気候研究ユニット・メール流出事件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/21 04:54 UTC 版)
メール個別の争点
流出したメールについては、下記のような批判があった。しかしUEA側は「いずれも、指摘されたような不正の事実は見つからなかった」[9]などと主張している。
フィル・ジョーンズのメール(1999年11月16日)
メールの中で問題にされているのは、マイケル・マンなどと交わしたメールで「ホッケースティック曲線(過去1,000年間の気温変化グラフ)における1960年代~1970年代の気温の低下を隠ぺいし、それ以後の上昇を誇張している」と解釈できると懐疑論者は主張している(地球寒冷化も参照)。ただしその内容については、以下のように英語圏の識者の間でも解釈が分かれる表現であった[53]。大きく取り上げられている例がトリック(trick)という語の使用である[54]。英語ではtrickは人を騙す意味には限らず、コツという意味がある。また、ある期間の年輪のデータが気温を正確に反映していないことは流出したメールより前に発表されており[55][56]、こうした理由から多くの科学者はメールはデータ捏造の証拠とはみなしていない。
イギリスの新聞デイリー・テレグラフ(以下テレグラフと略す)は、フィル・ジョーンズのメールでは、世界の気温の生データについて"下落傾向を隠す(hide the decline)"に際しての"トリック(trick)"に触れている、とした[14]。
これに関して、フィル・ジョーンズは、気温の図を"マッサージ(massage)"したことを否定し、「"trick"とは、騙す行為ではなく"コツ"の意味であり、何か悪いことを示すと言うのは、ばかげた話だ」とした[14]。 UEAと共同で気候変動の監視をしているイギリス気象庁は、「全くもって陰謀でも捏造でもない。全てのデータは査読を受け、信頼出来るデータである」とした[14]。
マイケル・マンのメール(2003年3月11日)
テレグラフによると、フィル・ジョーンズが、地球温暖化の科学的コンセンサスに対する論文を通した雑誌編集者を解任するように働きかけたとするメール[14]。テレグラフによると、反対する科学者の論文が学術雑誌に掲載されないようにとの試み[14]。
背景は英語版Soon and Baliunas controversyを参照。
フィル・ジョーンズのメール(2004年7月8日)
正確さの欠如を理由に論文をIPCCが取り上げないようメールで圧力をかけたとされる。しかし実際には、当該論文は取り上げて論じられている[57]。
フィル・ジョーンズのメール(2005年2月2日、2008年5月)
テレグラフによると、情報公開法で公開されないようにと、各種ファイルを破棄するようにするとの会話[14]。 トム・ウィグリーによると「いかなるデータも消していない。国立気象サービスのデータは閲覧可能であるし、GISSやNASAがデータを用い、独自の結果を出している。」としている[13]。
トレンバースのメール(2009年8月12日)
テレグラフによると、ケヴィン・トレンバース[58]が、世界の気温の上昇の傾向が見られないのは、"travesty(滑稽だ)"と認めている[14]とするメール(ハイエイタス (地球温暖化)も参照)。
トレンバースは、「私のメールが、世界の指導者達が炭素排出削減を合意するためのCOP15をなし崩しにするために、選択的にリークされ、誤解釈されている。このような酷く選択的なメールの使われ方と、文脈を無視した使われ方は酷くショックである。COPの直前というのは偶然ではないだろう。」としている[14]。
その他のメール
懐疑派に対する露骨な言葉による侮辱や、懐疑派への圧力をほのめかす文面も公開された。ネイチャー[59]やエコノミスト誌[60]では、それらはどの分野の科学者もやっていることであるという論調であった。
- ^ a b “Hackers target leading climate research unit”. BBC News. (2009年11月20日)
- ^ a b Webster, Ben (2009年11月21日). “Sceptics publish climate e-mails 'stolen from East Anglia University'”. The Times
- ^ a b Delingpole, James (2009年11月20日). “Climategate: the final nail in the coffin of 'Anthropogenic Global Warming'?”. UK Telegraph
- ^ a b “ClimateGate reveals nefarious conspiracy!”. Daily Kos. 2009年11月21日閲覧。
- ^ 英国イーストアングリア大学により設置された独立レビュー組織による「クライメートゲート事件」レビュー結果の公表について(お知らせ)環境省公式サイト
- ^ “「クライメートゲート」事件は気候科学者の悪事を露呈した”. Skeptical Science. 2020年7月21日閲覧。
- ^ “第9回 「クライメートゲート事件」続報・科学にとって「査読」とは何か - 日経エコロミー連載コラム 温暖化科学の虚実 研究の現場から「斬る」! | 地球環境研究センター”. www.cger.nies.go.jp. 2020年7月21日閲覧。
- ^ Marc Morano 渡辺正訳 (2019.6.25) (英語), 地球温暖化の不都合な真実, 日本評論社, ISBN 9784535788879
- ^ a b c Response by the University of East Anglia to the Report by Lord Oxburgh’s Science Assessment Panel University of East Anglia。2010年4月14日
- ^ a b http://www.ametsoc.org/policy/climatechangeclarify.html
- ^ a b c Attacks on the Intergovernmental Panel on Climate Change Obscure Real Science, Union of Concerned Scientists
- ^ a b c d e f g Sir Muir Russell to head the Independent Review into the allegations against the Climatic Research Unit (CRU)。University of East Anglia。2009年12月3日
- ^ a b c d e f g h i j k l Hacked email climate scientists receive death threatsガーディアン2009Dec08
- ^ a b c d e f g h i j k l m n Climate change scientists face calls for public inquiry over data manipulation claims
- ^ a b Time Dec7 2009
- ^ a b Met Office to re-examine 160 years of climate data
- ^ The ugly side of climate politics (英語) オーストラリア放送協会(ABC)
- ^ Phil Jones。University of East Anglia. Climate Research Unit所長。現在、本事件の調査中のため所長職を離職
- ^ a b CRU update 3University of East Anglia。2009年12月1日
- ^ https://webcitation.org/5lnKYt5cA
- ^ Peter Liss。CBE,FRS
- ^ Muir Russell。自然哲学(物理学)。エジンバラ王立協会フェロー。元グラスゴー大学校長・副総長。
- ^ CRU Scientific Assessment Panel announced University of East Anglia。2010年3月22日
- ^ https://webcitation.org/5loJCAUIi
- ^ http://www.research.psu.edu/orp/Findings_Mann_Inquiry.pdf
- ^ 英国議会(庶民院)による調査報告書、2010年3月
- ^ a b c d 英国議会(庶民院)による調査報告書の要約、2010年3月
- ^ http://www.nytimes.com/2010/07/11/opinion/11sun2.html?_r=1
- ^ http://www.newsweek.com/blogs/the-gaggle/2010/06/25/newspapers-retract-climategate-claims-but-damage-still-done.html
- ^ 国連及び気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の要請に応じた、IPCC のプロセスと手続についての、科学アカデミーによる独立レビューの実施、2010年3月10日
- ^ Interacademy Council, Review of the IPCC
- ^ a b Climate Change Assessments: Review of the Processes and Procedures of the IPCC, Interacademy Council, Aug 30 2010
- ^ インターアカデミーカウンシル(IAC)によるIPCCレビュー報告書要旨(環境省仮訳)
- ^ Eilperin, Juliet (2009年11月21日). “Hackers steal electronic data from top climate research center”
- ^ Andy Ridgwell。Bristol大学。気候研究者。
- ^ Guardian該当部分直訳は、「陰謀論者がお祭り騒ぎをしている。が、陰謀論者らがもしまともに研究の世界のことを知っていたなら、出版された論文やデータセットが、常に別の研究者グループによって、継続的に厳しい目でチェックされていることがわかるだろう。IPCC報告書に用いられた情報は、科学の全分野の中でももっとも厳しく論議され、試されてきた部類に入る。」
- ^ Lawmakers Probe Climate Emails ウォールストリートジャーナル (英語)
- ^ Nature7277
- ^ ニューヨーク・タイムズ12/2/2009
- ^ https://archive.is/20120717053230/www.agu.org/news/archives/2009-12-08_hacked-emails-climate-researchshtml.shtml
- ^ Science Nov
- ^ Scientific American Feb 2010; 日経サイエンス2010年3月号
- ^ 社説:温暖化疑惑事件 科学者はもっと発信を
- ^ http://www.guardian.co.uk/environment/georgemonbiot/2009/nov/25/monbiot-climate-leak-crisis-response
- ^ http://www.usnews.com/articles/news/energy/2009/12/12/climategate-science-not-faked-but-not-pretty_print.htm
- ^ http://factcheck.org/2009/12/climategate/
- ^ http://www.reuters.com/article/idUSTRE5B735X20091208
- ^ http://www.guardian.co.uk/commentisfree/cif-green/2009/dec/06/gordon-brown-climate-change-copenhagen
- ^ lead climate negotiator, Mohammad Al-Sabban。
- ^ Rush Limbaugh"an American radio host, conservative political commentator, and an influential opinion leader in the conservative movement in the United States."
- ^ Warmist conspiracy exposed? | Herald Sun Andrew Bolt Blog
- ^ Nigel Lawson。イギリス、サッチャー政権下の大蔵大臣。温暖化対策を批判する 気候変動政策財団の創設者・現主席。
- ^ より具体的なメールの文面は英語版記事en:Climatic Research Unit documents参照
- ^ 急 地球温暖化データにねつ造疑惑(09/11/26) 日経エコロミー、2009年11月26日。
- ^ http://eco.nikkei.co.jp/column/emori_seita/article.aspx?id=MMECza000024122009
- ^ RealClimate
- ^ Nature Editorial, 24Nov2009
- ^ Kevin Trenberth。US National Centre for Atmospheric Research
- ^ Nature Editorial 24Nov2009
- ^ Econimist 26 nov 2009
- 気候研究ユニット・メール流出事件のページへのリンク