追憶の夜想曲 あらすじ

追憶の夜想曲

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/13 07:57 UTC 版)

あらすじ

左脇腹を刺されて生死の境をさまよったものの、3か月後、弁護士の御子柴礼司は無事に職場復帰を果たした。事件を担当した老獪な刑事が気をきかせたのか御子柴の過去は一切伏せられたままで表沙汰にならなかったためである。御子柴は自分への懲戒請求をおさめ、死体遺棄の件についても「物的証拠は何一つない」ということをしらしめて起訴させなかった谷崎完吾の元に顔を出した後、懲戒請求を出した張本人である宝来兼人のオフィスへと向かう。御子柴は宝来の事務所が今まで行ってきた日弁連規定に抵触するばかりか非弁行為にも当たると思われる業務の数々と証拠を持参し、公にしてほしくなければ昨日控訴手続きをしたばかりの津田伸吾殺害事件の弁護を自分と代われという要求を突き付ける。

津田伸吾殺害事件……平凡なただの主婦である津田亜希子が、「他の男性と一緒になりたかったから」という身勝手な動機で夫である伸吾をカッターナイフで殺害。犯行を認めているうえに先日東京地裁で行われた裁判員裁判によって懲役16年の判決が下されたばかりの事件。多少減刑させられたとしても名を挙げられるようなものでも高額な報酬が望めるようなものでも無い。御子柴の真意を測りかね訝しく思いながらも、宝来は要求をのみ、今までの公判記録全てを渡す。

担当弁護士が御子柴に変わったことは、裁判で対峙する検察官・岬恭平の耳にも入る。なぜ御子柴がこの事件に固執するのか疑問に思った岬は、亜希子取り調べの様子を記録した録画映像を確認するが、何度見ても検察側の主張に瑕疵は見当たらない。控訴審の裁判長である三条護の元を訪れ探りを入れるも、やはり御子柴の真意はわからず岬は得体の知れない不安を覚える。一方、御子柴は亜希子と面談し、亜希子の自宅にも訪れ、現場と供述調書を照らし合わせ、義父の津田要蔵や娘の津田倫子から詳しい話を聞き、着々と裁判に備えていた。

そして迎えた控訴審第一回公判。御子柴は冒頭で声高々に、被告人・津田亜希子の無罪を主張する。そしてDVの可能性から正当防衛を主張するが、亜希子が隠していた事実から、岬に簡単に覆されてしまう。亜希子にはまだ隠していることがあり、改めて訪れた津田家の様子にも違和感を感じ、それが突破口になると感じた御子柴は、亜希子の戸籍や母子手帳、そして生家など各所を飛び回る。そして第二回公判で正当防衛の成立要件のうちの急迫性の侵害を立証する。さらに最終弁論では亜希子が9歳の時にかかっていたという病院の元院長・溝端庄之助を召喚し、妹が被害者となった過去のある事件により亜希子はPTSDにかかっていること、それによって先端恐怖症の症状があったことを証言させる。御子柴は現在も亜希子がカッターナイフを握ることもできない状態であり、犯行が不可能であることを立証するが、それと同時にその原因となった事件が実は〈死体配達人〉と称された過去に御子柴自身が起こした事件であることを明るみにせざるを得ず、御子柴は法廷内の全員から指弾され、亜希子からも解任されてしまう。

マスコミが押し寄せる正面玄関を避けて弁護士会館へと向かおうとする御子柴に、要蔵は声をかけ、礼をのべる。同じく追ってきた岬は、亜希子の罪状を犯人隠避に切り替え、あらためて真犯人に正しい裁判を受けさせると意気込むが、そこで御子柴は裁判で明らかにしなかった真相を2人に告げる。


  1. ^ 『追憶の夜想曲』講談社、2013年。ISBN 978-4-06-218636-0 巻末
  2. ^ 『追憶の夜想曲』(中山 七里)”. 講談社BOOK倶楽部. 講談社. 2023年9月13日閲覧。
  3. ^ 『追憶の夜想曲』(中山 七里):講談社文庫”. 講談社BOOK倶楽部. 講談社. 2023年9月13日閲覧。
  4. ^ 中山七里. “講談社BOOK倶楽部:追憶の夜想曲(ノクターン) 著者メッセージ”. 講談社BOOK倶楽部. 2014年1月14日閲覧。
  5. ^ a b c d e f 中山七里「読者を挑発する新社会派 中山七里スペシャルインタビュー」『IN★POCKET』2013年11月号、講談社、172-191頁。 
  6. ^ a b c d e 「音楽ミステリーの名手が放つ家族と記憶、その罪の物語」『オトナファミ』2013年12月号、KADOKAWA、10頁。 
  7. ^ 2013年12月号 創作の現場 中山七里”. Honya Club.com. 2014年1月14日閲覧。
  8. ^ 南青山の一等地に立ち、全面総ガラス張りの近未来建築である地上17階のオフィスビルの14階から16階に入っている。法人登記。大阪(大槻弁護士)と福岡と北海道(八木弁護士)に支所がある。
  9. ^ 追憶の夜想曲(講談社文庫) Audible版 – 完全版”. Amazon.co.jp. 2023年9月13日閲覧。





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