おもな佐治谷ばなし
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/10/21 17:08 UTC 版)
昔々、佐治谷のだらず(鳥取弁で「ばか」という意味)が嫁さんの里に呼ばれることになった。母親が心配して「あんねの方(あちらの家)ではカニがごっつぉ(ごちそう)に出てくるけぇ、ふんどし(この場合はカニの腹節のこと)を取って食べんと笑われっど」と教えてやった。嫁さんの里に行った男が膳を見ると、案の定カニが乗っている。「こりゃァふんどしを取らんといけんわい」と男が帯をほどいてふんどしを脱ぎ始めたので、里の家では大笑いをしたということだ。 昔々、佐治谷のだらずが村の正月寄り合いに出たところ、ごちそうにくじら汁が出てきた。男は汁鍋の上に浮いている脂をたらふく食べ、家に戻って母親に「くじら汁ちゅううまいもんを食うたが、くじらは脂になって溶けとったわいや」と話した。母親は「くじら肉は汁の鍋底に沈むだけぇ、鍋底からすくって食わないけんだがな」と教えてやった。男は「脂だけでもあんげにうまかったのに惜しいことをした。こんどは鍋底すくって食ったろう」と考えた。次の年も正月寄り合いに出ると、今度は豆腐汁が出てきた。男は鍋底の方を食わにゃ損だと思って、底の方の汁ばっかり腹一杯食べてきてしまった。 昔々、佐治谷の男が町にカラスを売りに出た。男は「町のものはいつもわしらをばかにするけぇ、ここは一つ町のもんらを騙したろう」と思い、袋いっぱいにカラスを詰めたのを背中に負い、腰にはキジをぶら下げた。そして大声で「カラスはいらんかぁ、カラスはいらんかぁ」と町中ふれ歩いた。町の者たちは男が腰に下げたキジを見て「佐治谷のだらずがキジをカラスとまちがえて売りょるわい。キジを安ぅに買うてやりましょう」と思って、「背中にいっぱい背負っているカラスをつかぁさい」と言ったところ、男は「なんぼでも買うてやってつかんせぇ」と本物のカラスを出して売ってやった。町のものらは「カラスをくれ」と言ってしまったものだから今更いらないとも言えず、佐治谷の者にうまいこと騙されて食べられもしないカラスを買ったということだ。
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