対称群
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/01 05:29 UTC 版)
共役類
群に関する基本的な問題としてその共役類の分類が挙げられるが、対称群 Sn における共役類は Sn の n への自然な作用に関する軌道の形によって分類される。実際、σ と τ が Sn の元ならば σ と τστ−1 は同じ軌道の形を持っており、逆に σ と υ が同じ軌道の形を持つならば適当な τ ∈ Sn について υ = τστ−1 となっている。これはすなわち、任意の置換を互いに素な巡回置換の積として表したとき、現れる巡回置換の長さが重複度を込めて一致しているような置換は同じ共軛類に入り、またその逆も成り立つということである。たとえば、n = 3 で
- σ: 1 → 2, 2 → 1, 3 → 3,
- τ: 1 → 2, 2 → 3, 3 → 1
のとき、σ の軌道は {1, 2}, {3} (σ = (1 2)(3)) であり、一方 τστ−1 の軌道は {1}, {2, 3} (τστ−1 = (1)(2 3)) で、どちらも一つの元からなる軌道を一つと二つの元からなる軌道を一つ持っている。
このように、軌道の形(Sn の元の互いに素な巡回置換の積としての表示)は各自然数 k に対して k 個の元を持つような軌道(長さ k の巡回置換)の数 mk がいくつかを指定することで決定される。このとき、集合 n への作用を考えているので数列 (mk)k は ∑
k∈N kmk = n を満たさなければならない(n の分割)。このとき、
を置換 σ の巡回置換型 (cycle type)、あるいはたんに型と呼ぶ。Sn の共軛類は巡回置換型によって決まる。さらに共軛類の大きさは巡回置換型を用いると
と表せる。また、 n の分割は、位数 n のヤング図形と一対一に対応しており、したがって Sn の共役類は位数 n のヤング図形たちによって記述されることになる。
注釈
- ^ これはグラフであって、表示が似ているからと言ってベクトルや行列ではない。また、実際には前者(点の入れ替え)と後者(番号の入れ替え)は双対の関係にあり、ちょうど σ−1(xk) と xσ(k) が、あるいは σ の右作用と左作用との入れ替えが対応する。
出典
- ^ 日本数学会 編『岩波数学事典』(第4版)岩波書店、2007年。ISBN 978-4000803090。
- ^ (Dixon & Mortimer 1996, p. 268)
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