綿矢りさ 作品概要

綿矢りさ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/25 23:05 UTC 版)

作品概要

高校生活から突如脱落した朝子が、小学生のかずよしに誘われて風俗チャットを体験する、という内容で、綿矢の処女作品。高校2年生の冬休みを使って一気に仕上げた。最初はシャープペンシル大学ノートに書いていたが、後にワープロで仕上げた。作中に出てくる風俗チャットは綿矢の創作であり、存在を確認していたわけではない。
文藝賞選考では4人の審査員に絶賛され満場一致で受賞。第15回三島賞選評では福田和也は「話者の意識の構成、エピソードの継起の仕組みといい、きめ細かく構成されていて瑕疵がなかった」として、同じくインターネットを主題とした阿部和重ニッポニアニッポン』よりも高い評価を与えている[19]
周囲に溶け込むことが出来ない陸上部の高校1年生・初実(ハツ)と、アイドルおたくで同級生の男の子・にな川との交流を描いた作品。2002年の夏から2003年の夏にかけて書き上げた。
書き出しの部分(「さびしさは鳴る。耳が痛くなるほど高く澄んだ鈴の音で鳴り響いて、胸を締めつけるから、せめて周りには聞こえないように、私はプリントを指で千切る。細長く、細長く。紙を裂く耳障りな音は、孤独の音を消してくれる。気怠げに見せてくれたりもするしね。葉緑体? オオカナダモ? ハッ。っていうこのスタンス。」)について、芥川賞選考会で三浦哲郎は「不可解な文章」だと評した[20]が、他の9人の選考委員の支持を得て受賞となった。文学賞の批判本『文学賞メッタ斬り』を出した豊崎由美、大森望は「とてもとても、容姿に恵まれた人が書ける小説じゃない」「下手な書きかたしちゃうと、低レベルのいじめ話か、つまらない恋愛小説みたいになって閉じちゃいそうな話を、絶妙に開いたまま上手に物語を手放してる器量には舌を巻きます」と絶賛している[21]

注釈

  1. ^ 太宰治が取れなかった賞を取ったことについて沼野充義編集『やっぱり世界は文学でできている』(光文社2013年平成25年〉)で「太宰とは実力が違うのにいただきましたから、申し訳ないと言ったらおかしいけれど、そのへんは複雑ですね」と語っている。

出典

  1. ^ a b c d “芥川賞作家・綿矢りささんの父母 山田雅人さん、宏子さん/上 「小説なら買ってあげる」” (jp). Mainichi Daily News. (2018年7月4日). https://mainichi.jp/articles/20180704/ddm/013/100/004000c 2020年12月28日閲覧。 
  2. ^ 綿矢りさ サワコの朝
  3. ^ a b c d e f 日本経済新聞社・日経BP社. “作家・綿矢りささん 母は作品でも育児でも先生|エンタメ!|NIKKEI STYLE”. NIKKEI STYLE. 2020年12月28日閲覧。
  4. ^ a b c d 綿矢りさ、夫は「シーサーに似てるかな」 結婚生活を語る 〈週刊朝日〉”. AERA dot. (アエラドット) (20171224T113000+0900). 2020年12月28日閲覧。
  5. ^ a b “芥川賞作家・綿矢りささんの父母 山田雅人さん、宏子さん/下 力を信じ、意見を尊重” (jp). Mainichi Daily News. (2018年7月5日). https://mainichi.jp/articles/20180705/ddm/013/100/022000c#:~:text=%E5%B0%8F%E8%AA%AC%E3%80%8C%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%80%8D%E3%81%A7%E6%96%87%E8%8A%B8%E8%B3%9E,%E3%81%AE%E5%A7%93%E3%81%8B%E3%82%89%E6%8B%9D%E5%80%9F%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82 2020年12月28日閲覧。 
  6. ^ a b 綿矢りささん 京都市立紫野高校 高校生で作家デビュー、きっかけはネット世界の衝撃|ハイスクールラプソディー|朝日新聞EduA”. www.asahi.com. 2020年12月28日閲覧。
  7. ^ 以上読売新聞 2008年10月27日 13面
  8. ^ a b 「作家の読書道」第8回 綿矢りささん
  9. ^ 「太宰治を片端から読みながら」(『文藝春秋2004年3月号)、NHK-BS2週刊ブックレビュー2010年10月2日放送
  10. ^ 美人芥川賞作家・綿矢りさが“こじらせ系作家”に変身中? 週プレ 2013年4月19日、1ページ目
  11. ^ 資生堂「花椿」2013年11月号 穂村弘との対談にて。
  12. ^ 美人芥川賞作家・綿矢りさが“こじらせ系作家”に変身中? 週プレ 2013年4月19日、2ページ目
  13. ^ 上戸彩会いたい作者…綿矢りささん、宣伝に姿見せず
  14. ^ 綿矢りささん結婚発表 04年に歴代最年少19歳で芥川賞受賞スポニチアネックス、2014年12月30日閲覧。
  15. ^ キャリア官僚と結婚した綿矢りさ、数年前には大失恋で作家生命の危機も (2015年1月20日)”. エキサイトニュース. 2020年12月28日閲覧。
  16. ^ 【綿矢りささん】出産して余裕がないからこそ、書きたい世界がはっきりした/私の「出産」リアルストーリー”. LEE. 2020年12月28日閲覧。
  17. ^ 「人間ドラマの気配感じる」 北京在住の作家・綿矢りささんが語る中国
  18. ^ “今の北京の流行と魅力を、思いっきり書きたかった”北京滞在経験を元にコロナ禍の北京を描く痛快小説『パッキパキ北京』綿矢りさインタビュー 集英社オンライン 2023年12月9日閲覧。
  19. ^ 第15回三島由紀夫賞選評
  20. ^ exciteブックス 綿矢りさ『蹴りたい背中』徹底解剖!
  21. ^ exciteニュース 2004年3月8日






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