煙霧 煙霧の形成

煙霧

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/19 01:53 UTC 版)

煙霧の形成

ケーラー曲線の例。直径0.05, 0.1, 0.5 μmの固体球形の塩化ナトリウム粒子が過飽和度の大小に対してどの位の大きさの液滴を形成するかを示す。湿度80 %で0.05 μmの粒子は約0.25 μmの液滴、0.1 μmは約0.7 μm、0.5 μmは約5 μmにそれぞれ膨潤する。

煙霧の微粒子は、ナノメートル(nm)からマイクロメートル(μm)の大きさを中心とする大気エアロゾル粒子である。

煙霧を構成する微粒子の大きさは主に0.1μmを下回るオーダーである。これはの波長よりも小さく、レイリー散乱を引き起こすため、背景の明るさに応じて煙霧は赤みを帯びたり青みを帯びたりする[17]

微粒子が吸湿性の場合、湿度が100%以下の環境でも、粒子が水蒸気を吸収して微小な液滴を形成する(潮解)。特に、硫酸塩や硝酸塩などの化学物質の微粒子では、純水に比べて飽和水蒸気圧が小さいため、容易に液滴を形成する。液滴と相対湿度の関係はラウールの法則ケルビン方程式を組み合わせたケーラーの式で表され、元となる化学物質により固有の値をとる。そのグラフはケーラー曲線(参考:ケーラー理論英語版)と呼ばれている[18]

ケーラー曲線において、大気中に見られる吸湿性粒子を核とする液滴の多くは、湿度の増大に伴って直径が増していく。これを"エアロゾル膨潤(Aerosol Swelling)"という。湿度が100%近くになると曲線はほぼ水平となり、水蒸気をどんどん吸収して直径が増し続ける状態(凝結核が活性化した状態)となり、以降この水滴は雲粒、つまり霧や雲と同じような振る舞いをする。湿度が70% - 80%程度を境にして、これより湿った環境では粒子径が増大してミー散乱の領域に入る。ミー散乱では光の波長に関係なく散乱が起こるので、着色が起こりにくく粒子は灰色を呈する。この状態がもやであり、濃くなると霧あるいはスモッグとなる[18][17]

このような吸湿性の微粒子による煙霧を"damp haze"(湿った煙霧)と言い、これに対して通常の乾いた微粒子による煙霧を"dry haze"(乾いた煙霧)として区別することがある[17]


  1. ^ a b 気象庁「天気予報等で用いる用語 > 氷、霜、霧、雷、日照時間 煙霧」、2015年4月6日閲覧
  2. ^ a b c 原田朗「煙霧」、『最新気象の事典』、p43、1993年 ISBN 4-490-10328-X
  3. ^ a b c d e f g 気象観測の手引き、p60、p64-65
  4. ^ a b 気象観測の手引き、p59-60、p64
  5. ^ 15種区分の「天気」
  6. ^ a b 関東で大騒ぎになった「視界不良」 黄砂と煙霧どこが違う?」日本経済新聞、2013年3月12日付、2015年4月4日閲覧
  7. ^ a b 「過去の気象データ検索 : 2013年3月10日 1時間ごとの値 前橋」、気象庁、2015年10月12日閲覧
  8. ^ a b 「過去の気象データ検索 : 2013年3月10日 1時間ごとの値 熊谷」、気象庁、2015年10月12日閲覧
  9. ^ a b 「過去の気象データ検索 : 2013年3月10日 1時間ごとの値 水戸」、気象庁、2015年10月12日閲覧
  10. ^ a b 「過去の気象データ検索 : 2013年3月10日 1時間ごとの値 東京」、気象庁、2015年10月12日閲覧
  11. ^ a b 「過去の気象データ検索 : 2013年3月10日 1時間ごとの値 横浜」、気象庁、2015年10月12日閲覧
  12. ^ a b 「過去の気象データ検索 : 2013年3月10日 1時間ごとの値 千葉」および「過去の気象データ検索 : 2013年3月10日 1時間ごとの値 館山」、気象庁、2015年10月12日閲覧
  13. ^ a b 「過去の気象データ検索 : 2013年3月10日 1時間ごとの値 銚子」、気象庁、2015年10月12日閲覧
  14. ^ 「黄砂実態解明調査報告書(平成15〜24年度)」の公表について(お知らせ)」環境省、2014年3月27日
  15. ^ 三谷一郎「東京の濃煙霧日数についての考察 (PDF) 」、日本気象学会『天気』、8巻、5号、p156-159 NAID 40018075450
  16. ^ 光化学オキシダント・対流圏オゾン検討会報告書 中間報告 (PDF) 2007年12月、環境省。
  17. ^ a b c "Haze", 2012-04-25の版. Glossary of Meteorology, American Meteorological Society.
  18. ^ a b エクセルのグラフで学ぶ気象学 0063 煙霧と霞の成長」、2015年4月4日閲覧


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