優先順位付投票制 使用

優先順位付投票制

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/04 15:28 UTC 版)

使用

IRVは、オーストラリアの代議院[1]アイルランドの大統領[2]パプアニューギニアの国会、フィジーの下院の選挙で使用されている[3]

IRVは、アメリカ合衆国の司法権によって採用されることもあり、カリフォルニア州サンフランシスコオークランドミネソタ州ミネアポリスセントポールの例がある[4]

イギリス労働党自民党の党首選と、カナダ自由党の党首選[5]や、イギリスやニュージーランドを含む多くの国々での市長[6][7]、アメリカ映画界の映画賞であるアカデミー作品賞全米製作者組合賞 劇場映画賞PGA作品賞)の選考でも使用されている。

米選挙改革グループFairVote事務局長のロブ・リッチーは、映画賞の作品賞の選考にIRVを使うのは明らかに賢明な判断であり大統領、州知事、市長など政治リーダーの選挙でも使用するべきだ、としている[8]

2021年ニューヨーク市長選挙に使用されている。

イギリスでの導入の試み

2010年、イギリスの保守党自由民主党連立政権単純小選挙区制からこの制度へ移行する「選挙制度の変更に関する国民投票」を2011年5月5日に実施することで合意した[9][10]。もし可決されたらその次の庶民院議員選挙で用いられる予定であったが、2011年5月5日の国民投票の結果、採用に反対する票が67.9%で多数否決された[11]

シンプルなものは、次の表の例である。3名の候補者、ボブ、ビル、スーが、選挙に出る。投票者は、"a"から"e"までの5名である。投票者はそれぞれ1票を持ち、候補者に1、2、3と優先順位を付ける。候補者が勝利するには、3票以上の過半数を得ねばならない。

ラウンド1では、ランキングの第一選択が開票され、ボブとスーの両名が2票を獲得し、ビルは1票となる。過半数を獲得した候補がいないので、第2ラウンドが必要である。ビルは3位なので、敗退させる。ビルを第一とした"c"の票が、その第二の候補(alternative)へ加算される。よってラウンド2の結果は下のようになり、スーが3票の過半数となる。

ラウンド1 ラウンド2
候補 a b c d e 得票 a b c d e 得票
ボブ 1 2 3 1 2 2 1 2 2 1 2 2
スー 3 1 2 3 1 2 2 1 1 2 1 3
ビル 2 3 1 2 3 1

3位からの逆転

IRVを用いた実際の選挙では、第1回集計の時点で1位または2位であった候補者が最終的に当選し、二回投票制と同じ結果になる場合が多い。しかし、第1回集計で3位以下であった者が確実に落選する二回投票制と異なり、IRVでは3位以下からの逆転勝利が起こりうる。2017年オーストラリアクィーンズランド州議会選挙ヒンチンブルック選挙区での実例[12]を以下の表に示す。

第1回 第2回 第3回 第4回 第5回
Andrew Cripps 8523 8611 8818 10263 12013
Margaret Bell 6232 6328 6735 7632
Nick Dametto 5929 6071 6661 10406 16288
Paul Jacob 5384 5812 6087
Peter Raffles 1316 1479
Lyle Burness 917

問題点

オーストラリアでは投票者が投票用紙の上からまたは下からの順番のままで1、2、3...のように順番付ける行為がよく発生しており、「ロバ投票」(donkey vote)と呼ばれる。このような投票行為は無効票あるいは抗議票英語版ではないが、義務投票制を採る同国の一部の有権者の無関心を示す行為だと見られる。実際に多くの国が優先順位による付番の投票システムを採っているが、義務投票制の国ではこのような投票行為の発生比率が高い[13]


  1. ^ Australian Electoral Commission. “Australian Electoral Commission Web Site”. 2010年5月10日閲覧。
  2. ^ Ireland Constitution, Article 12(2.3)”. International Constitutional Law (1995年). 2008年2月15日閲覧。
  3. ^ Fiji Constitution, Section 54(1)”. International Constitutional Law (1998年7月28日). 2008年2月15日閲覧。
  4. ^ "Instant runoff voting exercises election judge fingers," Minnesota Public Radio, May 10, 2009
  5. ^ Zehr, Garrett (2009年5月2日). “Liberals adopt one-member, one-vote election system :: The Hook”. Thetyee.ca. 2010年5月6日閲覧。
  6. ^ The Supplementary Vote (SV)”. 2010年5月10日閲覧。
  7. ^ Elections - 2007 Final Results”. Wellington city council (2007年). 2010年5月10日閲覧。
  8. ^ Rob Richie (2011年1月28日). “Instant Runoff Voting at the Oscars: Choosing Best Picture of the Year”. HUFFPOST. 2019年8月5日閲覧。
  9. ^ “BBC's Q&A: The Conservative-Lib Dem coalition”. BBC. (2010年5月13日). http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/politics/election_2010/8675848.stm 2010年10月3日閲覧。 
  10. ^ Norman Smith Chief political correspondent, BBC Radio 4 (2010年7月2日). “Voting reform referendum planned for next May”. BBC. http://news.bbc.co.uk/1/hi/politics/10483841.stm 2010年10月3日閲覧。 
  11. ^ The Electoral Commission Referendum result
  12. ^ Elections - 2017 State General Election - Hinchinbrook - Booth Details”. results.ecq.qld.gov.au. 2018年8月31日閲覧。
  13. ^ Don't be a donkey: How to make sure your vote is counted correctly” (英語). The Canberra Times (2022年5月17日). 2022年5月18日閲覧。


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