貧酸素水塊
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/15 23:49 UTC 版)
被害発生の状況
貧酸素水塊中では、生物が生存できない程に溶存酸素が不足しているため、この中では多くの酸素呼吸を行う魚介類や底生生物が窒息死する。また、貧酸素水塊に含まれる硫化物も強い毒性を持っているため、これも大量死の原因となる。
要因
すでに述べたように、海底地形や潮の流れが大きく影響する。
また、生活廃水や工場廃水等の水域への流入によってもたらされる窒素やリン等の栄養塩の増加(富栄養化)は、植物プランクトンの大量発生をもたらすが、水域の水の流動性が低く海底地形が窪地等の閉鎖的な水域の場合は大量発生した植物プランクトンが海底に堆積し、結果的に貧酸素水塊の形成を促進する。
ただし、海底地形が自然な窪地であることで、貧酸素水塊が常時発生しやすく、生態系に良い影響を与えている場合もある。例えば、浜名湖北部の海底には水深10m程の窪地があり貧酸素水塊が常時発生している。この浜名湖北部の貧酸素水塊によって海底からリンが溶出することにより、都田川等の河川の豊富な栄養塩に合わさり、浜名湖北部表層で植物プランクトンが発生しやすく、主に中南部に広がる水深4m以浅の浅場に生息するアサリに豊富な餌を供給している。
多くの渦鞭毛藻のシストは無酸素条件下では発芽できない。何らかの原因で貧酸素水塊がなくなると、貝毒等の有毒渦鞭毛藻が増殖する契機に繋がると懸念されている。[要出典]
対策
脚注
- ^ Aquatic Dead Zones NASA Earth Observatory. Revised 17 July 2010. Retrieved 17 January 2010.
- ^ 牧秀明, 中村泰男, 東博紀, 国立環境研究所特別研究報告「貧酸素水塊の形成機構と生物への影響評価 に関する研究 (特別研究)」2007年から2009年度 ISSN 1341-3635, 1頁
- ^ 丸茂恵右・横田瑞郎 2012. 貧酸素水塊の形成および貧酸素の生物影響に関する文献調査.海生研研報:1–12.
- ^ “気象庁”. www.data.jma.go.jp. 2023年12月15日閲覧。
- ^ “島根県:用語集(トップ / しごと・産業 / 水産業 / 水産振興 / 島根の川と湖 / 宍道湖・中海水質情報)”. www.pref.shimane.lg.jp. 2023年12月15日閲覧。
- ^ a b 牧秀明, 中村泰男, 東博紀, 国立環境研究所特別研究報告「貧酸素水塊の形成機構と生物への影響評価 に関する研究 (特別研究)」2007年から2009年度 ISSN 1341-3635, 30頁
- ^ 牧秀明, 中村泰男, 東博紀, 国立環境研究所特別研究報告「貧酸素水塊の形成機構と生物への影響評価 に関する研究 (特別研究)」2007年から2009年度 ISSN 1341-3635, 22頁
- 1 貧酸素水塊とは
- 2 貧酸素水塊の概要
- 3 被害発生の状況
- 4 関連項目
貧酸素水塊と同じ種類の言葉
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