里山 入会地

里山

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/04 15:41 UTC 版)

入会地

近世では「村中入会」「村々入会」「他村持地入会」など、様々な形態の入会が存在した。「村中入会」は、特定の村の中に入会地があり、その村の住人のみが入会地を利用できるという形態である。「村々入会」は、複数の村が入会地に接しており、入会地に接する村の住人のみが入会地を利用できる形態である。また、「他村持地入会」は、ある村の住人が自村に接していない入会地を利用できる形態である。この場合、入会地を持つ村に入会料として現銀が払われることになる。入会権を持つ者は入会地の毛上(けじょう)を利用できる。なお、毛上とは動植物のことである。

こうした入会地としての里山は、明治維新とともに大きく変化することになる。明治政府の地租改正作業の中で、入会地が入会権を持つ諸個人の私有地に分割され、入会地としての機能を失うこともあった。また、入会地であることの証明がなければ官有地とするという明治政府の政策により、多くの入会地としての里山が官有地として収用されたと考えられている。この時、明治政府は明確な書証あるいは口碑がある場合にのみ、入会地を官有地にしないという方針を採ったが、書証がない入会地については、入会地に隣接する村から公式な証言が得られた場合に入会地として認めるという方法を採用した。ところが、こうした村の中には、かつて山論で敗れて入会地から排除された村もあり、かつての遺恨から執拗に入会地としての証明を拒んだり妨害する事例も見られた[20]

また、民俗学者宮本常一は、明治期に官有地として没収された入会地を取り戻す訴訟を行うため、成人後に読み書きを学んだ大阪府河内長野市滝畑の人物の事例を報告している[21]


注釈

  1. ^ 後に木村伊兵衛賞受賞。

出典

  1. ^ 有岡利幸『里山』 1巻、法政大学出版局〈ものと人間の文化史〉、2004年3月、1-2頁。ISBN 4588211811 
  2. ^ 佐々木高明 『日本文化の多様性』 小学館、2009年、126-127頁。なお、「ウチヤマ」は焼畑を行う土地や薪炭林、畑など。「オクヤマ」は材木を調達したり狩猟をしたりする山林で、「ダケ」は最も標高が高い部分で原生林となっている。
  3. ^ 四手井綱英 『森林はモリやハヤシではない―私の森林論』 ナカニシヤ出版、2006年、3章。ここで四手井は上述の近世の「里山」の用例に言及しつつ、日本列島の農用林を「里山」と名付けた経緯について語っている。
  4. ^ Photologue - 飯沢耕太郎の写真談話(26) 知的好奇心をくすぐる自然写真(4)”. マイナビニュース. 2019年4月26日閲覧。
  5. ^ 佐藤洋一郎、石川隆二『〈三内丸山遺跡〉植物の世界-DNA考古学の視点から-』裳華房〈ポピュラー・サイエンス〉、2004年。ISBN 4785387653 [要ページ番号]
  6. ^ Jared Diamond, "Collapse: How Societies choose to fail or succeed", Penguin Books, 2005, pp297-298.
  7. ^ Ibid, p298.[要文献特定詳細情報]
  8. ^ 別項「はげ山」に「1894年」という記述がある。
  9. ^ 太田猛彦『森林飽和』NHK出版〈NHKブックス〉、2012年、161-163頁。 
  10. ^ 有岡 2004b, pp. 67–98.
  11. ^ 穂別高齢者の語りを聞く会『穂別高齢者の語り聞き史(昭和編)大地を踏みしめて 下 冨内駅・物流拠点としての役割』穂別高齢者の語りを聞く会、2014年、213頁。 
  12. ^ 若林幹夫『郊外の社会学』筑摩書房、2007年。ISBN 9784480063502 [要ページ番号]
  13. ^ 有岡、前掲書、113-166ページ[要文献特定詳細情報]
  14. ^ 有岡、前掲書、180-184ページ[要文献特定詳細情報]
  15. ^ 内山節『「里」という思想』新潮社、2005年。ISBN 4106035545 [要ページ番号]
  16. ^ 野本寛一『生態と民俗』講談社〈講談社学術文庫〉、2008年5月、299-301頁。ISBN 9784061598737 
  17. ^ 有岡、前掲書、170-173ページ[要文献特定詳細情報]
  18. ^ 有岡、前掲書、192-230ページ[要文献特定詳細情報]
  19. ^ 市街地山林への相続税---高過ぎる評価額と物納の可能性”. バードレポート. 2019年4月26日閲覧。
  20. ^ 有岡、前掲書、35-58ページ[要文献特定詳細情報]
  21. ^ 宮本常一「世間師(二)」『忘れられた日本人』岩波書店〈岩波文庫〉、1984年。 
  22. ^ 有岡 2004b, pp. 1–5.
  23. ^ 有岡、前掲書、1ページ[要文献特定詳細情報]


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