水の青 重水の色

水の青

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/12 04:30 UTC 版)

重水の色

ヒドロキシル基の水素原子が約2倍程度の質量を有する重水素に置換されると、フックの法則に従ってO-D 伸縮振動の周波数は O-H に対して1/1.4程度に低下する。これに伴い、軽水における可視領域の吸収帯 3ν1 + ν3 などもすべて赤外領域に移行する。そのため、重水の吸収が可視領域に達するためにはさらに吸収の弱い5倍音以上の振動によらなければならない。

このため、重水は通常の水と異なりほとんど無色であり、3m程度の長さのチューブに入れて観測すると無色であることが観測される[5]

反射と水質

水面の反射

海の青色は水の伸縮振動に起因する可視光線の吸収に加え、空の色の反射も関連している。これは空の光の海水面における反射、および海水中に入射した光が微粒子により散乱され、途中で水による吸収を受けた後、空中に脱出した透過光との合成による色が海の青色として出現している。水面における反射率は入射方向が水平に近づくほど高くなり、より空の色が反映される[11]。夕焼けが反射すれば、海面はオレンジ色に染まる。

水中の微粒子による散乱

また、水中に微粒子が多量に存在すると水中に入射した光の散乱が増大し、より浅い場所で光が反射されて光路長も短くなり、入射光の水による吸収が加われば乳濁した水色を呈する。北海道美瑛町青い池では、白色の水酸化アルミニウムなどの微粒子が光を散乱して水の吸収による青色の透過光が加わり、セルリアンブルーを呈している。一方、微粒子が少なく散乱のあまり起こらない黒潮は、入射した光がより長い光路長を持つために吸収が強くなり、深い青色を呈する。青色の濃さは海底や川底の反射も関係し、光路長、すなわち深さに密接に関連する。の水も、透明度が高い場合は深さによりエメラルドグリーンから青色を呈するようになる。

の微粒子が存在すると、入射光の水による吸収の青色に泥の黄色味が加わり水は緑色を呈するようになり、さらに泥の粒子が増大すると光路長が短いうちに反射されて青色はほとんど現れず、いわゆる泥水として泥の色に染まるようになる。


  1. ^ 日本化学会編 『化学便覧 基礎編 改訂4版』 丸善、1993年
  2. ^ 『化学大辞典』 共立出版、1993年
  3. ^ Sir Venkata Raman, The molecular scattering of light Nobel Lecture, December 11, 1930.pdf
  4. ^ 水のスペクトルと水の色.pdf
  5. ^ a b C. L. Broun and S. N. Smirnov, Why is Water Blue? J. Chem. Edu. 1993, 70(8), 612.
  6. ^ Gordon M. Barrow著、藤代 亮一訳  『バーロー物理化学』第5版 東京化学同人、1990年
  7. ^ 綿抜邦彦、久保田昌治 『新しい水の科学と利用技術』 サイエンスフォーラム、1992年
  8. ^ Herzberg, G. Infrared and Raman Spectra; D. Van Nostrand: Princeton, 1945; p. 281.
  9. ^ Curcio, J. A.; Petty, C. C. J. Chem. Phys. 1951, 41, 302.
  10. ^ Marechal, Y. Hydrogen-Bonded Liquids; Dore J. C.; Teixeira, J. Eds.; NATO ASI Series, Vol. 329, 1989, p.237.
  11. ^ KIRIYA CHEMI 海が青く見えるのはなぜですか?





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