V1飛行爆弾 エピソード

V1飛行爆弾

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/18 22:18 UTC 版)

エピソード

1944年6月17日、ヒトラーは連合軍のノルマンディー上陸後の戦況について協議するため北フランスのスワンソン近郊でロンメル元帥らと会談した。会談が終わり将軍達が帰った頃、イギリスに向けて発射されたV-1の1機がイギリス沿岸でUターンしてフランス上空に飛来し、ヒトラーのいた総統専用地下壕のすぐ近くに落下して爆発した[5]

V1(Fi-103)の派生型

有人型Fi-103
  • Fi-103R ライヒェンベルク(Reichenberg)

1944年3月から、連合国軍の大陸反攻上陸作戦に備え対抗するために開発された、対艦攻撃用の有人型Fi-103である。Fi-103RのRはReichenberg(ライヒェンベルク)の頭文字で、コードネーム。設計はDFS(ドイツ滑空機研究所)でわずか2週間で行われ、Fi-103に操縦席が付けられた。生産ラインはダンネンベルクに設けられた。テストパイロットにハンナ・ライチュが参加していたことは有名なエピソードである。

建前では、He111などの発射母機から空中発進した後、人間が誘導して着弾寸前に脱出することとしていた。しかし、操縦席後方にパルス・ジェット・エンジンがあることや、狭いコクピット等を勘案すると、実際には脱出は極めて困難であったと考えられている。 こうした点は、日本軍桜花と非常に酷似しており、いわゆる特攻兵器の一つに挙げることができるだろう。

しかし、結果として実戦で使用されることはなかった。計画としては、第200爆撃航空団(KG 200)第5飛行中隊、通称レオニダス飛行中隊(1944年4月創設)によって運用される予定だったものの、これを人命と資源の浪費と考える第200爆撃航空団司令ヴェルナー・バウムバッハ大佐などのサボタージュにより実戦投入されずに終わった。 また、既に6月に連合軍がノルマンディーに上陸してしまったという戦況や、パイロットの養成・訓練にも大量のガソリンを消費するといったコスト面での懸念、さらにミステルが実用化されたことなどから、もはやライヒェンベルク計画を続行するメリットはなく、中止された。

Re(Reichenberg)-IからIVまでのバリエーションがある。1944年10月までに、約175機が完成。

Re-I: 単座訓練型。無動力。着陸スキッドを装備している。

Re-II: 機首に教官席を設けた複座訓練型。無動力。着陸スキッドを装備している。

Re-III: 単座訓練型。パルスジェットエンジン搭載。着陸スキッドを装備している。

Re-IV: 機首に炸薬を積んだ本命の実戦型。

V-1とJB-2

連合軍は不発のV-1を入手、アメリカによって生産方式と制御システムを変更されてコピーされた。
このアメリカ版V-1はJB-2 ルーンと名付けられた。パルス・ジェット・エンジン(PJ31F1)をフォード・モータースで、機体はリパブリック社とウィリス・オーバーランド社、コントロール・システムはラジオ社、ジャック・アンド・ハインツ社で製作された。
1944年10月にフロリダ州エグリンで発射テストが成功、1945年1月には実戦配備が可能となった。
日本への攻撃用に1,000発が完成(PJ31F1エンジンは2,400基が完成)していたが、終戦により実戦で使われることはなかった。 現在アメリカの博物館に展示してあるV-1とされるものは、実は多くがJB-2である。


  1. ^ Cockchafer guide: how to identify and where to see 著:BBC Wildlife Magazine(Stuart Blackman, Richard Jones) 掲載サイト:discoverwildlife.com 参照日:2021年10月4日
  2. ^ カーユス・ベッカー 著、松谷健二 訳『攻撃高度4000―ドイツ空軍戦闘記録』フジ出版、1974年。 
  3. ^ パウル・カレル 著、松谷健二 訳『彼らは来た―ノルマンディー上陸作戦』フジ出版。 
  4. ^ a b c Steven J. Zaloga (2003-08-20). V-2 Ballistic Missile 1942-52. Osprey Publishing. p. 37-38. ISBN 9781841765419 
  5. ^ ライフ ヨーロッパ第2戦線 P.193
  6. ^ 一色次郎『日本空襲記』文和書房 1972年 pp.40-41






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