甲州弁
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/21 06:46 UTC 版)
音声・アクセント
全般的に共通語に近いが、母音無声化は起こらない。アクセントは中輪東京式アクセント。「山梨県」や「山梨市」などと言う場合には、共通語と同様に平板型の発音であるが、単に「山梨」と言う場合に、「ヤマナシ」と第一音にアクセントを置いて発音すると山梨市を指す。同様に「甲府」を「コウフ」、「清里」を「キヨサト」と言う。
文法
- 否定(打消)の助動詞は「…ない」ではなく、国中では「…ん」が使いられる。郡内方言では「にゃあ(ねえ)」を用いる[5]。過去否定は「…なんだ」を用いる。
- 「…ん」が甲州に飛地状分布をする理由については、もともと長野県の諏訪、松本地域にも「…ん」が分布していたが、江戸時代に中山道に沿って東から「…ない」が本地域に分布を広げたため、甲州に「…ん」が取り残されたとする見方がある。その証拠に、長野県の諏訪、松本地域では過去否定は「…なんだ」を用いる。
- 推量は「…ずら、…ら」を用いる。「ずら」は動詞・形容詞の連体形、形容動詞の語幹、体言に付く。「ら」は動詞の終止形に付く。過去の推量には「つら」を用い、用言の連用形に付く。「つら」がイ音便・撥音便の後に付く場合は「ずら」となる。従って、「泳ぐずら」は現在における推量、「泳いずら」は過去の推量である[6][7]。郡内方言では「べえ」が用いられる[5]。「ずら」の用例は滑稽本『旧観帖』など[7]。『甲斐廼手振』では「そふづらめ」として記載[7]。
- 意志・勧誘(~しよう)は「…ず」「…ざあ」を用いる。どちらも動詞の未然形に付く[7][6]。(例)「さあ、行かざあ」「話を聞かざあ」。「ず・ざあ」は国中で用いられ、郡内方言では勧誘は「べえ」を用いる[5]。「ず」は「どう書かずか」(どう書こうか)のように用いるが、「どう書かっか」のように促音化することがある[8]。
- 過去の「…た」が「…とー」となる場合がある。この特徴は奈良田方言で顕著である[9]。
- 終助詞「ちょ」が動詞の連用形に付き、禁止を表す。古語の「そ」が変化したもの[10]。(例)「あんまり無理をしちょ(あんまり無理をするな)」「そんなに飲んじょ(そんなに飲むな)」
- 禁止「ちょ」や命令表現の後に、終助詞「し」を付ける[10]。(例)「ちゃんと勉強しろし(ちゃんと勉強しなさいよ)」「へぇ泣いちょし(もう泣くのはやめようよ)」
語彙
- おばやん - おばさん。
- おまん - お前、あなた。
- いく - 何。
- (例)「いく時」(何時)、「いくしょ」(何処)、「いくゆえ」(何故)
- かじる - 掻く
- (例)「背中かじって」(背中掻いて)
- こう - 来い
- (例)「こっちぃこう」(こっちへ来い)
- こっちん - こっちが
- こぴっと - 物事がきちんと整っているさま。ちゃんと。しゃんと。しっかりと。
- (例)「こぴっとしろし」(ちゃんとしろよ)
- からかう - (時間)をかける、または(修理などを)試してみること
- (例)「パソコンの調子が悪いから、ちょっとからかってみる」
- ~じゃんけ - ~じゃないか。
- 三河弁などの「~じゃんか」に相当。
- (例)「はんで車に乗れし」
- 「いつも」「頻繁に」という意味で使うこともある。
- (例)「はんでそんなことやってるから」(いつもそんなことやってるから)
- ぼこ - 子供
- (例)「悪いぼこじゃん」
- 1 甲州弁とは
- 2 甲州弁の概要
- 3 概要
- 4 音声・アクセント
- 5 甲州弁に関連した作品など
- 6 関連図書
固有名詞の分類
- 甲州弁のページへのリンク