とお気に入りの子犬をラルフに譲る。その子犬がリッチーに強奪され蹴られているのを見て、スーパーでリッチーと乱闘すると、翌日、マックスは地域の子供たちのボスになっていた。男の子供たちとの距離に戸惑いながらも、母であろうとするパム、3人がクレーマー家に馴染んできたのを見て、グレアムはある決意をした。

Part.19 つれて行って

ミセス・シグナンはエルとそっくりな馬ラッド・ダンサーを探し出し、エルとすり替えてエルをレースに出すことを提案するが、グレアムは「自由になってください」と拒絶。しかし、サーニンに無断でエルがラッドダンサーとすり替えられ、ジャックとアンジーが出走直前で阻止する。 地域の子供達のボスのマックスは、教会バザーでの子供劇を成功させるが、リッチーと仲間がマックスのグループメンバーを脅迫してグループが瓦解し、マックスもリッチーの罠にはまりかけたところに3人が駆けつけ、乱闘の最中に、グレアムがリッチーに刺され重傷を負った。その時のグレアムの言葉にアンジーは悩む。

マックスは責任を感じて塞ぎ込むが、ジャックに今までの不満とストレスを全てブチまけ、ジャックに受け止められて落ち着く。グレアム退院後、事件は裁判となる。グレアムとアンジーは、「人殺しが暴行罪の奴とっつかまえて『この悪党め』と叫んでいる」図に複雑な思いを抱く。リッチーの弁護人フランクファーターは、「裕福な家庭の我がままな子供」対「貧乏な家庭の虐げられてきた子供」の構図に当てはめ、陪審員に「子供は本来善良なもの」と深層心理で抱いている願望を与えることで、リッチーがグレアムを刺したのは「事故だった」という論戦をはり、成功を収めつつあった。グレアムはフランファーターの弁論に酷く心を乱され、言動を皆が心配するが、リッチーとフランクファーターを罠にかけ、裁判に勝訴する。その後、雪山事件で射殺されたギイの義妹と会うために、二度と戻らない心積もりで、家を出て飛行機に乗る。グレアムが夜中にこっそり抜け出してピアノ弾きのバイトをしていたバー「トリスタン」でグレアムと仲が良かったダナも、「なにかある」と勘づいてグレアムの後を追う。その夜アンジーは、ジャックに雪山で何があったのかを問われ、グレアムと家出を考える。しかし翌日、グレアムの部屋で置手紙を見つけ、グレアムが死んでしまう、とジャックとロナルドに頼って、共にグレアムの後を追う。

グレアムは、雪山で射殺されたギイの義妹のフェル・ブラウンに会い、自分がギイを殺した事、自分に復讐しても構わない事を申し出るが、フェル・ブラウンに、「自由になって」と拒絶され、街を彷徨い、右目を覆っていた前髪を上げる。グレアムの後を追ってきたダナがグレアムを見つけ、その夜グレアムはダナと結ばれる。翌早朝、ホテルを出て車に乗るグレアムを、アンジーが見つけて後を追う。海岸で、「もう誰かのために生きたくない」というグレアムに、アンジーは雪山事件で使われた銃を発砲し、死ぬことを許さないとグレアムを脅す。ジャックとロナルドが追い付き、アンジーに銃を隠させ、グレアムの自殺は未遂に終わる。

その頃クレーマー家では、サーニンがクークーの死を知ってショックを受け、マックスがパムを気遣い留守宅を守る。 帰宅後グレアムは自室に引きこもり、アンジーは深い孤独に悩む。アルフィーが事故で亡くなり、アンジーは、将来ジャックの後を継いで医者になる事を決める。グレアムの元に、クークーの後見人だった牧師が会いに来たが、グレアムの言葉に腹を立てて殴ろうとしたはずみに、窓から落ちて重症を負う。グレアムはフランクファーターは嫌だと叫び、ジャックはグレアムの言葉を受け止め、グレアムを諭して、自宅に帰す。その夜グレアムはサーニンに、クークーが亡くなる前に「Oh, the cuckoo(クークー)」というフレーズで始まる曲を追って病院を抜け出した話をし、サーニンは、クークーが自分に向かって駆けだしたと納得する。サーニンに左手を預けて眠った翌日、グレアムはトリスタンで、ジャックに、自分が4年前にフェル・ブラウンの義兄を射殺したと告白する。

ロングアゴ―

ロングアゴーは、『はみだしっ子』シリーズでグレアムらを養子として引き取ったジャック・クレーマーと「オブザーバー」ロナルド・グレンマイヤーの少年時代から家庭を築くまでの時間をロナルドの視点から描いた作品。

ロナルド・グレンマイヤーは、処世術に長け気に食わない奴を試験の点数で見返すのが趣味の子供。11歳で2級上に飛び級し、体の大きな級友にいじめられないよう庇護者を求めて、ジャックの友達になる。ジャックは、「人は信用されるべき」信念で、誰相手にもやり合い、その怒りにロナルドは惹かれる。ジャックは家族と折り合いが悪く、家庭教師に誘拐された過去があった。 やがてジャックは医学部に入学して家から勘当され、ロナルドも医学部に入学。卒業後、ロナルドはレティシアと結婚。家に来ていた彼女の友人パムをジャックに紹介し、ジャックとパムも結婚、ほどなくパムが妊娠する。ところが、バス事故に遭遇したジャックの友人の子供が、ジャックが勤務する病院に運ばれたもののトリアージで手術を受けられずに亡くなり、その事を逆恨みした友人が、パムを脚立から突き落としてパムは流産、将来も子供が産めなくなる。 後日ジャックが、「いずれ養子をもらおうと思っている。けれど悲しい雰囲気な子はいらない。」と話すのを聞いて、ロナルドは、「両親に死なれるか徹底的に嫌われるかしながら開き直っている小さな子だなんて、オレは見たくもない。一筋縄で行く訳がない。」とあきれるが、あまりにジャックらしいので協力を申し出る。やがて月日がたち、ジャックは4人の子供を養子に引き取り、ロナルドは約束通り協力するが、次男坊に懐かれてとても憂鬱な気分。しかも古い友人たちは、あの次男坊の、なんでもジャックのせいにし、生意気でひねくれていて、人のする事に神経質で自分のする事に無神経なところなど、誰かの事を思い出す・・と、ロナルドの方を見る。

作品の補足

文学や書籍からの引用

作品中には多くの文学や書籍からの引用や、発想を得た表現がある。はみだしっ子語録[2]に紹介されている一部は、次の通りである。

  • 「相手の考えていることがわからないって事は、相手が人間でもネズミでも同じだろ!一万人入れる劇場にネズミを座らせてごらん!・・中略・・頭数分いろんな考え方がそこにあるのさ!」[3] で、一万という数の実感を沸かせるために、劇場をひきあいに出すのは、カミュの「ペスト」からの発想
  • 「わかってはいるのだけれど・・・。自分を軽蔑するその重みは、密に抱いていた高慢さの・・・その重みと同じだと。」[4]は「自己を軽蔑する人間は高慢な人間にもっとも近い」スピノーザの言葉及びそれを解説したロロ・メイ『失われし自我を求めて』から
  • 「花が咲くよ、死骸を食ってね!」[4]は、梶井基次郎『桜の樹の下には』がベース
  • 「世界って、どうして・・・・、こんなにきれいなんだろう!」[4]ヴィクトル・フランクル『夜と霧』より
  • 「知っていると・・・窓の向こうの奴を知っていると・・・。奴は幸福そうに笑っているのだろうと思い込んで。笑顔があると思い込んで・・。泣き顔だとは思わなくて。いやなんだよ・・ボクは窓の中、自分が何者かも知らず、窓の外を思い込んでしまうのは、嫌なんだよ。」[5]の言葉のもととなるエピソードは、キーピング『窓の向こう』より
  • 「家ってのは、お前が行くことができ、人々がお前を受け入れざるをえないところなのだ」ってな [6]は、ロバート・B。パーカー『約束の地』より
  • 「どこへ行こう、どこまで行こう。日ごとボク達は繰り返し・・。どこへ?もう行かないのだ・・と心で知る日まで。心で知る日まで。」[7]の「心で知る」という言葉は、スチュアート・オルソップ『最後のコラム』から
  • 「つまりねパム!神様は喜劇がお好き!ご自身がお楽しみになるために、我々にこっけいなマネをさせてくださる。ならば!オレたちも笑わなきゃ損じゃない! 」[7]は、ポール・ギャリコ『愛のサーカス』の中の言葉からの発想 
  • 「著者の他の作品からの引用で、『笑うのも泣くのもほかにどうしようもない時、人間がやる事だ』って・・・”この人もそんな時笑ったのかじゃ”って」[8]の著者とは、カート・ヴォネガットJr.の事
  • 「鳩同士のけんかは残虐だってサ!相手の羽をむしって丸坊主にし、皮をひんむいて赤裸・・・それでもなおつつきまわすんだってサ!一撃でけりをつけるほどの鋭いくちばしも爪も、強い羽根も持たない平和さで、持たないために、なぶり殺しにするんだってサ。」「じりじりとなぶり殺しね!実に”平和”に似合った光景だと思うよ!うん!」[8] の鳩のけんかに関する資料は、コンラート・ローレンツ『ソロモンの指輪』が元

また、ハイネの詩篇の引用[9]をはじめ、他にも、河合隼雄+谷川俊太郎『魂にメスはいらない ユング心理学講義』[8]」ウェルナー・マーザー『ニュルンベルグ裁判: ナチス戦犯はいかにして裁かれたか』[8]、等東西多くの書籍からの引用も多い。[10]

音楽の引用

作品中に描かれる音楽には作者の趣味が随所に反映され、実在の作品名や歌詞がものが多く登場し、登場人物がそれらを聴き、歌う。 例えば番外編「音楽教室」では、アンジーがサーニンに出会った頃歌いかけた歌は、ローリング・ストーンズの『レディー・ジェーン 』 アンジーに応えてサーニンが歌う歌は、ローリング・ストーンズの『サティスファクション』 更にサーニンに応えてアンジーが歌う歌は、ジョーン・バエズの『ジョー・ヒル』 アンジーとサーニンが森で合唱する歌は、怪物くんの主題歌『おれは怪物くんだ』 アンジーがサーニンに「音痴だなぁ」と言った後に気持ち良さそうに口ずさむ歌は、世良公則&ツイストの『宿無し』 サーニンの歌わない決心は、 ピーター・ポール&マリーの『悲惨な戦争沢田研二の『ダーリング』 アリスの『もう二度と』 民謡の『ずいずいずっころばし』 ローリング・ストーンズの『黒くぬれ』 サーニンが音痴じゃないことをグレアムが確かめるのに使う音楽は、 ジョーン・バエズの『フォーチュン』、『ポートランド・タウン』 サーニンが音痴じゃないとわかって歌う歌は、ボブ・ディランの『風に吹かれて』 マックスがサーニンに歌いかける歌は、ジョーン・バエズの『ドナドナ』『思い出のグリーングラス 』 といった具合である。 他にも、Part2 動物園のオリの中では、Mungo Jerry の『 レディーローズ』、Part7夢をごらんでは、『クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル』、 (CCR)の 『Someday Never Comes

Part19連れて行ってでは、サリーがグレアムにリクエストをするのが、ティファニーで朝食をの主題歌『ムーンリバー』『テネシー・ワルツ』、アンジーが望んだのは、レッド・ツェッペリンの『ホットドック』、公園で鳩の残酷さの話をする手前で出てきたのは、テリー・ジャックスの『そよ風のバラード』ダナがリクエストすると言っていたのは、キース・エマーソンふうのナット・クラッカー(エマーソン・レイク・アンド・パーマーの『ナット・ロッカー』の原曲のチャイコフスキーの『くるみ割り人形』(ナット・クラッカー)の行進曲。グレアムが病室でアレンジを考えていたのはファリャ火祭りの踊り、それに対してアンジーが違うのかと聞いたのは、ハチャトゥリアン剣の舞い。アンジーが家でグレアムにリクエストをしたのは、ジミー・デイヴィスの『ユー・アー・マイ・サンシャイン』グレアムがトリスタンで裁判後トリスタンで歌った曲は、 エルトン・ジョンの『ベイビーと僕のためのブルース』グレアムがアンジーに借りていたレコードは、Edith Piafグレアムとダナのベッドシーンは、ポール・サイモンの『ダンカンの歌 』ラスト近くで出てくるクークーが追いかけた歌は、ピーター・ポール&マリーThe Cuckooが使われている。

また、本編のサブタイトルも、当時人気があった英米ミュージシャンの曲名にちなんだものがあり、 Part19「つれて行って」は、「ザ・キャッツ」の曲 『つれて行って』、 番外編のオクトパスガーデンは、「ビートルズ」の曲『オクトパス・ガーデン』である。

『カッコーの鳴く森』の原型であった『もうひとつの時』と『カッコーの鳴く森』の主な相違点

以下では『LOST AND FOUND 三原順秘蔵作品集』に収録されている、『カッコーの鳴く森』の原型であった『もうひとつの時』[11]と『カッコーの鳴く森』の主な相違点を比較する。『もうひとつの時』を『時』と『カッコーの鳴く森』を『森』と略記する。

  • 自閉症の女の子の本名:『時』ではエレーヌ、『森』ではマーシア
  • 物語の冒頭、『時』ではバーの地下室に下宿、『森』では雑貨店の住み込みバイト
  • 『森』ではキャンプが教会主催であることは申し込んだ後に発覚(グレアムだけは気づいていた)が、『時』では申し込み前に全員が認識
  • 『森』では4人は最初ミセス・バートンなどに歓迎されたが、『時』では最初から全員に拒絶される雰囲気
  • 『森』ではサーニンが触れただけでマーシアが悲鳴を上げたが、『時』では触れただけでは無反応でタオルケットを頭から被せたら悲鳴を上げた
  • 『森』ではサーニンが恋心を抱いたことは3人に告白していないが、『時』ではサーニンがお風呂に入るエピソードの前に相手まで3人に告白している
  • 『時』ではサーニンとエレーヌの密会を3人全員が協力してバックアップするが、『森』で明確に協力しているのはマックスのみ(グレアムは裏で調査をするなど協力、アンジーは最後まで反対)
  • 『森』にあったサーニンがマーシアの耳を押えてあげてマーシアが一人で食事ができるエピソードが『時』ではない
  • 『森』では4人のほかの少年たちは、サーニンが溺れかけたときマーシアに彼の名を呼ばせるよう牧師に意見するなど4人に好意的であったが、『時』では「ミイラとりがミイラになった!!」と囃し立てるなど悪意を見せ付けている
  • 『森』ではサーニンを追って泳いでくるのはグレアム、『時』ではアンジー
  • 『森』ではマーシアは最後にサーニンに笑い顔を返すが、『時』ではエレーヌは牧師の洗脳によってサーニンを恐れ避けるようになっていた

出典

  1. ^ ヤマダトモコ『総特集 三原順』三原順は、いつ「少女マンガ界のはみだしっ子」になったのか76頁 、河出書房新社 2015年4月 ISBN 978-4-309-27579-6
  2. ^ 三原順『はみだしっ子語録』白泉社 1981年6月 ISBN 978-0276770005
  3. ^ 「はみだしっ子 Part2 動物園のオリの中」
  4. ^ a b c 「はみだしっ子 Part10 山の上に吹く風は」
  5. ^ 「はみだしっ子 Part13 窓のとおく」
  6. ^ 「はみだしっ子 Part17 クリスマスローズの咲くころ」
  7. ^ a b 「はみだしっ子 Part18 ブルーカラー」
  8. ^ a b c d 「はみだしっ子 Part19 連れて行って
  9. ^ 「はみだしっ子 Part14 バイバイ行進曲」
  10. ^ 立野昧『総特集 三原順』三原順さんの愛読書 85頁 、河出書房新社 2015年4月 ISBN 978-4-309-27579-6
  11. ^ 三原順『LOST AND FOUND 三原順秘蔵作品集』もうひとつの時 主婦と生活社 2003年1月 ISBN 978-4835440460



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