EAT-MAN 作品背景

EAT-MAN

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/22 02:18 UTC 版)

作品背景

『ローンナイト』連載終了後、連載の機会を得られずにいた吉富は、一度思い切って他社誌に活躍の場を移そうと考え、講談社の『アフタヌーン』への持ち込み用として本作の読み切り版のネームを制作した。ところが、アフタヌーンは原稿での持ち込みでしか認めていなかったため、まずは『月刊電撃コミックガオ!』へネームを持ち込む。その時はボツだったものの、後から認められて読み切り版が掲載される。 そして、読み切り版の時とは別の編集者が連載に向いているからと吉富に勧めたことにより、連載へとつながる[1]

ボルト・クランクの描写

「EAT-MAN」というタイトルは、ネジや金属片といった無生物を食べ、体内で再構成して右の掌からある程度任意の形で排出するというボルトの特殊な能力に由来する。なお、再生したものを排出する際は必ずしも右の掌である必要はないらしく、腹部から排出したり、口の中から排出した(勝手に出てきた)こともある。

排出の際には、質量保存の法則を完全に無視して自分自身の体よりも巨大なものを出すことも可能であり、食べる前に壊れていたものでも、ボルトの中を通ると修復することも可能である。

ただし無制限に物品を再生できるわけではなく、食べていないものは構成できないようで、また一度出してしまったものは、再び食べない限りは掌から出すことはできない。作中ではしばしばこの制約(食べること)が物語の主要な展開に使われる。

作中において彼の出自は全くの謎で、当人ですら語らない部分であるが、受けた依頼は必ず遂行する、信頼できる男である。また一切年をとらず、長い時間の中で不変の姿をしているが、不死ではないとされている。

漫画版とEAT-MANアニメ版('98を除く)ではかなり性格が違い、前者では時折見せる眼差しは悲しそうな眼であり、理不尽な依頼をする依頼人を契約に則る形で裏切ったり、たとえ敵対者であろうともその本質が善良であるならば、契約に則る形で見逃してやったりと、かなり優しい性格である。吉富昭仁のもう一つの代表作である「RAY」にゲストとして登場したことがある。一方、後者であるアニメ版では時折見せる眼差しは薄い紫色をした爬虫類のような冷たい眼で、理不尽な依頼であろうとも必ず遂行し、場合によっては殺しを行ったりと、ある意味では冷酷な完璧主義者である。また、いきなり奇声を上げたり、不気味に笑ったりするなど、かなりの奇行が多い。

原作での描写

出自については断片的であるが、原作中で明かされている。特に、最終巻(Vol.19)ではボルトがいったい何者で、どういった存在なのかについて描かれており、彼自身がデウス・エクス・マキナのような絶対の存在として世界を作り、物語を回していた可能性が示されている。ただ、各々の話では、彼自身は前述した特殊な能力を除けば、多少身体能力が超人的な程度の、人間的な存在(怪我をすれば血を流しもする)として描かれている。また、彼と似たような経験をしてきたことを匂わせる、レオンという人物も存在する。

「ボルト・クランク」という名前について、作者サイドでは単行本中にて「ボルトを食べるから、ボルトでいいんじゃない」と決めたと述べている。劇中では「ボルト・クランク」は偽名であり、作者と同じ理由からとある人物が名付けたあだ名のようなものを、彼が名乗り続けているだけに過ぎない(付けられた際には「センスが無い」と評している)。なお作中では、ファーストネームとラストネームは別々の命名者となっている。本名は不明だが、そのあだ名のファーストネーム側をつけた人物は知っている様子が伺える。ただし、前述の通り彼が世界を作り、それを繰り返しているような描写があるため、その「本名」ですら本当の名前で無い可能性もある。

ボルトのトレードマークともいえる、熱かろうが寒かろうが必ず着用しているコートや帽子などのセットは、「ボルト」という名をつけた人物(とその関係者)の遺品である。なお、そのコートを着用し始める前は黒っぽいスーツを着用していた模様。また、「冒険屋」という職の名前をつけたのもその人物であり、その始祖となったのはボルト自身である。

真顔や口角を上げる程度の笑顔こそよく見せるものの、基本的にそれ以外の表情は見せないため、必要なことすら言わない性格と相まって、よく色々な人からの誤解を招いている。

一般の人間が摂取するような食事を摂取することはなく、他の人物と共通して摂取する描写があるのは酒類だけである。

原作版準レギュラー

ゲストキャラクターは、圧倒的に女性が多い。

リベット
電撃を自在に操る若い女性冒険屋。姉のエレナも同様に電撃を自在に操り、これが元で事件に巻き込まれていた。家族思いで、姉が好意を寄せるボルトに関心を抱いている。初登場は2巻。
ハード・ウルフスター
通称ハード。かつてはある企業の専属だった男性冒険屋。腕はいいが、宣伝用に仕立て上げられた操り人形であったため、その地位から脱却したいと願っていた。ボルトと出会い、ボルトの「真の冒険屋」たる生き様を目指すようになる。優秀ではあるが敵対者を排除しきれなかったり、依頼の裏が読み切れなかったりするなど甘さが残る。かつてはギタリストをしており、レコードも出している。兄にドイルがいる。初登場は4巻。
ドリー・フレミング
若い女性新聞記者で、父親(実は義父)は世界一の新聞屋と呼ばれた人物。当初は子供のころに出会った不思議な人物としてボルトに興味を抱いていたものの、いつしかそれは恋愛感情めいたものとなっていた。実はステラが自らの記憶をインプットした女性で、実験のせいで老化しないボルト同様の身体になってしまっていたことが後に明かされる。初登場は5巻。
オリヴィエ
若い女性ハッカーで腕は超一流。頭に増設されたマシンに直接プラグをジャックしてハッキングする。軍を出し抜くなどその有能さは生まれ持っての才能らしい。奔放明朗な性格で、ボルトのコンピュータがらみの仕事を手伝ったりもしている。初登場は10巻。
マックス
若い一流の女性冒険屋で巨大なバルカン砲を軽々と操る。元々は自身の身体で色仕掛けをするなどプロの冒険屋であった。しかし後に出会ったイーサンを意識するようになり、少女っぽいやきもちを焼くなど、隙ができるようになってしまったものの、素直ではないだけで満更でもない様子。初登場は10巻。
イーサン
新人の若い男性冒険屋。ルーキーであるため甘さや隙が目立ち、プロとは言えない。熱血な性格で、ストーリーを通して成長するが、まだまだルーキーの域を脱し切れていない。マックスを仕事上のパートナーとして以前に、一人の女性として意識している。初登場は13巻。
ドイル・ウルフスター
通称ドイル。とても美人な、ハードの。一流の男性冒険屋だが、常に女装している。甘さが残る弟とは違い、敵対者は確実に始末するなど、真のプロである。初登場は14巻。
ロバート
中年の男性冒険屋で妻子持ち。頭頂部が禿げ上がった、小太りで眼鏡の一見するとさえないオヤジだが、実は驚異的な身体能力の持ち主で、「スライガー」というヒーローのコスチュームに着替えて変身(変装?)し、格好に恥じない超人的な俊敏さと豪腕で敵を打ちのめす。近年ではすっかり太ってしまった(120kgもある)が、ヒーローとしての美学を持ち、決めゼリフを発するなどしている。地元ではヒーローとして人気があり、それに目をつけた悪党に美貌の妻をさらわれたのをきっかけに冒険屋を廃業していた。妻に焚き付けられダイエットのために冒険屋を再開するも、成果はほとんど見られない(チャック曰く「お前の脂肪は筋肉になっちまった」)。娘も(普通の)冒険屋になった。初登場は13巻。
チャック
普段は宿屋の主人の、自称「楽しけりゃなんでもいい屋」。ボルトと背格好が似ているため、何度か彼の格好をして代役をつとめたことがある。チャラチャラしたお気楽な性格だが、女ったらしではなく探査機のコアとなり肉体を失ってしまった恋人だけを愛し続ける一途で純粋な性格。人がいるかいないかを聞かれるたび、必ず「いらん!」と答える。初登場は16巻。
テロメア
ボルトの能力に似た、何でも食べ再生させることができる機械の蛇。自らが仕上げた舞台でボルトに自身のパーツを食べさせ、再生した上でボルトに取り付いていた(ボルトの意思とは関係なく身体のどこかから勝手に出現する)。大きさを自由に変更でき、普段は腕ぐらいの姿であるが巨大化すると大柄なボルトをも一飲みにできるほどの大きさになる。機械の部品丸出しで蛇のような形状をしており、女性のシャワーをよく覗くため、エロ蛇などと呼ばれることも。陽気な気分屋だが、自身の存在意義である「ボルトにステラの抹殺を遂行させること」に関しては非常に口うるさい。初登場は10巻。
シャドウ
天然のエスパー。レオンを名乗って殺人をするなど、ステラに関する様々なことでボルトと関わってくる。ステラやレオンのことを知っていたにもかかわらずステラを愛し、ステラのために行動していたが、人造のエスパーであるミーナと出会い、彼女を愛し始める。後にミーナとの間に一女をもうけたが、生後すぐ事情で離れ離れになってしまい、その1年の間に娘は人を治癒できる特殊な力を発現させ、大人になってしまっていた。初登場は4巻。
ステラ
ボルトを「レオン」と呼ぶアンドロイド。元々はレオンを愛し、彼に愛されるためだけにレオンに作られた愛玩用アンドロイドだが、自身が機械の体のまま、周囲が人間のままではその目的を達成できないと思い込み、狂って暴走。自分が人間になり、世界中の人々を機械に変えるため、世界のあちこちで暗躍していたが、計画はボルトに阻止され、最後は自我が崩壊して滅びた。初登場は5巻。
レオン・フィールド
ボルトに瓜二つで同じような能力(金属を食べて手から再生)する力を持つ。孤独に永遠に生き続けることに疲れステラを作ったが、そのステラが人間になろうとして暴走したためにボルトにステラの破壊を依頼して姿を消す。ある事情からテロメアの身体に自らを隠し、機械の体を得て再生した。名前は3巻より登場するが、彼が物語で実際に登場するのは12巻の数パートだけである。
死神
19巻から最終回までボルトを付け狙う少年。ボルトの存在を生命の掟に対する反逆として、あらゆる手段を使って彼を殺そうとする。最期はボルトに彼が作ろうとしていた「新世界」の一部として生きるように説得され、かつて自分が何度も同じことを繰り返してきたことを悟りながら喰われた。
謎の女性
19巻から最終回まで登場し続ける女性。ボルトの友人を自称しており、ボルトに「光」や「命」などの「新世界」の要素を与え、「新世界」創造の手助けをしている。物語の舞台となっている世界に来る前からボルトとの付き合いがあったようである。優しい性格をしており、ボルトの身を案じるシーンが多い。

注釈

  1. ^ ボイスアニメージュ』vol.16では所属をアーツビジョンとしている[2]小林さやか劇団青年座所属)。

出典

  1. ^ 第26回 吉富昭仁先生インタビュー【EAT‐MAN/地球の放課後/etc……】”. p. 1. 2013年5月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年7月6日閲覧。
  2. ^ 責任編集:原口正宏「ボイスパーフェクトデータ」『ロマンアルバム ボイスアニメージュ』vol.16、徳間書店、1997年11月1日、141頁。 
  3. ^ 「EAT-MAN」と「EAT-MAN’98」の2作品を収録のBlu-ray BOX 11月6日発売決定”. アニメ!アニメ!. 2021年10月16日閲覧。


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