劇場版BLEACH MEMORIES OF NOBODY スタッフ

劇場版BLEACH MEMORIES OF NOBODY

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/08 19:09 UTC 版)

スタッフ

制作

テーマ

監督の阿部は、サブタイトル(「誰のものでもない記憶[21]」)に込められた意味と作品のテーマについて次のように語っている。

その人が経験したこととか出会った人たちというのは、それこそ誰のものでもなく、その人がその人であるためのとても大切な記憶で、その人が今まで生きてきた証しでもあると思います。一概には言えませんが、もしもそれがなくなってしまったらやはり悲しいことではないかと思いますので、いろんな人が、今生きている瞬間のその記憶をずっと大切にしてくれればという思いがあります。 — 阿部記之[21]

演出

登場人物が使用する武器や戦い方などの演出方法に関しては、劇場の画面の大きさやより迫力のある音の効果に合わせてスケールの大きなものにすることが意識された[21]。また、阿部は「登場人物たちがお互いに関わり合うことで何かに気付き、その気持ちに変化が起こっていく様子や、弱いものを利用して野望を達成しようとする敵に対する怒りなどの感情表現」にも力を入れたと語っている[21]

作画

キャラクターデザインの工藤は、本作を機に原作の絵柄を意識して入れていた影線をなくしたという[22]。工藤は久保との対談の中で、久保のカラーイラストにおける影の表現に変化があり、影線がなくてもいいのだと気づいたこと、劇場の画面で見た際にあまり汚くなるのが嫌だったことをその理由として挙げている[22]

本作の制作はテレビシリーズの制作と並行して進められたこともあり、人手不足を補うため制作スタッフの増強が行われた[21]。プロデューサーの萩野は、美形が多く似せるのが難しいキャラクターの特徴を、初めて参加したスタッフは短い時間の中でつかまなければならず、大変だったと思うと振り返っている[21]

音楽

音楽は鷺巣詩郎が担当した[2]。テレビシリーズと同じく、レコーディングは鷺巣が音楽制作の拠点とするロンドン・パリ・東京のスタジオで行われたが、本作はとくにロンドンの比重が高かったという[23][注 1]。ロンドンでのレコーディングには、ストリングス・オーケストラとしてヴァイオリニストのギャヴィン・ライト英語版率いるロンドン・セッション・オーケストラ (Gavyn WRIGHT and London Session Orshestra) が参加した[23]。鷺巣はオリジナル・サウンドトラックのセルフライナーノーツにおいて、ソプラノ・シンガーのキャサリン・ボット (CatherineBOTT) の参加を特筆すべき事項のひとつに挙げており、「この素晴らしいソプラノ・シンガーのパフォーマンスは今回の劇場版に、ギャヴィンのオーケストラとともに『このうえない輝き』を与えてくれた」と賛辞の言葉を残している[24]

原作者の作業

原作者の久保も制作に参加し、茜雫、巌龍、欠魂といったオリジナルキャラクターのデザインやネーミング、設定類のネーミングを手掛けた[25]。久保はぴえろから本作のシナリオを受け取った際、オリジナルキャラクターのデザイン依頼を受けたが、シナリオのチェックを進めるうちにアイデアが湧き、設定類のネーミングも担当することとなった[13]。ネーミングに関しては「『BLEACH』らしい名前を意識して変えさせてもらったものが多い」と語っており、叫谷をその一例として挙げている[18]。久保は当時、作業時間が1週間しか作れなかったこともあり、できる限りの要望を書き出すことに苦労したという[13]。また、シナリオ面でも久保の提案によってキーアイテムの変更などがなされている[26]

エピソード

作中に登場する町は東京都の八王子市がモデルとなっており、制作にあたってロケハンが行われた[27]

本作にはゲスト声優としてお笑いトリオの安田大サーカスとタレントの森下千里が出演した[21]。萩野によると、安田大サーカスの起用は小さな子供にも客層を広げることを目的としたものであった[21]

封切り

日本国内

2006年12月16日より有楽町スバル座ほかにて公開された[28]興行通信社の調べによると、初日から2日間の興行収入は約1億4,200万円を記録し、国内映画ランキング(全国週末興行成績)において5位にランクインした[28]キネマ旬報社の調べによると、最終の興行収入は6億6,000万円となった[1]

日本国外

アメリカ合衆国において『BLEACH』の作品展開を行うビズメディアは、ナショナル・シネメディア英語版グループのNCM FATHOMの配給により、2008年6月11日・12日に全米の300館を超える劇場にて本作の上映会を開催した[3]。上映会では監督の阿部記之、プロデューサーの萩野賢、キャラクターデザインの工藤昌史のインタビューも紹介された[3]。『アニメ!アニメ!』はこの上映会について、「作品の高い人気と好調なビジネス展開のなかで行われる新作映画のプロモーションの一環とみられる」とし、「通常の劇場公開というよりも、全国規模のファン向けイベントの色彩が強い。また映画は今後発売するDVDのプロモーションと考えていいだろう。」と分析した[3]。同年7月には、同国のサンディエゴ市内にて本作の特別上映会が実施された[29]。上映会のオープニングには、サンディエゴ・コミコンにゲスト参加するため同市内を訪れていた原作者の久保帯人が登壇した[29]


注釈

  1. ^ 鷺巣はオリジナル・サウンドトラックのセルフライナーノーツにおいて、「『作曲を Paris で』『メイン・プロダクションを London で』『仕上げを東京で』というのが、僕の定型なのである」と記している[23]

出典

  1. ^ a b 「2007年 日本映画・外国映画 業界総決算 経営/製作/配給/興行のすべて」『キネマ旬報』2008年2月下旬決算特別号、キネマ旬報社、2008年2月15日、164頁。 
  2. ^ a b c d e f g h i j k 劇場版BLEACH MEMORIES OF NOBODY”. 株式会社ぴえろ 公式サイト. ぴえろ. 2023年10月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年10月22日閲覧。
  3. ^ a b c d “劇場版『BLEACH』6月に全米300館で上映イベント”. アニメ!アニメ! (イード). (2008年4月24日). オリジナルの2023年10月30日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20231030201511/https://animeanime.jp/article/2008/04/24/3074.html 2023年10月30日閲覧。 
  4. ^ a b c d e f g h i j k l アニメディア (2007), p. 5.
  5. ^ a b c d アニメディア (2007), p. 6.
  6. ^ a b c d e f g h MOVIE GUIDE (2007), p. 16.
  7. ^ アニメディア (2007), p. 4.
  8. ^ a b c d e f g h i MOVIE GUIDE (2007), p. 19.
  9. ^ a b c d e f g h i j k l m MOVIE GUIDE (2007), p. 18.
  10. ^ a b c d e f g h i j k l m n MOVIE GUIDE (2007), p. 17.
  11. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 劇場版 BLEACH ブリーチ MEMORIES OF NOBODY(映画)の出演者・キャスト一覧”. WEBザテレビジョン. KADOKAWA. 2023年10月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年10月4日閲覧。
  12. ^ 赤マルジャンプ (2009), p. 15.
  13. ^ a b c ジャンプ・コミック出版編集部 (2007), p. 342.
  14. ^ ジャンプ・コミック出版編集部 (2007), pp. 342–343.
  15. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r MOVIE GUIDE (2007), p. 20.
  16. ^ a b c d 安田大サーカスが声優に挑戦!「劇場版BLEACH」”. 映画.com. エイガ・ドット・コム (2006年12月5日). 2023年9月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年9月18日閲覧。
  17. ^ 劇場版BLEACH -完成披露試写会レポート”. 劇場版『BLEACH ブリーチ』MEMORIES OF NOBODY -公式サイト. 2023年9月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年9月18日閲覧。
  18. ^ a b ジャンプ・コミック出版編集部 (2007), p. 344.
  19. ^ a b ジャンプ・コミック出版編集部 (2007), p. 343.
  20. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 劇場版BLEACH ブリーチ MEMORIES OF NOBODY:映画作品情報・あらすじ・評価”. MOVIE WALKER PRESS 映画. ムービーウォーカー. 2023年10月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年10月22日閲覧。
  21. ^ a b c d e f g h MOVIE GUIDE (2007), p. 30.
  22. ^ a b 赤マルジャンプ (2009), p. 14.
  23. ^ a b c 鷺巣 (2006), p. 3.
  24. ^ 鷺巣 (2006), p. 4.
  25. ^ ジャンプ・コミック出版編集部 (2007), pp. 342–344.
  26. ^ ジャンプ・コミック出版編集部 (2007), pp. 344–345.
  27. ^ ちょこっと裏話:おのです”. プロダクションノート blog~萩P日記~ (2006年12月17日). 2007年1月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年10月30日閲覧。
  28. ^ a b 駒井尚文 (2006年12月19日). “国内映画ランキング : 2006年12月16日~2006年12月17日”. 映画.com. エイガ・ドット・コム. 2023年11月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年11月2日閲覧。
  29. ^ a b “「BLEACH」久保帯人 全米最大のコミック・コンベンション登場”. アニメ!アニメ! (イード). (2008年5月22日). オリジナルの2023年10月30日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20231030203527/https://animeanime.jp/article/2008/05/22/3188.html 2023年10月30日閲覧。 
  30. ^ 人気アニメ『BLEACH』劇場版作品が、総合1、2 位を独占!”. ORICON NEWS. oricon ME (2015年3月4日). 2023年9月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年9月5日閲覧。
  31. ^ “Society for the Promotion of Japanese Animation Announces Finalists for the 2009 SPJA Industry Awards”. Anime News Network. (2009年5月4日). オリジナルの2023年10月25日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20231025105744/https://www.animenewsnetwork.com/press-release/2009-05-04/society-for-the-promotion-of-japanese-animation-announces-finalists-for-the-2009-spja-industry-awards 2023年10月25日閲覧。 
  32. ^ Egan Loo (2009年7月3日). “SPJA Industry Award Winners Announced at Anime Expo (Updated)”. Anime News Network. オリジナルの2023年10月25日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20231025110517/https://www.animenewsnetwork.com/news/2009-07-03/2009-spja-industry-award-winners-announced 2023年10月25日閲覧。 
  33. ^ MOVIE GUIDE (2007), p. 21.
  34. ^ a b c DVD 劇場版”. TV ANIMATION BLEACH. アニプレックス. 2023年9月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年9月5日閲覧。
  35. ^ TV ANIMATION BLEACH”. アニプレックス. 2023年9月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年9月5日閲覧。
  36. ^ a b 劇場版 Blu-ray Disc”. TVアニメ「BLEACH 千年血戦篇」公式サイト. アニプレックス. 2023年9月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年9月5日閲覧。
  37. ^ 劇場版「BLEACH MEMORIES OF NOBODY」【完全生産限定盤】”. Sony Music Shop. ソニー・ミュージックソリューションズ. 2023年9月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年9月10日閲覧。
  38. ^ 劇場版BLEACH MEMORIES OF NOBODY【通常版】”. Sony Music Shop. ソニー・ミュージックソリューションズ. 2023年9月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年9月10日閲覧。
  39. ^ a b c CD ORIGINAL SOUNDTRACK”. TV ANIMATION BLEACH. アニプレックス. 2023年9月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年9月22日閲覧。
  40. ^ 劇場版BLEACH MEMORIES OF NOBODY Original Soundtrack”. TOWER RECORDS ONLINE. タワーレコード. 2023年9月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年9月22日閲覧。
  41. ^ a b c 最新情報”. 劇場版BLEACH -インフォメーション. 2023年10月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年10月26日閲覧。
  42. ^ Aqua TimezのTV出演情報 6ページ目”. ORICON NEWS. oricon ME. 2023年10月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年10月26日閲覧。
  43. ^ 栗山千明のTV出演情報 30ページ目”. ORICON NEWS. oricon ME. 2023年10月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年10月26日閲覧。
  44. ^ a b c d e イベント情報”. 劇場版BLEACH -インフォメーション. 2023年10月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年10月26日閲覧。
  45. ^ a b c 都バス×『劇場版BLEACH(ブリーチ)』卍解(ばんかい)ラリー”. 東京都交通局 (2006年11月24日). 2006年12月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年10月30日閲覧。
  46. ^ タイアップ情報”. 劇場版BLEACH -インフォメーション. 2023年10月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年10月26日閲覧。
  47. ^ 『劇場版BLEACH MEMORIES OF NOBODY』ムービーガイド”. BLEACH-FAN!. ぴえろ. 2006年12月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年6月29日閲覧。
  48. ^ 劇場版BLEACH ―MEMORIES OF NOBODY―”. 集英社. 2023年9月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年9月22日閲覧。
  49. ^ 劇場版の興奮がフルカラーコミックスで鮮やかに甦る! 集英社ジャンプリミックス「劇場版BLEACHアニメコミックス」(原作:久保帯人)が11月8日(月)にコンビニエンスストア各店で発売!!』(プレスリリース)集英社、2010年11月8日。 オリジナルの2023年9月22日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20230922145220/https://www.dreamnews.jp/press/0000024083/2023年9月22日閲覧 





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

劇場版BLEACH MEMORIES OF NOBODYのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



劇場版BLEACH MEMORIES OF NOBODYのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの劇場版BLEACH MEMORIES OF NOBODY (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS