接ぎ木 備考

接ぎ木

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/31 14:47 UTC 版)

備考

  • 花成ホルモン(フロリゲン)の生成についての研究で、接ぎ木を用いた実験が広く知られている。
  • 接ぎ木による周縁キメラの作成[6]。2種類のトマト属(Lycopersicon、現在はナス属Solanumに分類される)植物を材料に使って接ぎ木した後、接ぎ木の接合面を横切る形で切断した。その切断面から生じた新芽は周縁キメラであることが確認された。
  • 有毒植物を台木とし食用植物を穂木とする接ぎ木は、チョウセンアサガオナスの組み合わせにおいて食中毒例の報告がある。有毒成分の移動に関しては研究結果を待つ必要があるが、このような組み合わせの接ぎ木は避けるべきであると考えられる。

接木雑種

接木雑種(つぎきざっしゅ)とは、異なる品種の作物を接ぎ木した結果、変異などにより、生じた新種。栄養雑種(えいようざっしゅ) ともいう。

古代ギリシア人は接ぎ木によって果実の香りや色を改良するよう試みた[7]。ソ連のルイセンコは接木のみで雑種ができると主張し、遺伝的な性質までも変化させるという学説を流布した。スターリン、ソ連政府のお墨付きによって絶対的な学説とされたが、科学的な実証性のない学説であったため、その後、接木によって新しい品種はできないとされた。

ルイセンコ理論が否定された後も、接ぎ木によって、新しい品種をつくろうとする農業生産者の取り組みは独自にすすめられた。2009年には、佐賀県武雄市の生産者が温州ミカンの木にレモン苗木を接ぎ木することで、味が甘く形が丸いレモンをつくることに成功している[8]。現代の正確なDNA分析によって確認されている[9] 接木雑種としてトウガラシとピーマンの接ぎ木で生まれた「ピートン」がある[7]。「サイエンス」の2009年5月1日号には、ドイツのマックス・プランク研究所の研究者が接ぎ木で細胞間の遺伝物質の交換が生じることを示唆する論文が発表された[10][11]

脚注


  1. ^ Michitaka Notaguchi et al. (2020-08-07). “Cell-cell adhesion in plant grafting is facilitated by β-1,4-glucanases”. Science 369 (6504): 698-702. doi:10.1126/science.abc3710. https://science.sciencemag.org/content/369/6504/698. 
  2. ^ 木村俊介 (2020年8月13日). “「接ぎ木」の可能性は無限大? 仕組みの一端が明らかに”. 朝日新聞. https://www.asahi.com/articles/ASN8D638RN85OIPE00M.html 2023年12月31日閲覧。 
  3. ^ a b c 戦後日本のイノベーション100選 高度経済成長期 接ぎ木(野菜)”. koueki.jiii.or.jp. 公益社団法人発明協会. 2020年4月15日閲覧。
  4. ^ ナス 「どうやってつくるの?」”. 農林水産省. 2012年2月2日閲覧。
  5. ^ 『Science』タイトル:Cell–cell adhesion in plant grafting is facilitated by β-1,4-glucanases (植物の接木における細胞間癒合はβ-1,4-グルカナーゼによって促進される) 著者:Michitaka Notaguchi*、Ken-ichi Kurotani、Yoshikatsu Sato、Ryo Tabata, Yaichi Kawakatsu、Koji Okayasu、Yu Sawai、Ryo Okada、Masashi Asahina、Yasunori Ichihashi、Ken Shirasu、Takamasa Suzuki、Masaki Niwa、Tetsuya Higashiyama *Corresponding author 出版日;2020年8月7日 doi:10.1126/science.abc3710
  6. ^ Winkler, H. (1935). “Chimären und Burdonen-Die Lösung des Pfropfbastardproblems”. Der Biologe 9: 279-290. 
  7. ^ a b 新聞「農民」 (2003年5月19日). “ギリシア時代のロマン—接木でとがってない唐辛子「ピートン1世」誕生、柳下 登(東京農工大学名誉教授・理学博士)”. 「農民」記事データベース. 2009年12月2日閲覧。
  8. ^ 西日本新聞 (2009年2月18日). “丸くて甘いレモン登場”. 2009年12月2日閲覧。
  9. ^ シクロケム. “サイエンストーク 科学の現場 第1回 農学とシクロデキストリンの接点”. 2009年12月2日閲覧。
  10. ^ Stegemann, S.; Bock, R. (2009). “Exchange of genetic material between cells in plant tissue grafts”. Science 324: 649-651. doi:10.1126/science.1170397. PMID 19407205. 
  11. ^ 北海道教育大学 函館校 生物学教室. “「接ぎ木雑種」再見!!”. 2009年12月2日閲覧。


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